ゼミの学生たちの感想文の優秀作品を3人分掲載する。前回の掲載と合わせて今回は5名が選ばれた。
「CSは女子力で決まる!感想文」38期 愛場 瞳
本書は先生がご自身のBLOGにも書かれていた通り、とてもデザインに凝られ、今まで授業で扱ってきた専門書とは180°違うイメージを持った。読み手を楽しませる工夫が処々に施してあり、小説のようにあっという間に読み進めてしまった。普段、専門書に触れる機会が無い母にも本書をすすめたところ、母も同じ感想を抱いたようである。
本書を読む前、ここに書かれているのは、ある特定の優秀な女子社員が、企業の貴重な資源となっている例が挙げられているものと思っていた。しかし、本書を読み終えた今、その予想は間違っていたのだと分かった。なぜなら、本書の中に登場する女子社員は極々普通の女性であったからだ。7社は女子のプライドをくすぐるのが上手であると感じた。
その中で私は、自分の「経営資源としての従業員」や「企業の人材育成」への考え方が凝り固まっていたもので間違っていたのだと気が付かされた。
本書のなかで特に印象に残ったことが2つある。
一つ目は、第2幕ヤオコーの「才能は伸ばすものという前提、見るのは人柄」という採用基準だ。
きっとこの採用基準は他6社にも共通するものがあるのではないだろうか。きっと採用対象になるのは、「成長意欲のある人材」や、平たく言えば「良いヤツ」を採用するのではないかと感じた。なぜなら、このような企業には、スキル・技能を成長させる環境は十分に整っていて、人材に必要なのは「成長意欲」や「根本的な性格の良さ」であるからだ。最近に、就活ガイダンスなどをいくつか受け、「企業が聞きたいのは、あなたが何の活動をして何の技術・スキルを得たのか、ではなく、あなたがなぜその活動に参加しようと思ったのか、その中で苦難をどう乗り越えたのかという過程である」という話を聞いたことがあった。この話を聞いたときにはあまり納得することができなかったが、今ならとても理解できる。
二つ目は、第3幕シンガポール空港について、従業員の「うちでこんなことじゃだめだ」という誇りの表れた一言と、それに対して意外にも給料が平均水準であることだ。
特にこの章を読んでいて、私自身のアルバイト経験を当てはめることが多くあった。私は今まで、居酒屋チェーンと塾講師の2つのアルバイトを経験してきた。居酒屋チェーンは辞めてしまったが、塾講師は今も継続している。この2つのアルバイトは『従業員満足』という点でとても対照的だった。
居酒屋チェーンでは、シフトを無理に入れさせられることや、時間を延ばされることもあり、象徴的なブラックであった。アルバイトのモチベーションも低く、店舗にプライドを持って働いている従業員はいなかったように思う。もしかすると、店長もまた然りだ。当然、覆面調査の評価も低かった。また、アルバイトの多くは給料が少ないと不満を抱いていた。
それに対して塾は、株式会社でも何でもない、私が小学生のころに友人の母親が始め、民家を借りてやっている、とても小さな寺子屋のような塾である。実際に私も小学・中学のころ、ここの塾でしごかれた身で、他のアルバイトもほとんどがここの塾の出身だ。私がいま授業を担当しているなかに、数学の「方程式」がよく理解できていない中学生がいる。最近はアルバイト時間外で、その生徒用に方程式の解説のまとめを作成している。給料が発生することが無くても、生徒のために出来ることはないだろうかと考えてしまうのだ。このように何か工夫を提案してくるのはアルバイトの中で決して私だけではない。それは、給料をもらえるという喜びよりも、子供の勉強の力になれているという喜びのほうが優っているからである。塾長が出した宿題の量が少ないと、「ここの塾でこんなことじゃだめです!」とアルバイトが意見するほどである。まさにシンガポール空港で出てきた言葉そのものだ。それほどに、アルバイトそれぞれが生き生きと活動している。結果、地元の小学・中学の保護者同士の紹介やお勧めによって、定員いっぱいに生徒がいる。CSも比較的高い水準を達成できていると言えるだろう。
