イオンリテールの専門店をミニ観察ツアー(#2:リカーショップ)

 つづいて、リカーショップの観察記録である。高円寺、南阿佐ヶ谷、下北沢の3店舗を見て歩いた。西永福の店は、時間がなくてスキップした。下北沢のワインレストランで、おいしい食事をしたかったから(本日から、3日後の京都マラソンのために「禁酒=デトックス」に入る前に!)。



 事前にネットで調査しておいた3店舗は、ともに駅前商店街の立地である。
 JR中央線や井の頭線の駅(地下鉄丸ノ内線)から徒歩3~5分。帰宅途中の客や地元の住民を対象にしている。どの店も、店の前を通る顧客は相当数はいる(店前通行人数は、一日5千人~1万人?計測はしていない)。コンビニ商圏(半径200M)よりは、やや広い(半径500M?)と見える。
 看板(ストアブランド)は、「AEONLIQUOR」である。大文字であること、ロゴタイプの色が識別しにくい。「酒」のロゴサイン文字が、「本」「花屋」と同様な形で二か所に表示してある。
 店によって看板の色使いが異なる。文字のタイプは同じ。立地は共通だが、店長の裁量が効くのか、あるいは、実験店に運営しているのでそうなのか、店舗イメージと価格付け、プロモーションの仕方が店によってばらばらである。

 
 高円寺の店舗は、コンビニサイズの店である。開口部が広い30坪(100㎡)タイプ。JR高円寺駅北口からは徒歩3分。中通り商店街の真ん中にある。真向いの居酒屋「天国」(笑)のおばさんにたずねたら、マンションの1Fに新築で入居したらしい。コンビニの跡地に居ぬきで出店したわけではない。
 ファザードの「AEONLIQUOR」のしたに、Beer、Fine Wine、Cheese,Flower,HAM、Groceryとある。取扱い商品カテゴリーを6つを示したものだが、生花はおいていなかった。日本酒、おつまみ、缶詰類の品ぞろえが厚い。トップバリュ・ブランドの商品(ビール、酎ハイ、おつまみ)などが置いてある。88円~98円で、安さをアピール。
 店内が狭いので、什器に圧迫感がある。通路が狭いので、ゆったりした気分で銘柄を比較検討できない。これは改善の余地あり。暇なせいもあり、3人の店員さんが無駄話をしていて、うるさい!サービス業の基本だ。
 そもそも、入り口からカウンターまでの導線が短いので、カウンターは横向きにすべきだ。コンビニと同じタイプに変更のこと。おしゃべりしている店員と目が合うので、お客は店に入りづらい。

 以下は、短時間での観察からの推測である。あまり自信はない。
 わたしたちが見ていた10分間(17時30分~40分)で、客数は8人(一時間では40人前後)。男女半々。すべて若い男女で、とくに女性客は上質に見える。ふたりの女性は、ワインを1本抱えて帰った(1500円平均)。男性は、ビールとおつまみ?
 平均客単価は、1500円?他店も同様だが、10時開店~22時閉店。14時間営業で、客数は約400人とみると、日販は約60万円。コンビニとほぼ同じである。店員が3人いたから、直仕入れで高い粗利が確保できるのならば、この規模ではブレークイーブン(損益とんとん)だろう。
 売上がもうすこし高くないと、商売はきびしいだろう。

 南阿佐ヶ谷の店は、JRからはやや離れている(7~8分)。地下鉄丸ノ内線からは徒歩3分圏内。
この店も、古い商店街のアーケードの中にある。3分1がシャッターを下ろしている。その中に、CALDI(コーヒー雑貨店)や大丸ピーコック(イオンが買収したばかりの食品スーパー)などがある。
 縦長の店舗で、売り場面積は約50坪。売り場が広い分、通路がゆったりしている。このくらいないと商品が見にくく感じる。この店は、店員も感じがよろしい。売れているのがわかる。店内に買い物中の客が8人もいた。
 ワインの品ぞろえ(各ブランが2フェイス)が充実している。中心価格帯は、1500~2500円で、高円寺よりはやや高い。客単価もより高いことがうかがえる。買い物袋が、高円寺の店よりも膨らんでいる。買い上げ点数が多い証拠だ。気になるのは、PB商品のトップバリュ(ビール、酎ハイ)が前面に出すぎていること。客筋がよいのだから、あまり目立たなく置くべきでは?
 売上を推定してみる。客単価1800円、一日の客数は500人。推定の日販が90万円。もうすこし客数はあるかもしれない。600人ならば、100万円。この店は、黒字店舗だろう。結局、50坪はないと、きちとした品ぞろえが提供できない。

 最後に、下北沢の店に行った(北口)。駅から歩いて2分。売り場面積は50坪で、L字型の配置になっている。入り口付近に、日本酒やビールにおつまみ。奥にワインが置いておいてある。この店は、チーズやはハムが目立っていた。冷蔵ケースの位置がよいからだろう。
 無印の隣りだが、あまり人は入っていない。南口のほうが客筋がよさそうだ。他の店に比べて、同じワインやビールの価格を安く設定してある。ワインは、980円を売り込もうとしている。
 人数をカウントすることはやめた。すでに8時で、歩いている人があまりいない。推定はほとんど意味がない。ただし、この店は、高円寺より客単価が低く(1400円)、客数は若干多そうだ(500人)。坪効率で見ると、ほぼ同じくらいか?
 帰りがけにワインを買って、レストランに持ち込もうと考えた。カウンターに声をかけようしたが、やめた。こちらを見ていない。アルバイトと思われる店員は、「後ろの目」で客を追っていない。

 感想である。チェーン店として20店舗を超えているので、採算のめどは立ってきているのだろう。
 花店とは異なり、仕入れのスケールメリットはありそうだ。大量に仕入れたワインやPB商品(トップバリュ)などはお手頃の値段ではある。利益を出すために、さらに店数を増やしていけばよい。
 課題のひとつは、立地の選択にある。駅前商店街の中が、本当によいのかどうか。店舗のサイズとしては、50坪以下では十分な品ぞろえが提供できないだろう。
 二つ目の課題は、店舗イメージについてである。東京西地区のやや豊かな街(吉祥寺、世田谷、神奈川地区など)で、ラグジュアリーなワイン中心のお酒(チーズやハムや花)を提供するのに、「AEONLIQUOR」という量販店ブランドの「イオン」を店名に入れるのはいかがなものだろうか?
 この際は、「ステルス・ブランディング」のほうがよいように思う。たとえば、「マイバスケット」(ミニスーパー名)の方式である。イオンやトップバリュは、贅沢の生活をイメージはさせない。イオンブランドは、せめて店名からは隠すべきである。
 最後に、店員の知識のなさが見え隠れしていること。この点は、成城石井の従業員教育に見習うべきである(大久保社長時代のブログ参照)。接客も総じてよろしくない。高円寺など、お客の質がよいのに、もったいないと感じる。

 HPに書かれて(宣言して)いることが、店頭では必ずしも実現されていない。ただし、コンセプト通りに店を運営できれば、世の中には受け入れられる事業に成長する予感はある。そのための人材の確保が急務だろう。商品開発と店舗運営。SPA型の小売業の基本である。