学生たちが隔月で提出してくれている感想文の中から、優秀作品をアップする。先月の課題図書は、「俺の株式会社」(社名変更)の坂本社長のご本だった。3人分(土屋くん、木内さん、板倉さん)をアップする。
2013年 5月度 読書感想文
「俺のイタリアン・俺のフレンチ」
経営学部市場経営学科4年Q組
ゼミID 3609
36期 土屋俊貴
本書は俺のイタリアン・俺のフレンチの競争優位性の作り方についてであった。以前から、立ち飲みのスタイルを取り、一日あたりの回転数を上げることによって、原価率の高い、一流シェフの作った美味しい料理が安く食べられることは知っていた。しかし、回転数の高さにどれほどの威力があるのか、理解できていなかった。本書で具体的数字を見ることで理解を深めることができた。
今回は「俺のイタリアン」に行ったときの感想と今後の展開について考えたことをまとめてみたい。
私は「俺のイタリアン YAESU」に行ったことがある。今年の2月に、高級料理を安く食べられる点につられて、友人と誘い合わせて行くことにした。2週間前に電話予約を試みたが、どの店舗も通話中だった。やっと繋がった店でも、既に満席で1時間以上は待つとの返答だった。あまりの大盛況だったが、行きたい気持ちが先行し、1時間待つことを覚悟して当日、待つことにした。
20時ごろに店舗に並び始めたが、数分経つと4,5人の団体が店を出てきた。これが回転数の高さだと思った。高級料理というものに縁がなく、敷居の高さに若干怖気づいていた私は、店に来る前は少し緊張していたが、ロゴや店構えも「高級さ」を感じさせない、大衆的なものであった。並びやすく、肩肘を張らないで店に入れるという点で好感を持った。
意外にも、30分程度待つと私たちの番が来た。私たちが案内されたのは、入り口の近くのビニールで囲われた簡易なスペースだった。店内もにぎやかで、この気軽な空間で少し安心した。本書にもあったように「今まで高級料理を食べられなかった人」も気張らずに満足できる工夫がなされていると感じた。
サービスに関しても心地よいものだった。スタッフの方の対応が丁寧であり、多少の会話を交えながら気持ちよく応対して頂いた。また注文したワインを注いで頂くなどのサービスも初めての経験だったが、とても良い気持ちになれた。
そしてやはり料理であるが、この店の料理は格別においしかった。こんなに美味しいチーズがあったのかという衝撃は忘れられない。ワインが入っていたのもあって、肉を頬張りながら仲間と「なんだこれ!」と大はしゃぎしていた記憶がある。
私たちは2時間ほどで退店し、4人で行って10.000円と、普通の居酒屋へ行くよりも安くついた。早い退店(回転)を実現している要因は、「立ち飲みである」という点だけではないと感じた。立ち飲みであること+高い満足感を実現することで顧客の心が満たされ、素早い退店を実現するのだと思う。その要因を考えてみた。
・立ち飲みであること(①座るより体力が必要であり、長居しない。②帰る際の姿勢に近く退店を促されてもすぐに対処できる)
・料理が美味しいこと(満足感の高さ)
・サービスの質が良いこと(満足感の高さ)
・会計が安いこと(①満足感の高さ。②コストパフォーマンスが高いためまたすぐ来られる敷居の低さを感じ、素早い退店をする)
以上のように、高い満足感を得られること+立ち飲みであるという工夫により、素早い回転が実現していると考える。
今後、フランチャイズ展開をして様々な場所に出店することを視野に入れているということである。問題は「優秀なシェフの確保」ではないかと思った。
そのためには、「常に人材確保のために動いていなければならない」と本書でも触れられていた。しかし、フランチャイズ出店のタイミングと、その店に配置するシェフの確保のタイミングが合うことが難しいのではないかと感じた。フランチャイズの店舗に既存店舗から人材を送るとしても、いずれは「一流の料理」を作れるスタッフを補充しなければならない。フランチャイジーとシェフと本部のタイミングを合わせることはとても難しいものであると思う。
