【講演レジュメ】「異業種コラボレーション」(JFMAフラワービジネス講座:上級編)@2015年3月16日実施

 JFMAフラワービジネス講座で、「異業種コラボレーション」について講義した。講演後に修正したレジュメをアップする。配布済みのレジュメに手を加えてある。はじめて話すテーマだった。哲学的な内容である。ふたつの組織が提携する際、他人と仕事をするときの心構えといった視点から話した。



講師:小川孔輔(JFMA会長、法政大学教授)

1 異業種交流の意味
(1)自分(自社)と他者(他社)
 ・自他の関係性、まずは利他の利益構造を作ることが先
 ・拡張された自己(Extended Self)の概念
 ・「環境」と「組織」、そもそも東洋人にとって「環境」は存在しているのか?

(2)協働作業の目的
 ・ひとつの比喩
  ~ 結婚(自決の関係性)と家族(天から降りてくる関係性)
 ・「現在志向」と「未来志向」
   長期的な利益とその後の波及効果(拡張性)
 ・「経済的な成果」と「学習の成果」をどのようにバランスさせるか?

(3)異種間交雑の成功条件
 ・自分の立ち位置=犠牲的な精神
   ただし、「提携の質」に関しては、主張すべき点は言うこと
 ・他者への思いやり=取り組み先への配慮
   ただし、甘えさせない関係性構築
   ×全量依存(供給側) × 全量買い取り(需要側)
 ・「フィット」(適合性)=組み合わせの妙
 ・いまが大切か、未来に期待するのか?
   悪い例:(花業界の事例で、)
   「ブランドを作るとき」や「日持ち保証販売」をしたいときには、
   花束加工業者業の選定で短期的価格志向では成功はできない。

2 コレボレーションを考えるヒント
(1)稲盛氏の仕事観=「生き方」の指南
 ・人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
  「考え方」 ← 他者との距離の取り方
  これを共同作業(2つの組織が提携すること)に読み換えると
  「考え方」 → 戦略性
  「熱意」 → 共感性(共振)
  「能力」 → 補完性
 ・目標の再設定
  仕事の成就にとって大切なこと
  = 目標を設定する能力 と 目標を再設定する勇気
  ・自分を変えることができる能力
   自らの枠から飛び出せない人には、
   異業種コラボレーションはできない
   なぜなら、共同作業をしている間に、環境も目標も変わっていくものだから

(2)ブランド提携とブランド拡張
 ・水平的なブランド展開の2類型
 ・ブランド提携
  「架橋戦略」と「提携戦略」
 ・ブランド拡張の成功条件(小川&金澤)
  ①イメージの適合性(似た者同士の結合、近接性)
  ②パフォーマンスの補完性(相手の持っていないものを補い合う)
  ③出て行く先(拡張先、提携先)で、技術能力が生かせるかどうか?

(3)異業種コラボ戦略策定の前提条件
  ①「つなぎ手」がいること=ネットワークハブ理論
   提携関係が構築できる場合は、そこに「境界人」(boundary person)の存在が
  ②提携組織が「未来志向」であること
  ③一見して対立しているような当事者たちを組織させる
  ④コレボレーションは「良い偶発」を生み出す
  ⑤伝統的で古い業界ほど、コレボレーションが梃(レバレッジ)として作用する

3 異業種コレボレーションの事例
(1)トヨタ自動車の「WiLLプロジェクト」(1990年代後半)
 ・異業種(7社)が同じブランド名(WiLL)で結束
  ターゲットのみ共通(20代~30代の若者:団塊ジュニア?)
 ・トヨタは、「WiLL Vi」「WiLL VS」など3車種を発売 
  ただし、本社から開発とマーケティングを切り離す
  → そもそも、社内改革のきっかけを外に求めた 
 ・当時の提携ブランドは、
  トヨタの他に、花王、アサヒ、コクヨ、近ツリ、パナソニック、グリコ?
  → 経済的利益を共有することが難しかった

(2)フラワーバレンタイン
 ・2011年~、花業界の共同プロモーション
  → 対立する競争企業同士が手を取り合えた
   業界の若手が実行部隊を編成した
 ・成功の要因のひとつが、異業種コレボレーション
  → 異業種参入組と既存プレイヤーが同時に参画
 ・初期の頃のFV運動では、どこを巻き込んできたか?
  → 商業施設(都内の百貨店、SC)、メディア(ラジオ、テレビ)、映画館

<課題>コラボレーションがうまくいった相手先のケースを考えてみよう

(3)業務提携の課題(法則をどのようにとらえるか)
 ①「カクヤス」と「コルク」(プレジュール)
 ②「花業界の企業」と他業種の企業を組み合わせてみる