昨夜は、電車とタクシーの中に、一時にふたつの失くし物をした。携帯と傘である。最初に見失ったのは、水色の傘のほう。わけがあって、JR東日本の鎌田由美子さんと携帯でメールのやり取りしていた。その間に、北総線の電車が西白井駅に着いてしまった。
いつものように酔っていたので、脇に抱えていた水色の傘を、電車の中に置き忘れてしまった。メールの返信をしながら、電車を降りてしまったからだ。でも、この傘は絶対になくならないのだ。階段を上がってから、改札口に立っていた駅員さんに、事情を話した。電車は、次の白井駅に停車しているはずだ。
名刺に、携帯の番号を書いて渡した。「ふるーい水色の傘です。もし見つかったら、この番号に」と言い残して、タクシー乗り場へ移動した。
この水色の傘には、因縁がある。傘はわたしから離れたくないのだ。西白井駅には「置き傘のコーナー」がある。古くなった傘をプールして置いて、急に雨が降ってきたとき、みんなで助け合って共用するためのものだ。
一年ほど前のことである。自宅の傘立ての傘の本数が増えてしまった。もう一本も追加でさせなくなった。なので、古くなった傘を10本ほど、「みんなの傘」に供出してみた。昨夜なくしかけた水色の傘も、その中の一本だった。
傘を供出してから数週間たったある日、たまたま傘を持たずに家を出たら、夕方から雨になった。西白井の駅に降りたら、水色の傘が、「置き傘のコーナー」でわたしを待っていた。
わたしと離れたくなかったらしい。銀色の柄をひょいとつかんで、自宅に持ち帰った。その後は、自宅の傘立てに納まっていたのだが、昨日は、たまたま雨降りだったので、水色の傘でお出かけした。例によって酔っぱらって、電車の中に置き忘れてしまったわけだ。
11時半ごろになって、寝ようとしたときに携帯が鳴った。「047*、、、、、」からの着信履歴が残っている。西白井駅の案内係からだろう。
実は、携帯電話も、直前にタクシーに置き忘れたものだった。白井タクシーに電話して、自宅まで届けてもらったのだ。毎日乗っているからだろう、7人のドライバーには家と顔を覚えてもらっている。ラッキーだった。
駅にすぐに電話をいれたら、名刺を渡した駅員さんが出た。「傘は見つかって、印旛日本駅から電車で戻ってきました。お取り置きしておきますので、明日の朝、改札口に」と。この傘はしぶといな。絶対に失せないのだ。