本書を読んだ上で今後、実際に店舗へ行き、もう一度店の様子を観察してみなければと思う。前回はスタッフがてきぱきと動いているのは見て取れたが、入り口付近で、しかも外を向いたテーブルで飲食したので、ほぼ店内の様子を見ることができなかったからである。厨房はどのような様子なのか、そこでのシェフの動き方はどのようなものか、雰囲気はどのようなものか、本書にあったことを確認してみたいと思う。
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課題図書
俺のイタリアン 俺のフレンチ
~ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方~
ID3606
木内香里
「ブックオフ」から、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」へと取り組むことになった際の相違点として、原価率の違いについて私は驚いた。私は大学受験が終わった後にブックオフに赤本を売りに行った際、保存状態がよかったにも関わらず20~40円にしかならなかった。しかし、店頭に置いてあるのをのちに見たら、定価の7~8割の値段(800円前後)で売られていた。原価率が5%くらいで、比較的不便な場所(しかし住宅街なので集客は見込める)にあって土地代もかからないので、これなら儲かるわけだと感じていた。
確かに、図書館に似た感覚で親しみやすく、むしろ図書館よりも身近にあり、実用的な本を取り揃えていると思う。だが、それ以来、ブックオフに対してあまり良いイメージを持っていない。不要な本は捨てるよりいいと思うが、売価との差がありすぎるのではないかというのが私の率直な感想だ。
しかし、俺のフレンチは、とても魅力的に感じる。ブックオフとは対照的に原価率が高いということだ。肉などは、安全面を考えると安すぎるのは不安だ。しかし原価率が高いということは、難ありの材料を使っているというわけではなさそうなので、安心して食べられると思った。
また、肩肘張らないで食事を楽しむことができることが、最大のメリットだと思う。私は、最寄駅のフランス料理屋さんにランチに行った際、やはり昼間でも丁寧で形式ばったおもてなしをされた。常に、食べている進行具合を把握し、料理を運ぶタイミングを見計らっていた。観察されていると感じると、なんだか食べにくかった。カウンターのお寿司屋さんもそうだが、お店の人(職人、プロ)が目の前にいると、間違った食べ方をしていないか、マナー違反をしていないかをチェックされていそうなので、のびのびと自由においしく食べられない。
新橋などのオフィス街に立地しているのも、サラリーマンなど、疲れ切った会社員がさらに緊張する環境で食事をしなくて済む、リラックスさが大きいと感じた。確かに、立ち食いスタイルだと肉体的には疲れるかもしれない。
だが、ストレス解消は、心の方が重要だ。いくら体が疲れていても、仲間と愚痴をこぼしながらおしゃべりすることにより、楽しく精神的に満足を得られれば、リフレッシュになる。立ち食いスタイルも、逆に、遅くまでだらだらと飲み会を続けることを防げると思う。回転率が高く、長居する雰囲気でもないので、適度に帰るタイミングを逃さなくて済むのではないか。
そして、サラリーマンにとどまらず、主婦にも関心の目が寄せられていると実感した。先日アルバイトの時に、60代と30代のパートの方がバリュークリエイトのお店を話題にしていた。「予約も大変なのよね」と嘆いていた。やはり、価格も魅力だが、家庭では作れない料理を、少しずつたくさん味わいたいという、女子ならではの心理もうまくつかんでいると思った。そして、どうやらおいしいワインが飲めるという点も大きかった。
ちなみに私は、その60代のパートの方の家に招待されて、食事をごちそうになったことがあるが、とてもおしゃれな食器と料理だった。パートの方は、よく高級料理を食べに出かけているので、色々なお店や食器に詳しい。そのようなおしゃれな雰囲気を参考にして、家庭でも真似できるものは取り入れて、食事作りを楽しんでいるようにも見えた。
そう考えると、店舗でプロの料理をただ単に楽しむだけではなくて、色々な意味で家庭的で家族に優しいお店だと思った。ありそうでなかったものを生み出すというのは、本当に難しいのだと感じる。最近メディアでもよく取り上げられているので、さらに人気が集まっているかもしれないが、機会があればぜひ行ってみたい。
