【JFMAニュース・巻頭言】「フラワーバレンタイン2015冬:キャズムを超えることはできたかな?」(2015年2月号)

 「フラワーバレンタイン推進委員会」(現「花の国日本協議会」)の井上英明さんと、この運動を始める前に確認したことは、「とにかく5年はがんばりましょう」だった。すぐの成果は求めず、とりあえずは5年くらいの時間をかけて、地道に「新しい物日」の認知を高めていくこと。しかし、基本的に低予算だから、マスメディアをうまく利用していく戦略に徹するしかなかった。今年に関して言えば、J-WAVEとのコラボレーションがキーになった。そこからテレビや新聞などのメディアに情報は伝わっていた。


組織論の問題では、フラワーバレンタインの運動を通して、ふだんのビジネスでは競合する立場にある小売店チェーンが、花業界ではじめて共通の目標を掲げて統一キャンペーンを展開した。「ワーキンググループ」では、競争関係にある花店から派遣されたスタッフが一緒にキャンペーンのプログラム作りに取り組んだ。

 いまだから言えるが、青山フラワーマーケットと日比谷花壇とJFTDが、同じキャンペーンのために同じポスターを店頭に貼ることなど、わたしが花の業界に足を突っ込み始めた25年前には考えられないことだった。3つの組織を粘り強く説得してくれた人物が複数いたことが幸いしたのだと思う。

 しかし、2014年2月14日(4回目のフラワーバレンタイン)は、予想もしていなかった大雪が首都圏を見舞った。フラワーショップは、雪や雨にはからっきし弱い。フラワーバレンタインの運動そのものの認知率が上がってきたようだが、対前年比での売上はダウンした。もっとも、思い返してみれば、初年度(2011年)も東京では雪が降ったことを忘れていなかったわけではない。それでも、この「花贈りのキャンペーン」がある程度は広がりを見せてきていたので、期待は大きかったのだった。唯一の慰めは、大雪にならなかった地方(中京圏や九州、北海道)での盛り上がりが、わたしたちの予想以上だったことだ。

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 そして、5年目のバレンタインが先週の土曜日にやってきた。
周囲の花業界関係者たちは、一週間前から、天気予報と睨めっこだっただろう。わたしも、自分が走るレース(出雲くにびきマラソン)が雪になってもいいから、3日後の2月14日だけは雪になってほしくなかった。そして、天気予報の通りになった。二年連続では雪が降ることはなかった。

 日本全国の花屋さんに電話取材が終わったわけではないが、一般的なトレンドは明らかにプラスの方向に動いている。個人的には、当日に備えて例年通り、31束のブーケを某花店チェーンに注文しておいて、わたしが所属している法政大学大学院を中心に、手渡して歩いた。夕方からは、地下鉄線経由で、この一年間お世話になった知り合いの女性陣の職場まで、花束を届けた。
 女性たちの反応は一部、個人ブログに書いてしまったが、そ例外のメールでの反応を抜粋させていただくことにする。女性たちに花を贈ることは、男性が自分の幸せな気持ちを運び届けることだ。だから、間違いなく、彼女たちからは、喜びの声と笑顔が返ってくる。わたしが4年間続けてきたことを新たに確認するようになった男性が増えている。

 ある大手チェーンの社長さんから、わたしに届いた携帯メールである。
「(仕事の話のあとで、)ところで、先週は私も初めてフラワーバレンタインしてみました。慣れないことに戸惑いましたが評判は上々でした!」。
 また、ブログでも紹介したが、ゼミの女子学生からは、バレンタインの前日に、「告白の花束」が届いたらしい。
「おひさしぶりです。最終発表の際は、サインありがとうございました(*プレゼンの優勝賞品はサイン入りのマック本)。報告なのですが、男友達からバレンタインの花束をいただきました!!先生のフラワーバレンタインは若者に広まりつつあるみたいです!笑」

 対前年比での売り上げは、集計してみないとわからないが、明らかにフラワーバレンタインの運動は大きな広がりを見せている。