2018年秋から4年間、マラソン大会のエントリーと計時の会社「(株)アールビーズ」の社外取締役を務めてきました。ニュースなどでも既報の通り、アシックスと日本テレビHDGに、アールビーズの全株式を売却することになりました。今月末をもって経営陣が総入れ替えになります。わたしも、社外取締社を外降りることになります。
これまでは、かなり意識して会社(アールビーズ)のことは、ブログや雑誌の記事などには書かないようにしてきました。今回のような売却話や内部情報が外部に出ないよう、個人的にも細心の注意を払ってきた結果です。
2018年の夏に、橋本社長から電話で依頼がありました。「会社をIPOしたいので、社外取締役に就任してもらえませんか」という要請でした。社外取締役の役割について、個人的には批判的でした。2017年に休刊になった『新潮45』にも、「社外取締役不要論」を執筆していたくらいです。
自分自身が熱心なランナーでしたから、マラソン大会については独自の意見を持っていました。「一歳刻みハーフマラソン・ランキング」(2016年ごろに実現)のアイデアなど、以前から橋本ご夫妻には提案していました。実際にサービスとして実現したアイデアも、いくつかありました。
最終的には、外部からの知恵や経営学者の視点も必要かと思い、社外取締役を引き受けることにしました。
2018年秋の就任から一度も欠かさず、取締役会には出席してきました。リモート参加が2回あります。
マラソンの運営会社です。ランナーが大会にエントリーして走ってくれないと、まったく収入が入ってきません。コロナが2年半も続いて、会社の経営が厳しくなりました。多くの従業員が会社を離れていきました。最終的には、現社長・副社長がIPOするためには、物理的に時間が足りなくなりました。橋本・下条ご夫妻は、今年で75歳になります。
幸いにも、売却先のアシックスと日本テレビにとって、アールビーズのサービスは、大きな事業シナジーを持っています。アシックス(65%)と日本テレビ(35%)の連合で、アールビーズ(ランネット運営会社)の全株を取得することになりました。
5日前のリリース記事を見た調査会社「インテージ」の森川秀樹さんが、興味深いコメントをしていました。
「アシックスの事例、ありがとうございます。バリューチェーンをCX(ランナーの顧客体験)の軸で拡張する興味深い事例だと思いました。社内で共有したいと思います」(森川部長さん)。このコメントに対するわたしの返信は、以下のようなものでした。
「走るシューズで、走るレースの舞台(大会エントリーと計時)を演出する。さらに、それをメディアに露出する。日テレ(テレビ)とランナーズ(雑誌)がそこを担っています」(小川)。
顧客価値を向上させるという、シナジーが3社にはあります。厳しい環境下での経営参画でした。それでも、「マラソンの中止保険」などの提案もさせていただき、1年後には実現しました。『月刊ランナーズ』にも、社外取締役ながら2回ほど登場させていただきました。
経営学者として、内部から現場を見る貴重な機会をいただきました。
橋本ご夫妻、アールビーズ社員の皆さん、短い期間でしたが、ありがとうございます。アシックス&日テレによる買収の後も、会社の仕事は継続していきます。株式公開をした以上の社会的な貢献と経営の成果を期待します。