(その2) 幼児体験と切り花の購入、環境が行動と意識を決める『北羽新報』2016年9月23日号

 連載コラムの二回目は、JFMAの調査活動について紹介してみた。子供のころに花や植物が身近にあったかどうかが、その後の切り花の購入を決定する。「近親性理論」=「毎日見ていると好きになる」の実証結果である。

 

 第一回の連載コラムで、自己紹介を忘れていたことがひとつありました。それは、大学で先生をしている以外に、花の業界組織「日本フローラルマーケティング協会」(一般社団法人)の活動にかなりの時間を割いていることです。創立から16年間、わたしが会長を務めています。この団体は、全国の花生産者(個人、団体)から花市場、花小売店(専門店、チェーン店)まで約220社が会員になっています。皆さんがご存知の会社ですと、山形おきたま農協、サントリーフラワーズ、さかたのタネ、大田花き、日比谷花壇、青山フラワーマーケットなどが有力なメンバーです。
 わたしたちは、10年前から「花と野菜、環境に関する調査」を継続して実施してきました。主な調査項目は、花や野菜の購入についてなのですが、今年度に実施したインターネット調査で、おもいしろい発見がありました。そのデータを紹介したいと思います。ちなみに、東北地方(とくに、青森県と福島県)は、総務庁の家計調査で世帯当たりの切り花購入金額が上位に来ています。秋田もそうですが、東北各県は仏花(キク)の消費量が多いのが特徴です。その理由も、以下の調査結果がうまく説明してくれています。

 

 今年度の調査でとても興味深かったのは、子供のころに花が身近にあった人(「室内に花が飾られていた:22.7%」「庭に花が咲いていた:49.2%」)と、花が身近になかった人(22.9%)では、切り花の購入に大きなちがいがあることです。具体的にデータで示すと、「室内に花が飾られていた人」の65.1%は、この一年で切り花を最低一回は購入していました。ところが、花が身近になかった人では、花を購入した人がその約半分(33.6%)でした。庭に花が咲いていたひとの花の購入率は49.6%で、その中間です。花の消費と子供時代の花環境は関連が深いのです。
 さらに衝撃的だったのは、子供時代の花との触れ合いが、オーガニックの野菜やその他の環境意識にも強く影響を与えていたことです。たとえば、「自然食品(オーガニック、無添加、無農薬など)を利用するひと」の割合は、室内に花が飾られていた人では43.4%なのに、花が身近になかったひとでは14.3%にしかなりません。また、この調査からは、子供のころに身近に花があったひとは、情報関与度が高い傾向があること、人や社会の役に立つことを商品選択の基準にしていることもわかっています。

 

 子供時代の花環境が、花購入行動だけでなく、数十年後の社会的な意識までも決めてしまうのは驚きでした。まさに、「三つ子の魂、百までも」なのです。