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『俺のイタリアン、俺のフレンチ』を読んで
ゼミID3603 板倉奈津美
俺のイタリアン、俺のフレンチを読んで、一番に目に飛び込んできた言葉は、原価率60%という数字でした。副題にもあるように、俺の○○シリーズでは競争優位に立つために他の飲食店にはない様々な仕組み作りや取り組みが行われています。実際の取り組みとしては、高原価でじゃぶじゃぶ使うこと、優秀な料理人を雇うこと、リーズナブルな価格で料理を提供することなどが挙げられます。
仕組みが他と差別化されていることはもちろん大切ですが、ここまで差別化され、競争優位に立てた要因は下記の二つにあると考えます。それは、①利他の心、②働く人を大切に、です。私は現在ユニクロでアルバイトをしているのですが、業種が違えどもこの二つが同じように当てはまると考えるので、その内容を述べていきます。
① 利他の心
人の為に汗をかくこと、という意味の利他の心ですが、本の中でもキーワードとして何度も目にしました。ここでの「人」とは、働く部下や仲間の側面とお客様の側面二つあると考えます。
ユニクロでも、利他の心は働く上で、スタッフの心の中に植え付けられていると思いました。具体的にはまず、出勤時には必ず唱和をしてから店頭に立つことです。内容として、「ユニクロ基本方針」、「3つの約束」、「販売六大用語」、「電話応対話法」があり、後者は接客の技術面になりますが、基本方針の中には利他の心の要素が含まれています。基本方針には1、親切に笑顔で奉仕。2、礼儀挨拶の徹底。3、すべてをクリーンに。4、早く元気よく。5、品切れ0売れ筋外0。6、顧客はいつも最優先する。とかかれており、1と6に関してはお客様のことを考えて接客しなければならなことが明記されています。バイトを始めると、この唱和を暗記するまで、店頭に立たせてもらえません。初めは何の意味があるのか不明確でしたが、働く上で自然と生きているように感じました。接客を見ていても、靴下を買ってすぐに履くというお客様がいたならば椅子を用意したり、バックルームでは、他のスタッフが商品を取りやすいよう、棚に商品名を書いて置いたりとほんのひと手間、やらなくてもいいことを相手のことを思って行えるスタッフが多いように感じました。
② 働く人を大切に
坂本さんが以前経営をしていたブックオフの経営の中でもパートやアルバイトをグアムの研修に連れて行くなど、人の成長に重きを置いていたとあります。俺の○○でも他の飲食店よりも料理人を大切にしていることが明確です。裁量権をある程度料理人に与え、不満を改善していくからこそ、ビジネスとして参入障壁が高まり競争優位を生み出していけているのだと思います。
一方私のバイト先でも、働く人を大切にしている様子が多く見受けられます。まず、アルバイトとして働くことになっても初回3回は研修があり、店頭には立たせてもらえません。これは、バイトであってもすべてをこなせるプロとして扱ってもらうための第一歩であると考えます。ここでは、基礎知識から商品の種類や他店情報など、お客様に何か聞かれてもある程度対応できるまでの情報を頭に叩き込まれます。また、アルバイトであっても有給が存在します。働いて半年経つと数日分支給されるのですが、話を聞いたときに驚きました。最近では、社割に加え、バイト中に着る服のお金も数千円支給されるようになりました。このように、働く人一人ひとりを貴重な財産として扱い、貴重であるからこその取り組みが成功する企業には多くみられると思いました。
競争優位を生み出すためには、目新しい他社がやっていないことをどんどん取り入れていく必要があります。しかし、その仕組みばかりに囚われるのではなく常に人を思いやる気持ちを忘れてはならないと思いました。お客様を思いやる気持ちがあるからこそ、よりニーズに合ったものを提供できますし、働く人を思いやるからこそ、強い組織やチームワークが生まれるのだと考えます。本の中で登場する『仕組みで勝って、人で圧勝する』素敵な言葉だと思いました。