良い働きをしていれば、それに対して良い給料を求めるはあたりまえだと思っていたが、それはむしろ逆であった。従業員にとって働く目標が「給料」ではなく「より良いサービス」となるのが、ESとCSと企業が良いサイクルを生む一つの条件であるという発見は、目からウロコであった。
大学生活も3年の半ばを迎え、そろそろ就活にいよいよ直面する。この時期にこの本を読む機会をいただけたことが幸運であった。私も、自身を成長させてくれ、また貢献したいと思える企業への就職を目指し、尽力しようと思う。
「CSは女子力で決まる!を読んで」37期 相田真宏
この本を読んで一番はじめに感じたのは、うれしさだった。生まれてから今まで、自分の行ったことが新聞やパワーポイントではなく本として掲載され、多くの人に伝わり、尚且つ保管されるという経験はしたことがなかった。あまり説得力のあるデータではなかったかもしれないが、今まで買って読んできた小川先生のRF1の内容の中に自分の参加した内容が含まれたということがとてもうれしかった。
私が初めて従業員満足度に興味を持ったのは、数年前、東洋経済でオリエンタルランドの記事を読んだことがきっかけだ。その頃は漠然と従業員が喜ぶことをすればお客を喜ばせようとし、お客が喜べば努力が結果として表れるので従業員が喜び、それが従業員のモチベーションにつながるという循環にあるのかなと考えていた。この本を読んで、いろいろな企業のCSとESの事例を知ったことでCSとESの関係の根本はもっと人間らしいところにあり、複数の組み合わせになっているのではないかと感じることが出来た。
私は、フィールドワークでヤオコーを担当させてもらっている。日頃のフィールドワークでは、昨年フィールドワークをさせていただいたカインズや、インターンシップをさせていただいたアクセンチュアより利益に直結することを任され、毎回ものすごいサポート体制で支えてもらっており、私は日頃からなぜヤオコーは社員でもないゼミ生にこんなにも優しくしてくれるのだろうと疑問に思っていた。ヤオコーの章を読んだとき、フィールドワークで日頃感じているなるべく私たちに仕事を任せてくれようとする雰囲気や、私たちを育てようとしてくれている雰囲気はこのような自由でパートナーをも大切にする社風からきているのだなと感じた。
「CSは女子力で決まる」を読んだ数日後、ヤオコー東大和店において試験販売を行った。試験販売を行ったのは、私たちヤオコー班が開発した抹茶ソースと白玉を使った「とろ~り抹茶おしるこ」という商品なのだが、その際ヤオコーのパートナーさんの女子力の高さを実感することが出来た。列挙しきれない程あるので驚いた事だけを挙げると、1、「POPが既に作成されていた」。2、「コミュニケーションがうまく取れていた」。3、「個人がそれぞれの判断で行動していた」。というのが挙げられる。
1、「POPが既に作成されていた」は、私がもっとも驚いた事である。試験販売の4日前、ヤオコー店長会議において開発した商品のプレゼンテーションを行ったのだが、その内容を踏まえたPOPが試験販売のために店舗を訪問した際、既に3枚も作成されていた。さらに私たちが提案した売り方だけではなく、「この商品が売れると商品化!(ステープル商品化)」という実際にはないストーリーが追加されており、泣き落として売るという売り方が考えられていた。このストーリーが追加されていたお陰で購買を悩んでいるお客に最後の一押しをすることが出来、かなりの数の購買に繋がったと感じている。
2、「コミュニケーションがうまく取れていた」は、困ったときにお互いに助け合える、また些細なことでも助けて欲しいと言い合える人間関係が取れていた。この人間関係が作られたのは、ヤオコーのバックグラウンドに食堂があることに関係があるのではないかと私は考えている。食堂では毎日30人程度がこの食堂で昼食をとるのだが、昼食を調理するパートナーさんを介することで誰もがコミュニケーションが取りやすくなっていると感じた。私自身も食堂を借りて試食を作っている際、調理をしているパートナーさんに話しかけてもらい、多くのパートナーさんと話をすることが出来た。
