「花の国日本協議会」の小川典子さんから、バレンタインの直後(2月16日)に“歓喜のメール”が届いた。全国の花店の店頭で長い行列ができている写真が、そのメールには添付されていた。私宛のメールの文章は、つぎのように始まっていた。
「今年のフラワーバレンタインについて 一言で表現すると、松本庸さんの言葉をお借りすれば、『フラワーバレンタインの裾野が広がった』でしょうか」。松本庸さんとは、フラワーバレンタインが始まったころからのワーキングチームの中心メンバーで、日比谷花壇社員の松本さんのことだ。
少し前の個人ブログ(1月23日)で、「バレンタインの“曜日効果”」について紹介した。米国のバレンタインデーについての話だったが、日本でも事情は同じだろうと推測していた。つまり、バレンタインが2年間続けて(2015年と2016年)、週末の土日になったので、花の売り上げが思うように伸びなかったという話である。日本でも、ここ2年間は職場や学校で花を贈りにくい状態が続いていた。チョコレート以上に、花を贈るシチュエーションとしては不利な曜日巡りだったはずである。
「世界中でバレンタインの暦が火曜日に戻ってきた今年は、対前年で売り上げを増やすことができるだろうか? 日本の花店の頑張りが試される年でもある」とそのブログを終えた。しかし、小川典子さんからの報告によると、今年は花店の店頭が大いに盛り上がったらしい。どうやら“試練の年”になるはずが、“変化の予兆が感じられる年”に変わったということだった。
思い返すと、フラワーバレンタインの運動をはじめた2011年に、その後に「花の国日本協議会」(当時は、「フラワーバレンタイン推進員会」)の会長に就任することになる井上英明さん(青山フラワーマーケット社長)に、「フラワーバレンタインは何年でブレイクすると思いますか」と尋ねてみたことがある。
井上さんのその時の返答は、「5年くらい、ですかね」だった。井上さんが「5年」と答えた意図は、おそらく「5年くらいは辛抱しなくては」という意味だったと思う。
様々なカテゴリーで、商品やサービスが大きくヒットする現場を見てきている。「母の日の花」を普及させた業界の運動に倣って、2度目の業界あげての「花のプロモーション活動」が一大ブームになるには、最低でも5年くらいはかかるだろう。希望的観測も含めて、わたしも5年くらいが目途だろうと予想していた。
井上さんと同じ見解ではあったが、もし5年でブームに火が付かないとなると、フラワーバレンタインの先行きは厳しくなるとも感じていた。だから、5年目と6年目の曜日効果(土日のバレンタイン)には嫌な予感がしていた。ところが、状況は好転しつつあるあるらしい。全国各地の運動の成果を私に紹介してくれる前に、小川典子さんのメールは、次のように続いていた。
「都心のオフィスワーカーの感度が高い層だけでなく、小学生からガテン系の方々まで、実にいろいろなタイプの方がフラワーバレンタインの花を求めにご来店くださいました。私たちが想像している以上に、『もしかしてフラワーバレンタインは世の中に浸透しているのかも…!』と初めて思えました。活動7年目にして、「ティッピングポイント」の兆しです。」
今年は、フジテレビ系で二つのドラマに「フラワーバレンタイン」が登場していた。地方のテレビ局(例えば、広島ホームテレビ)でも、花屋さん(「花の森」の佐伯店長)がインタビューを受けている。売り込んだわけではないらしい。「(テレビ番組は)こちらから仕掛けて実現したわけではないのです」(小川さんのコメント)。自然発生的な「仕掛け感の無さ」。各方面での勝手な盛り上がり。7年目にして、ヒットの条件が整ってきた。