明治のプロビオヨーグルトのマーケティング。連載(下)では、タイトルを「王道の戦術、店頭で面展開」としてみました。キーワードプラスは、カラーブランディングです。
明治がヨーグルトの市場開拓がどのようなロジックで展開されているのかを整理してみたい。基本的な考え方は、3つである。①新しい価値創造に挑戦すること、②その価値を伝えるべき顧客を探し出すこと、そして、③王道のマーケティングを着実に実行することーーーである。
明治の研究所には、約5000種類の乳酸菌が集められている。大学や研究機関と共同で、乳酸菌の新しい機能について地道な研究を続いている。一方で、顧客がヨーグルトに求める基本価値は「栄養」と「おいしさ」である。このふたつのベネフィットに加えて、新たに創造した三番目の価値が、「健康」(=「保健」)という次元である。
新製品の投入で重要なポイントは、顧客ニーズ(健康に関する課題)と研究開発のシーズ(乳酸菌の機能性)を上手にマッチングさせることである。「PA-3」の場合、2006年ごろから生活習慣に関連してプリン体がクローズアップされていることに着目。調べると実際に20~60代の3割以上が気にしており、のちにPA-3のキャッチコピーに採用される「プリン体と戦う乳酸菌」を探し出すことになった。
発売を2015年春にしたのは、その1年ほど前からビール各社が「プリン体ゼロ」を謳った発泡酒を発売していたからである。PA-3 の投入の機は熟していたのである。 アイデアの着想から新製品が発売されるまで、約10年のリートタイムが必要である。
二つ目は、新製品の開発にあたり、価値を伝える顧客を探し出し、新しい顧客層にターゲットを広げていくという考え方である。
「明治プロビオヨーグルト」シリーズは、前回も述べたように「積み上げ」を実践した。男性セグメントの新規開拓、「夜」という飲用マーケットと「外」(仕事場)という飲用場所の顕在化である。もともとヨーグルトが飲まれるのは、「内」(家庭)だった。
ブランディングを例に説明しよう。まず、ブランド名には連続性が保持されている。プロビオヨーグルトの3つのブランドともに、乳酸菌の名称の一部(LG、R、PA)と数字(21、1、3)の組み合わせで構成。ブランド名が抽象的であることで、科学的な働きを連想する。
先行する2ブランドのカラーが「青」(LG21)と「赤」(R-1)だった。PA-3は「黄色」が採用された。赤・青・黄の三原色なので、売り場に陳列された商品が遠くからでも目立つ。パッケージ形状とサイズが統一されているので、店頭でのメーカー占拠率は自然と高まることになる。
最後は価格付けについてである。ブロビオシヨーグルトの希望小売価格は、一本129円(税別)。基本的に値引き販売の対象にならないのは、差別化されたサプリメントと状況が似ている。
PA-3のCM投入量は初年度約5000GRPで、認知率40%。主ターゲットがビジネスマンなので、通勤途上でメーカーからのメッセージに接触するよう交通広告を手厚くした。製品の差別性が高く、ターゲットを絞り込んだことで、リピート率は50%に迫るチチェーンもある。王道のマーケティングを実践、プロビオヨーグルトの15年度の売上高は11年度の約2.9倍に伸び、1千億円を超えた。
<キーワード・プラス> 色彩によるブランディング:
ブランドを識別する要素は、「ブランド・アイデンティファイア」と呼ばれ、カラーも重要な要素。明治ブロビオヨーグルトの革新性は、店頭マーケティングをも視野に入れ、ブランドの追加投入を色彩(青赤黄)のシリーズ化で実現したことだ。