先週末に訪問した「ローソンファーム千葉」の感想を残しておく。これまで大手小売業(イオン、7&i)とフードビジネス(サイゼリヤ、ワタミ)が農業分野に参入している。これからも食品スーパーの中堅どころが参入する可能性を持っているが、ローソンファームは将来のモデルとなる可能性を秘めている。
7月30日に訪問したのは、千葉県香取市にある「ローソンファーム千葉」。全国に23箇所あるローソンファームの中で、最初に拓いた直営農場である(2010年6月)。露地栽培が18ha(大根と人参:年二作)、ハウス栽培が1.5ha(ほうれん草と小松菜:周年出荷)。将来的には、30haに拡張oする予定がある。
ローソンファーム千葉の社長は、なんと31歳!の若者だった。篠塚利彦さんは、ローソンファーム千葉に出資している「芝山農園」(家族3人で75%を出資)の四男で、ローソンファーム千葉を開園した当時はまだ26歳だった。
「大きな会社と組むことに家族ともども悩んだけれど、自分がやりたいことを早く実現したかったので、思い切って飛び込んでみた」(篠塚さん)。
篠塚さんは、5月に立ち上がったばかりの「香取プロセスセンター」の社長も兼務している。31歳で二つの会社の社長である。そして、その後に全国に続々と拓かれていったローソンファームのモデル農場になっている。
ローソンが、農家を選択する基準が公表されている。それによると、
①若い次世代を担う営農家、
②独自の販路を持っていること、
③農業技術開発に積極的なこと。
二番目の条件は、農家が独自の販路を持っているだけでなく、地域の農家から不足している農産物を買い付けることができることも含まれている。実際的に、芝山農園は、近隣の農家からサツマイモを買い付けて、ローソンなどに供給している。
三番目の条件は、「中嶋農法」(ローソンが商標を買収した農法)と「JGAP」にしたがう営農を受け入れることである。これは、先進的で差別化された農産物を作るための要件になる。もちろん、参加へのハードルは決して低くはない。
イオンやワタミは、直営農場を主体に運営されている。それに対して、ローソンの農業参入のアプローチでは、あくまで主役が、「後継者のいる次世代を担える農家」である。ローソンの中での農業の位置づけは、「地域で核となれる農業生産法人を目指す」となっている。核となる農家というのは、単に良品が生産できるだけでなく、近隣の農産物からも集荷ができるという意味である。
ところで、ローソンファーム千葉に対するローソンの出資比率は、わずか15%である。その他は、東京シティ青果(5%)とRAG(5%)で、どちらも中間流通業者(仲卸)である。つまり、小売と流通と農家で構成されたチームで運営されているが、出資比率からしても、地域のローソンファーム(たとえば、ローソンファーム千葉)の主役は、あくまでも芝山農園のような「地域の農家」なのである。
考えてみると、このビジネスの運営形態は、筆者が以前から主張してきた「農業フランチャイズシステム」である。ローソン(本部)が、地域のローソンファーム(加盟店)に、農業技術(中嶋農法)や管理手法(JGAP)、CVSの販路を提供してFC化をめざしているのと同じである。
今後は、香取プロセスセンターのような加工センターが、全国各地の農場に併設されることになるだろう。そうなると、「六次化された農場」は、CVSの弁当工場のように変わっていく。場合によっては、篠塚さんのように、現状では群馬から委託で仕入れているキャベツを自分の農場で作ることも考えられる。
その意味は、農業生産にとってはかなりドラスティックである。かさばる商品(キャベツ)や重量野菜(大根)を、自前の農場でまとめて作ると物流コストが低減する。さらには、鮮度のよい農産品が、消費地の近くで栽培できて加工できるようになる。
これが、全国に広がったならば、その未来はどうなるだろうか。少なくとも、2018年には、ローソンファームに関しては30箇所の加工併設の農場ができるはずだ。これは、新しい農業の形に進化していくのではないだろうか?
小売業が直接、農場を経営するのではないところがポイントである。あくまでも農家が主役である。農業FCとしてのローソンファームの将来に期待したい。