田中優子総長の誕生で、法政大学のイメージは変わるか?

 昨日(11月22日)の総長選挙で、次期(2014年~)法政大学の総長に、社会学部長の田中優子さん(60歳)が選ばれた。田中教授は江戸文学者で、メディアにもしばしば登場する有名人である。この出来事は、法政大学にとっては福音である。なぜなら、東京六大学初の女性総長の誕生だからである。



 田中さんは、マスコミで有名な単なるタレント教授ではない。学者としても、きちんとした業績を残してきた研究者である。大学の看板になる総長は、やはり学者としても一流であってほしいと思う。また、田中さんは、法政大学の出身者(文学部)である。
 だからではないが、田中さんを総長に選んだ大学教職員(約1500人)も、常識的な判断をもった仲間であることを確認できてうれしく感じている。投票前にそのことをブログで訴えたかったのだが、選挙違反すれすれになるのでそれは自重した。

 個人的に、田中さんには恩がある。20年ほど前のことだが、最初の花の本『世界のフラワービジネス』(にっかん書房、1991年)を出版したとき、学内広報誌の『雑誌法政』(当時)に書評を書いてもらった。やっとお返しができたことになる。
 田中さんが総長に選ばれたことで、法政大学はふたたび社会的に注目を浴びることになるだろう。日本の大手私大ではじめて女性の総長を選ぶことなど、いかにもイノベーター(革新者)の法政大学らしい。わが大学は、「自由と進歩」を標榜してきたからだ。それを体現することになる。

 ひとつだけ懸念があるとすれば、日曜日の朝のテレビ番組(TBSテレビ)でのコメントが問題視されることがときどきあることだろう。わたしの愛読書ではないが、田中さんは、『週刊金曜日』(権力批判の雑誌)の編集委員(2009年から)にも名前を連ねている。
 ネットの情報(検索結果)から判断するに、発言にはややガードが甘いとことがあって、突っ込みどころ満載という感じではある。まあ、しかし、多少の左翼的な発言は、そのことを批判されたとしてもあまり気にしないことだ。法政大学らしいではないか。
 左翼的な教員と優秀な体育選手(どちらも「運動」である)が、この大学の文化(カルチャー)の核である。いまさら他大学のようにしても、特徴は出ない。

 わりに美形で(「冷たい感じ」という印象を持つ輩もいるようだが)、着物がお似合いの女性総長を擁したことは、教職員だけでなく卒業生や現役学生にとってもラッキーなのではないだろうか? 国策として「女性の社会進出」を推進したい保守本流の安倍首相と、反権力雑誌の編集員である女性総長との対談なども楽しみにしたい。
 調べてみてびっくりしたのだが、田中さんはどうやら叙勲されているようなのだ。筋金入りの反権力の人ならば勲章は辞退するものだが、言と動はかならずしも一貫してはいないのかもしれない。また、某社の社外取締役を兼務していると聞いている。だからではないが、総長としての現実的な判断に期待してみたい。

 田中総長の誕生を好機として、沈滞の6年間から抜け出し、法政大学が再度復活することを願うばかりである。
 とりあえずは、田中総長の誕生、おめでとう!ございます。