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【依頼原稿】 「コロナ後の花産業:その後の変化と将来展望」『花き園芸新聞』(2020年8月1日号)
 6月末に『花き園芸新聞』から、「コロナ後の花産業について」というお題で原稿を依頼された。6月20日発行の『JFMAニュース』で、同じテーマで巻頭コラムを書いている。そのときのドラフトを下敷きに、もっと詳しく解説した原稿を図表つきで『花き園芸新聞』に書いている。
       
 なお、依頼された掲載原稿の分量(2000字以内)を大幅にオーバーしている。そのため、実際の掲載原稿は、もっと短くなっているかもしれない。確認がとれていないので、とりあえず以下では、わたしが書いた全文を掲載しておくことにする。
       
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「コロナ後の花産業:その後の変化と将来展望」『花き園芸新聞』(出稿未定) V1:20200707
 文・小川孔輔(JFMA会長、法政大学経営大学院教授)
   
 緊急事態宣言の解除から2か月が過ぎた。一向に終息の見えない新型コロナ感染だが、海外ではコロナ後に向けて経済活動が再開しはじめている。約半年間の花業界の動きを俯瞰してみることにしたい。新型コロナウイルスの蔓延で、日本の花産業はつぎのような変化を経験してきた。コロナ後の一般的なトレンドについては、図表をご覧いただきたい。
 
1.産地も商社も直接販売に向かう
 被害が甚大だったのは、とくに生産者と輸入商社である。市場流通が全く機能しくなり、切り花や鉢物は販売先を失った。とくに業務用(葬儀、結婚式、宴会、歓送迎会など)の切り花が壊滅的な打撃を受けた。オランダでも、売りなくなった切り花が、産地や市場内で廃棄される悲惨な映像がメディアに露出したことで、花生産者への支援の動きが広がった。
 とはいえ、コロナ後は、現状の流通チャネルが見直されはじめている。生産者や輸入業者も市場の流通に頼るのではなく、自らの販売経路を構築する努力を始めている。花屋にとっては、ダイレクトな販売経路の台頭は二重の意味をもっている。‐ι閉潅が自由になることと(プラス面)、⊆らの販売力が試されていること(厳しい側面)。環境の変化は、チャンス(機会)とピンチ(脅威)の両面を与える。ピンチをチャンスに変えることができるかだろうか?
 
2.ECの好調と店舗の小商圏化
 花屋の商売にとっての最大の打撃は、自粛期間中に店を開けることができなかったことである。在宅勤務で花が欲しい消費者は、ネットで購入するしか手段がなかった。かろうじて営業を継続できた店舗は、「母の月」の効果もあって需要が分散できた。結果として、花材調達と作業効率が楽になった。
 コロナ後で消費者の行動が大きく変わったのは、来店客が近くの店を選ぶようになったことである。都心部の商業施設はもちろんのこと、郊外でも人々は電車やバスに乗らず、徒歩や自転車で買い物をするようになった。換言すると、「小商圏化」である。実際に人間は物理的に遠くに行けなくなったわけだから、店舗からの直接配送や商品の店舗ピックアップが増えている。この傾向は、この先も変わらないだろう。
   
3.業務用からホームユース向けへの規格変更
前述の通りで、自粛期間中に花業界は業務需要を失ってしまった。実現したはずの売上が完璧に蒸発してしまったと言っていいだろう。業務需要の低迷は一過性のものではない。葬儀や宴会の自粛は、この先も続いていくだろう。一度、社会的な習慣で流れが変わると、元に戻すことが難しくなる。
 結果として起こっていることは、自粛期間中に売れていた小さなサイズの花が、いまでも売れ続けていることである。40〜50センチの短い花のほうに高値がつくという逆転現象が一部の市場で見られていた。コロナで需要構造が変わったと考えてよいだろう。
この現象には二つのプラスの側面がある。|擦げ屬里曚Δ物流費は格段に安くなる。コンパクトな花を安く運んだほうが利益率は高くなる。その結果、∪源瑳圈焚峪埔譟砲砲箸辰討蓮∈惑殃法と選別(グレーディング)のやり方を抜本的に変えないといけなくなる。
  
 以上、3つのトレンドの変化以外に、追加で適応すべき2つの挑戦を示しておく。
 
4.異業種の花業界への参入。
 花屋以外の業種が花を扱い始めていること。ユニクロや無印良品が花の販売をはじめている。
5.個店がダイレクト販促を取り組み始めている。
 生産者も花店も、花の売り方を抜本的に見直しはじめている。EC販売に取り組むとともに、集客の方法が変わってきている。SNSで自社の商品をプロモーションするようになった。待ちの経営から、攻めの経営への変化である。
   

図表 コロナがもたらした7つの変化
 *原因 → 結果 → 生起した現象
 社会的な距離 → 接客の困難さ → 無人レジ、非接触型対応、電子マネーの普及
 外出自粛 → 小商圏(近場での買い物) → 電車、車利用から徒歩、自転車利用
 物流コストの上昇 → 自前での輸送 → EC隆盛(売上3〜5倍)
 プロモーションの停止 → 低価格より品質重視 → ネット配信、新聞の影響力低下
 在宅勤務 → 自宅での仕事環境の見直し(花や植物への渇望) → Stay Home with Flowers 〜 Enjoy Home with Flowers
 グローバルな産地総崩れ → 花市場が機能不全に(価格の崩壊) → 花の大量廃棄、国内産地の市場依存脱却の動き、生鮮(生花)からフラワー雑貨への動き
 需要構造の変化 → 業務需要が完全に消える → ホームユースの規格見直し、新しいマーケットの創造
 注:本稿は、JFMAの機関紙の巻頭言、「コロナ後の花産業」『JFMAニュース』(2020年6月2日号)を加筆修正したものです。
| Kosuke Ogawa | 13:52 | - | - | pookmark |

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