6月8日から、大学院・学部合同のフィールワークがはじまっている。来週からは、チームごとに店舗見学を計画している。
学生たちのために、日本の小売店舗の「ベンチマークデータ」(基準参照値)を提供しておく。
以下は、2003年に発表されたスーパーマーケットの平均値である(データソースは、日本スーパーマーケット協会か? はっきりしないのは、わたしの手元にあるメモにしたがって作成したからである)。出典を明記せよという、いつもの注意には反するが・・・・
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その前に、わたしの経験談をひとつ紹介しておく。どの業態を対象にする場合でも、調査方法と原理は同じである。店舗を観察をするときには、つぎの3つの指標をしっかりと把握することである。
(1)店前の通行量、
(2)客数(土日・平日別)、
(3)客単価。
観察時間に余裕があれば、これに加えて、
(4)商品構成(アイテム数、基本SKU)、
(5)接客サービス、
(6)売り場面積(+バックヤード面積)
をチェックすることである。
実際の事例を紹介する。5月29日(月)に、関西から進出してきたある花屋さんチェーン(9店舗)の東京一号店を訪問した。社長さんの了解を得ていたので、店長さんに30分間インタビューすることになった。山手線の駅前から3分のところにある交差点の角で、花屋の場所としては悪くない立地である。売り場面積5坪、バックヤード2坪と見た(正解であった)。なお、売り場面積のカウントのためには、店舗内を歩いて歩幅数(一歩60~70㎝)で計る。
アルバイト店長さんにまず聞いたのは、店前の通行量である。「知らない」というので、ふたりで5分間、通行客数をチェックすることにした。わたしは、駅から歩いて来る人の数を、男の子(3年間の某園芸店で働いたことあり)は逆方向からの通行客をカウントすることにした。
夕方5時半すぎである。わたしは83人(5%が自転車!)、彼は63人であった。合計が146人。開店時間10時、閉店時間は夜10時。ピークが7時だという。夕方5時台は平均的な通行量からやや上になる。この時間帯の推計は、一時間で1750人くらい。平日一日(12時間)の通行客が、6~8掛で10500~14000人(自転車5%)と見た。本来は入店率は1%前後。30分間観察した感覚では、新店なので入店率(買上率)は0.3%。店売りの客はおよそ30~40人。客単価は1500円。したがって、平日の店の売上は約5万円。
近くのお店から頼まれてお届けする商品もあるらしい。この部分が平均1万円。平日の日販は6万円と見た。土日は、客単価が上がるので(1800~2000円)、売上はそれよりやや多いはずである。それでも10万円前後であろう。平均では8万円。月商240万円、年商2800~3000万円。わたしが30分間の観察でつかんだ推計データである。
そう言われたところで、アルバイト店長さんは、売上日報をみるためにレジまで戻って行った。販売実績は、ほぼわたしが指摘したデータの通りであった。小売店で働いていたら、わたしに指摘されるまでもなく、この程度の数字はいつでも頭に入れておくべきである。それができないのは、教育の問題である。
学生達には、そのようになってほしくない。というわけで、日本のスーパーマーケットの平均的な数字を覚えておいて欲しい。自分が観察する店舗は、このベンチマークとどの程度離れているのか?それはなぜなのか?
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以下は、日本スーパーマーケット(食品SM)の一店舗当たりの平均的な姿である。参考までに、コンビニ(小川の感覚)の経営数値も付け加えてみた(括弧内は概数である)。細かい数字を覚えるのはむずかしいので、( )の内側の数値で記憶しておくと良い。わたしはいつもそうしている。
1 販売統計
売り場面積 481坪(約500坪、約1500㎡)
従業員数 47.3人(約50人)
一人当たり売り場面積 10.2坪/人(約10坪/人)
レジ台数 8.1台(約8台)
年間売上高 14.84億円(約15億円)
平均日販(/店)407万円(400万円)
来店客数(/日) 1943人(約2000人)
客単価 1996円(約2000円、*販売データと不整合)
粗利益率 25~26%
2 店舗の経営効率
一坪当たり売上高 308万円/坪・年(約300万円)
一日当たりの売上は、8400円/坪・日
従業員一人当たり売上高 3139万円/人・年
一日当たりの売上は、8.6万円/人・日
3 対照事例:コンビニエンスストア
売り場面積 30坪
従業員数 3人
一人当たり売り場面積 10坪/人
レジ台数 2台
年間売上高 1.8億円
平均日販(/店)50万円
一人当たり日販 18万円
来店客数(/日) 800人
客単価 625円
粗利益率 32~35%