南米ツアー第3日目は、サンパウロ郊外のオランブラを視察した。戦後の1948年に、オランダからの移民(14~15世紀に移住)によって拓かれた花の産地である。この村には、オランダの花産業のすべてが揃っている。オランダ人が得意とする「セット移転」である。栽培技術、施設と品種、人間の一括移転である。
オランブラは、サンパウロから北西に約150kmほどのところにある。この小さな町までは、サンパウロから高速道路を利用して約2時間ほどで到着する。オランブラ(Holambra)の地名は、その名から想像できるように、オランダとブラジルの合成語である。今日の視察は、ミヨシ種苗の三好正一社長の計らいで、ブラジルボール社(ロベルト・ファーガントン社長)が町を案内してくれた。
訪問したのは、オランブラ市場、オランダ人が経営する鉢物生産(ケイトウと唐辛子)の農場(maxima flor)、ボール社の近くにある小さなガーデンセンター(promo flora)の三箇所である。
オランブラ市場は、1989年に作られた新しい市場である。アメリカ大陸で最大のフラワーオークションで、セリ下げ方式の機械競り方式を採用している。場内物流と情報システムは、オランダから導入したものである。
年間の取扱高が約180億円。2013年で、40%が予約相対、60%がセリ取引。セリは近年減少傾向にあり、予約相対の割合が増えている。日本やオランダと同じある。いまは、インターネット取引が2%になっている。
花の小売販売額は、ブラジル全体では約2000億円。オランブラ市場の取扱高は、ブラジル全体の25%を占めている。
品質の良い花がオランブラ市場に集荷されている。ブラジル全体では経済不況の影響で、花の取り扱いは減少傾向にあるが、オランブラは年率8%で今年も成長している。
近年の経済成長で豊かになったブラジル国民だが、消費生活の質という点では、まだまだの感がある。元々の国民性なのかもしれないが、色のバラエティに対する感度はあまり高いとは言えないようだ。
例えば、花の色の好みについてのデータがある。もっとも好まれる花の色は、60%が白色。2番目が黄色で15%。赤やオレンジなど、その他は25%だけ。先進国の色彩分布と比べて、異常なくらいに淡白な色を好む傾向がある。いや、保守的とさえ言っていい。
これは、花に限った話ではない。町中を走っている車を観察していると、車の色がほぼ二色しかないことに気づく。グレーと黒でほぼ95%を占めている。ときどき、白の車を見かけるが、赤や青や黄色のボディカラーはほとんど見かけない。
ガイドさんに尋ねてみたが、答えは、「転売するときにグレーや黒でないと売りにくい」だった。しかし、それにしても、ブラジル人は地味で無難な色しか選ぼうとしない。陽気でフレンドリーな人種だが、もしかすると、色のバラエティについては、あまり構わない国民性なのかもしれない。
そのように思った根拠は、以下のようなわたしの観察からである。オランブラのオークションで、荷捌き所のトローリー(台車)に乗っている鉢物を見ていたときのことである。
ポットマムやカランコエの台車トレイには、花色をミックスした12ポット入りの箱が乗っていた。近寄って箱の中を覗いて見ると、花鉢の色の数に一貫性がないことがわかった。
ある箱には、白のポットマムが8鉢、黄色のポットマムが3鉢、ピンクが1鉢。そうかと思うと、別の箱には、白菊が6鉢、黄色が4鉢、ピンクが2鉢。日本では絶対にありえないことである。どの箱であっても、混色の鉢花の色の構成は一定している。例えば、白7、黄3、ピンク2のように比率は決まっているもこだ。
このように推論したのは、前日の夕食で恐ろしい経験をしたからだった。
わたしたちは、サンパウロでは、日系のホテルに泊っている。昨日の夕食は、和食だった。夕食のメニューは、突き出しに始まり、お刺身、焼き魚、冷奴と続いた。程なくして、ご飯と味噌汁に天ぷらがやってきた。
さて、天つゆに、天ぷらを浸そうとして、隣の谷井さん(仙花社長)のお皿を見た。わたしの天ぷらの皿にはオクラが乗っているが、谷井さんのには、オクラがない。反対に、リングオニオンの天ぷらがわが皿に所属していない。
周りのツアーメンバーの三人の皿を確認すると、驚くべき事実が明らかになった。どの皿にも、衣がたっぷりのエビ天2本は必ずあるようだが、野菜の天ぷらは、皿ごとにアイテム構成がばらばらだった。カボチャ、オクラ、玉ねぎ、ナスが、皿ごとに種類と数が異なっていた。
同じ事件に、翌日、オークションの荷捌き所で遭遇したのだった。鉢菊の色数がバラバラだった。つまりは、白が好まれているのではなく、カラーはどれでも良いのではなかったのか。
記事が長くなりかけている。オランブラの1日は、有意義に過ごせた。そのことを伝えて、ブログを終わる。なにせ、iPhoneからの入力で疲れてきた。