【日経MJヒット塾】「食のデザイン・カンパニーに(下)「焼くサラダ」新たに提案」ロック・フィールド会長兼社長 岩田弘三氏『日経MJ』(2017年7月24日号)

 ※明日(7月27日)のロック・フィールドの株主総会(@神戸)でこの記事が配布されるそうです。「食のデザイン・カンパニーに(下):「焼くサラダ」新たに提案」(日経MJヒット塾)。2017年7月24日号 岩田弘三氏(ロック・フィールド会長兼社長)・聞き手 小川孔輔

 

—多品種のサラダづくりでトヨタ自動車に学んだというお話でしたね。どう生かされたのですか。
「約300種類と多品種のサラダを毎日、効率的に店に供給して販売できるように、我々もその素材、つまりパーツをキット化したのです。トヨタの物流センターでクルマの組み立てに必要なパーツをキットにして流しているのを見て、ヒントを得ました」

—売り場でサラダが美しく見えるため多品種であることがより際立ちます。何か秘訣があるのですか。
「売り場のケースのガラスは日本ではなく、実はイタリア製です。その透明度と、今はLED(発光ダイオード)を採用している照明、きちんとしたケース内の温度管理。それが組み合わさって中のサラダがお客さんから新鮮で美しく見えるのだと思います」

「私がこの仕事を始めたとき、神戸に友人(蟻田尚邦氏)が開いた『アンリ・シャルパンティエ』という洋菓子店があり、彼のケーキを売るケースは本当によくできていました。それで製造元を訪ね、造っていただけないかとお願いをしたのがきっかけです。ケーキのケースに惣菜(そうざい)を入れるなんてと最初は断られましたが、諦めずに我々のサラダづくりを説明して、理解が得られました。見せ方は今も進化しています」

—サラダは西洋の食べ物だと思っていましたが、来日した外国人観光客が「RF1」のサラダを見ると、大体、驚かれますね。
「やはり、1つは多様性でしょう。フランスでは、サラダは前菜でも主食でもなく、おかず的なサラダでもありません。米国でもサラダは主食ではない。しかし、日本ではサラダ自身が添え野菜、つけ合わせではなしに、主食にもなり得ると思って、7千種類以上、開発をしてきましたから」

—サラダが食卓の「主役」になっていく。これから、どのような新しい商品を考えているのですか。
「創業した40年以上前といえば、ポテトサラダやマカロニサラダ、キャベツのコールスローなどマヨネーズを中心としたサラダでした。それが、フレッシュな生野菜をいろいろ組み合わせて食べるサラダへと変わりましたけれども、料理の考え方からすると、さらにもう1つ、あるのではないかと。野菜を加熱するという食べ方です。これは日本でもフランスやイタリア、米国でも当たり前ですが」

—蒸す、煮るといった食べ方を提案しようというわけですか。
「加熱の仕方としては、オーブンで焼き上げる方法もあり、ベークドサラダもできます。そこで生地を敷いた型に野菜などの具を入れて焼くサラダキッシュやサラダタルトを今年秋口から販売開始する計画です」

—ケースの中で冷野菜にこれらを加えるという売り方になるのですか。
「両方です。というのは従来のケースの中で扱い、家庭で再加熱していただく方法と、もう1つは、できれば各店の売り場にオーブンを置いて、焼きながらもお出ししたい。サラダを通してさまざまなチャレンジをしていきたい」

—その中で、生産効率をさらに上げていく。
「どんどんロボット化しますが、例えばジャガイモは工場で人が芽を取る。おいしさが違う。人間力あればこそのロボット力です」

 <キーワードプラス> 人間力とロボット力:
 ロック・フィールドの工場では、ジャガイモの芽取りやキュウリの乱切りなど、おいしさの価値を上げる下処理を手作業で、材料や製品の運搬などにはロボットを使う。素材のよさを生かした商品力と効率を両立させるため、効率的に組み合わせている。

◇聞き手は小川孔輔・法政大学経営大学院教授。5月31日の日経MJヒット塾特別セミナーでの対談を再構成しました。