教員生活45年間で、学部ゼミ生を毎年24名ずつ教えてきた。たくさんの科目がある中で、学生たちも楽しめて、なおかつわたし自身も勉強になったのが、「フィールドワーク」という課外授業である。フィールドワーク(Field Work)とは、その言葉からわかるように、現場(フィールド)での作業(ワーク)のことである。
もう少し具体的に言えば、マーケティングや流通の現場で起こっていることを観察して、それらをデータ分析することである。場合によっては、アンケート調査を実施したり、サービスを提供する企業や従業員にインタビューもワークに含まれる。
最終的には、マーケティングの現場で起こっていることを整理して、何らかの提案に結び付ける学習プログラムである。わたしのゼミ生でこの教育プログラムに本格的に取り組みはじめたのが、2005年に開業した「エキュート大宮」の現場観察からだった。
この年の3月に、「駅ナカ」と呼ばれる改札内のショッピングモール(エキュート)に、青山フラワーマーケットや
日比谷花壇など68店舗が出店した。学部ゼミ生と大学院生の合計50人が6チームに分かれて、各チームに割り当てられたブロック(約8店舗ずつ)を、一年間をかけて定点観察を続けた。
JR東日本ステーションリテイリング(当初は、JR東日本事業創造室)には、学生たちのフィールドワークに全面的に協力していただいた。年が明けた2月に、「フィールドワーク最終発表会」が法政大学ボアソナードタワー26Fのスカイホールで開かれた。お世話になったエキュート大宮の鎌田由美子社長(当時)や社員の方を審査員としてお招きした。
今週の水曜日(10月20日)に、フィールドワーク中間発表会が開催される。最終発表会は、2022年2月中旬に予定されている。今回は、中間報告会になる。2006年以降は、毎年4社から、フィールドワークに協力をいただいている。今年度の提携企業は、「(株)ハイファイブ」「廣田硝子(株)」「(株)レッグス」「(有)石井育種場」の4社である。
これまで、延べにして40社の協力を仰いできた。学生たちにとっては、はじめての企業研修体験でもある。卒業生からは、「社員の方と議論したり、報告会でのプレゼンなど、就活の役に立った」と言われる。卒業してはじめて、良い教育を受けたことを実感するようだ。
花業界でこれまで協力いただいた企業は、青山フラワーマーケット、日比谷花壇(当時:小田急ランドフローラ)、モンソーフルール、カインズホーム、石井育種場などである。それ以外では、店頭アンケート調査で、ケーヨーホームセンター、ドイト(現、ドン・キホーテ)、尾崎フラワーパーク、サントリー(当時:花事業部)などにも調査で協力をお願いした。
いまでは当たり前のように、大学が学生向けのインターンシップを通して、社会とつながりを持つようになった。わたしがフィールドワークの原点となる現場研修(三島市のキミサワ、1978年~)をはじめたころは、左翼系の教師から「企業と結託して何か怪しげなことをしている先生」というレッテルを張られたことを思い出す。昔日の感がある。
中間発表プログラムは、午後15時のスタートになる。場所は、法政大学経営大学院(新一口坂校舎1階101教室)で、今年も4チームのプレゼンテーションを行う予定になっている。フィールドワークのプログラムは、JFMAの「フラワービジネス講座」でも体験できるようになっている。