【転載】 「ムロオ物流センター見学記」『JFMAニュース』2013年7月20日号

 JFMAのニューズレターに、6月末に訪問したムロオの物流センターの記事を書いた。視察中に、アシスタントがメモをしたものを、花に関連がある部分のみ抜き出したものである。記録として残しておくことする。物流センターでの花束加工の可能性と混載について論じている。

「広島県(株)ムロオ 物流センター訪問視察記録」    (記録)2013年7月18日
JFMA会長 小川孔輔
 
 2013年6月29日(土)に、(株)ムロオ「東広島物流センター」「ムロオ広島支店」「日清パックセンター」「イオン広島XD」を視察した。JFMA専務理事の松島さんとアシスタントの青木恭子さん(小川研究室)など、山下俊一郎社長の同級生(元大学院)5名と一緒の訪問である。
 訪問した物流施設のうち、主として「花の物流加工」に関連する物流センターと物流部門)だけを記事にして簡単にまとめてみた。

1 (株)ムロオ会社概要(HPより編集!のこと

2 東広島物流センター(所在地:東広島市黒瀬町乃美尾)
 呉支店に隣接する東広島物流センターでは、4つの倉庫( 第2・4、第3、第5センター)を見学した。同じサイトにそれぞれ時期をずらして5つの倉庫が立てられている。各センターはそれぞれが別の役割を担っている。分担の仕方がおもしろかった。汎用センターと専用センター(伊藤ハム向けなど)に分かられるのだが、伊藤ハム向け専用センターをここでは紹介する。

 <伊藤ハム向け専用センター>
 第3センターでは、伊藤ハムの中国エリアでの在庫・仕分・物流機能(5℃チルド)を一手に担当していた。このセンターでは、ラーメン(チルド)の包装工場が設けられ、パッキング作業も手掛けている。チルドのラーメンのような商品では、加工作業は、それぞれパック済みの麺・具材・たれ(伊藤ハム工場から送られた材料)などを組み合わせ、一体化してパッキングするだけである。
 物流センターで最終製品に加工することのメリットは、①商品に表示される賞味期限を(メーカー工場でパッキングするよりも)最新のものにすることができる、②食品の流通段階において、物流センターは、納品の一歩手前、最終需要が確定するポイントにあたるため、より少ないロスで効率的に出荷できる。
 このように、物流業者側が加工も手掛けることは、「流通加工」と呼ばれる。この仕組みは、花の「鮮度保証流通」にも応用可能である。つまりは、伊藤ハムのラーメンのように、最終組み立て工程を物流センター内に持ってくると、需給調整とロス率の低減につながるのである。同様な取り組みが、ムロオでは、中国地方の中堅スーパー向けの野菜(キャベツ、レタス、白菜など)のカット作業で実際に行われていた。

3 ムロオ広島支店、日清パックセンター(所在地:広島県廿日市市宮内工業団地1-9)

 <広島支店 物流センター>
 
 広島支店の物流センターは、三原にあった設備を独立させたものである。売上高は、1.2億円/月である。取扱商品の通過額はその20倍程度となる。花や植物については、正月のお飾り用のウラジロなど、主に催事の際に入荷してくる。数量的にはまだそれほど多量ではない。花は、スーパーの物流センター向けに、専用車両で配送している。

 <日清パックセンター>
 このセンターも日清の専用センターになっている。この物流方式は、「流通加工+物流」によって利益が生み出せる仕組みになっている。単独だと利益を生むことは難しいのだが、両方を兼ねることで収益を出すことができる。この方式は、花の取り扱いにも応用可能性がある。
倉庫の2階の「日清パックセンター」では、衛生基準を満たした加工スペースが設置され、日清のチルドの麺類の加工(最終パッキング)をしている。2レーンで、70アイテム+季節ものの麺(チルド麺は夏が需要期)をパッキングしている。
 日清食品から麺やスープを仕入れて売る。加工品(ラーメン)は、量販の専用センターへと運ばれる。小売価格との差益(加工代金)と物流代金を合わせて利益が出る仕組みになっている。加工だけでは、麺、スープの種類ごとに在庫スペースが必要で、坪単価には見合わない。かつてはバッチも扱いアイテムも少なかったが、今は種類がそろってきた。加工のプロセスでは、スープと麺、パッケージの組み合わせを間違えるリスクがある。特に、使いきれなかったスープのパッケージの保管・補充時には、注意が必要である。
 これと同様の仕組みは、花束の加工と物流を組み合わせる形で、花の物流にも応用できるはずである。加工と物流のセットで、トータルで利益を生むビジネスが考えられる。この点に関しては、すでに、山下社長が法政大学の卒業プロジェクト(2012年度の最優秀賞を獲得)で理論的な面は発表済みである。あとは、現場で検証するだけである。

4 イオン広島XD(所在地:広島県廿日市市木材港北14-2)

 <イオン広島XD>
 中国地区のイオン向け専用センターでは、「イオンフードサプライ」(AFS)経由で、イオンやマックスバリューなどイオン系列の小売店向けの加工食品物流業務を一手に引き受けている。花については、以前はXDセンターを通過していなかったが、ここ半年~1年くらいで扱い量が増えてきた。花業界人が考えているほど、混載は特殊な形態ではない。いまや、チルド温度帯では、その他商品と花との混載輸送は一般的に思われている。そのほうが物流効率が優れているからである。今後は、イオンでも取扱品目を増やしている可能性が考えられる。

 <物流センター>
 イオン広島XDでは、下関から岡山までイオン系列店全80店舗の低温物流を担っている。
 商品は、荷受・検品(15℃)し、仕分けラインへ移され、デイリー、牛乳などカテゴリー別に分けられる。次に、チルド帯スペース(5℃)に移され、店別に仕分けしている。
 花は、ネギ、ぶどう、レンコン、桃などと共に、12束程度を1パックにして、荷台に混載されていた。物流センターなどで、ごくふつうに流れている(写真などを参考に)。

5 まとめ
 今回は、(株)ムロオの若社長(山下俊一郎氏)が、わたし(小川会長)の元大学院生(2013年3月卒業)だったことから、ほぼ終日を使って広島周辺の同社の主たる物流センターを案内してもらった。ムロオは、山下社長の代になってから、地方の運送会社から全国ネットワークのロジスティック企業に変貌を遂げつつある。その姿を視察することができた。
 同社の多くの物流センターでは、「ブルー便」と言われる「路線便」と「汎用センター」がセットで運営されている。その物流網の中を、産地から市場や食品スーパーの物流センターに花が送られている。物流の経由地点で行われている花の流れの実際を今回は見ることができた。
 印象としては、専用センターでも汎用センターにおいて、チルド物流ネットワークに切り花を混載で乗せることができる可能性が確信できた。また、花をセンター内で加工することで、鮮度を高めて低コストで運べる可能性を実際に観察できた。将来のムロオの取り組みが楽しみである。なお、野菜の加工場で見たように、花束をセンターに加工して運ぶ時に、多量のごみが出る。その解決法を見つけることもできた。