JFMAフラワービジネス講座で、「異業種コラボレーション」について講義した。講演後に修正したレジュメをアップする。配布済みのレジュメに手を加えてある。はじめて話すテーマだった。哲学的な内容である。ふたつの組織が提携する際、他人と仕事をするときの心構えといった視点から話した。
講師:小川孔輔(JFMA会長、法政大学教授)
1 異業種交流の意味
(1)自分(自社)と他者(他社)
・自他の関係性、まずは利他の利益構造を作ることが先
・拡張された自己(Extended Self)の概念
・「環境」と「組織」、そもそも東洋人にとって「環境」は存在しているのか?
(2)協働作業の目的
・ひとつの比喩
~ 結婚(自決の関係性)と家族(天から降りてくる関係性)
・「現在志向」と「未来志向」
長期的な利益とその後の波及効果(拡張性)
・「経済的な成果」と「学習の成果」をどのようにバランスさせるか?
(3)異種間交雑の成功条件
・自分の立ち位置=犠牲的な精神
ただし、「提携の質」に関しては、主張すべき点は言うこと
・他者への思いやり=取り組み先への配慮
ただし、甘えさせない関係性構築
×全量依存(供給側) × 全量買い取り(需要側)
・「フィット」(適合性)=組み合わせの妙
・いまが大切か、未来に期待するのか?
悪い例:(花業界の事例で、)
「ブランドを作るとき」や「日持ち保証販売」をしたいときには、
花束加工業者業の選定で短期的価格志向では成功はできない。
2 コレボレーションを考えるヒント
(1)稲盛氏の仕事観=「生き方」の指南
・人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
「考え方」 ← 他者との距離の取り方
これを共同作業(2つの組織が提携すること)に読み換えると
「考え方」 → 戦略性
「熱意」 → 共感性(共振)
「能力」 → 補完性
・目標の再設定
仕事の成就にとって大切なこと
= 目標を設定する能力 と 目標を再設定する勇気
・自分を変えることができる能力
自らの枠から飛び出せない人には、
異業種コラボレーションはできない
なぜなら、共同作業をしている間に、環境も目標も変わっていくものだから
(2)ブランド提携とブランド拡張
・水平的なブランド展開の2類型
・ブランド提携
「架橋戦略」と「提携戦略」
・ブランド拡張の成功条件(小川&金澤)
①イメージの適合性(似た者同士の結合、近接性)
②パフォーマンスの補完性(相手の持っていないものを補い合う)
③出て行く先(拡張先、提携先)で、技術能力が生かせるかどうか?
(3)異業種コラボ戦略策定の前提条件
①「つなぎ手」がいること=ネットワークハブ理論
提携関係が構築できる場合は、そこに「境界人」(boundary person)の存在が
②提携組織が「未来志向」であること
③一見して対立しているような当事者たちを組織させる
④コレボレーションは「良い偶発」を生み出す
⑤伝統的で古い業界ほど、コレボレーションが梃(レバレッジ)として作用する
3 異業種コレボレーションの事例
(1)トヨタ自動車の「WiLLプロジェクト」(1990年代後半)
・異業種(7社)が同じブランド名(WiLL)で結束
ターゲットのみ共通(20代~30代の若者:団塊ジュニア?)
・トヨタは、「WiLL Vi」「WiLL VS」など3車種を発売
ただし、本社から開発とマーケティングを切り離す
→ そもそも、社内改革のきっかけを外に求めた
・当時の提携ブランドは、
トヨタの他に、花王、アサヒ、コクヨ、近ツリ、パナソニック、グリコ?
→ 経済的利益を共有することが難しかった
(2)フラワーバレンタイン
・2011年~、花業界の共同プロモーション
→ 対立する競争企業同士が手を取り合えた
業界の若手が実行部隊を編成した
・成功の要因のひとつが、異業種コレボレーション
→ 異業種参入組と既存プレイヤーが同時に参画
・初期の頃のFV運動では、どこを巻き込んできたか?
→ 商業施設(都内の百貨店、SC)、メディア(ラジオ、テレビ)、映画館
<課題>コラボレーションがうまくいった相手先のケースを考えてみよう
(3)業務提携の課題(法則をどのようにとらえるか)
①「カクヤス」と「コルク」(プレジュール)
②「花業界の企業」と他業種の企業を組み合わせてみる