3、「個人がそれぞれの判断で行動していた」は、私がパートナーさんにお願いをしたときに感じたことだ。普通、何かお願いをすると「上の人に確認してください」と言われるようなお願い(例えば、売り場の真ん中にあるクッキングサポートコーナーで調理させて欲しい、試食に使うスプーンを分けて欲しい、マイクパフォーマンスがしたいから店内放送を使わせて欲しい等)をパートナーさんそれぞれの判断で行わせてくれた。パートナーさんそれぞれが自身で判断出来ることによって、お客の要望にも素早く対応できているのかもしれないと感じた。
「CSは女子力で決まる」を読んだことにより、試験販売の際にヤオコーのCSの秘密に気付くことができ、肌で感じることが出来たと思う。
「CSは女子力で決まる!」37期 桜井直樹
初めに、本書の高いデザイン性について、率直な感想を述べたい。
『小川先生らしい』
女性の心がわかる小川先生だからこそ表現できた女性独特のこだわり、細部への心配りが一冊に体現されていると感じた。まさに平成の紀貫之である。
さて、本書は顧客満足度と女子力(女性の素質)についての関連性について述べられていた。そこで、私も一般女性が持つ性質と顧客満足度の関係性について自身の考えをまとめてみたいと思う。
1. 女性とは、集団を好む。
2. 女性とは、曖昧な答えを導きだすことに秀でている。
1について、女性は会話をすることを好み、同じ話を延々とすることで共感を求める傾向がある。(俗にいう女子会での恋愛話がこれにあたる。)
2については、ゼミの夏合宿中に出た話である。例として、男子小学生は比較的算数が得意な傾向にあり、女子小学生は比較的国語が得意な傾向にある。
この2つの性質が顧客満足度を高めることができたのであると私は思う。
今回取り上げられた企業に多く共通することを考えてみた。
1. 明確な経営理念を持つ
2. 研修制度に力をいれている
3. 自由度が高い接客スタイル
明確な経営理念を持つ企業は集団を好み、共感を求める女性に魅力的な企業である。
高校時代の文化祭を例に挙げる。私達がどんな催し物を作って、どのようにお客様を楽しませるかを考える時、クラスの女子は一丸となって話していた。そのように明確な一つの目標を与えられた時、女性は意見を出し合い、チームで一つのモノを作り上げることに尽力していた。
そして、文化祭当日にお客様が楽しめていてくれた事実は、女性達のチームワークに依るところが大きかったのではないかと考えている。
研修制度が充実している企業は、1に挙げた理念の共有をより浸透させるための一つの手段であるように思う。
特に宿泊型の研修であれば、『同じ釜の飯を食う』ことで、より早く集団意識も生まれて、チーム力が向上する。
これは女性だけに限ったことではない。しかし、自身の体験と合わせても女性の方がチーム力は向上していると感じる。
サークルの合宿では、男子は思い思いに過ごしているのに対し、女子は風呂の時間皆で入浴しており、ご飯も大勢で一斉に食べている。何をするにも大人数で行動しているのだ。その事実が成り立っている女性心理には「皆と一緒にいたい」もしくは「一人だけ違うことをしたくない」という協調を重んじる性質からくるモノであると思う。それが企業の研修に置き換えた場合、上手く作用しているのではないか。
最後に、自由度の高い接客スタイルについてであるが、これは確実に女性の方が優れているのではないかと思う。
先程に述べたことであるが、女性は会話を好む性質から本来のコミュニケーション能力は男性より高い。それに加えて、男性よりも繊細な心や気遣いが直接顧客満足度を高める要因になっている。
バイト先では、クレーム時の対応は主婦の柔軟性が非常に有効であることを実感している。クレーム時の対応でなくとも美容院、また、アパレルショップでの何気ない会話でも女性は柔軟に会話し、顧客を楽しませることができている。
以上が私の主観による、女性と顧客満足度についての関係性である。
科学的根拠も何もない自身の体験からくる見解ではあるが、全くの見当違いではないと思う。