義理の母は、今年で80歳になる。一昨年の元旦に連れ合いを亡くして、いまは葛飾区の高砂に一人住まいである。以前からちょっとボケが入っていたのだが、一人身になってからは、そのボケ方がずいぶん素敵になってきている。
義母(奥村純子さん)は、下町でよく見かける人柄のよいおばさんである。そのうえ、とても丁寧な性格である。娘たち(3姉妹)や8人の孫たちにもそれが遺伝している。いや、伝染している。
純子さんは、お寿司が好きである。とりわけ、回転ずしの(あきんど)スシローの大のファンである。高砂に住んでいる孫たち(中島兄弟)が、学生時代に、近くのスシローでアルバイトをしていたからでもある。そんなこともあって、中島家(末娘の嫁ぎ先)に誘われて、純子さんはしばしば孫たちと一緒に寿司を食べに行っているらしい。
参考までに、回転寿司チェーンの中で、この数年間連続で、スシローは顧客満足度(CSI)が第一位である(JCSI調査)。わたしも取材したのだが、スシローは、値段が安いわりにネタが新鮮である。接客サービスもかなりよい。
さて、ある日、中島家のご主人(義弟:たかしくん)から、うちのかみさんに携帯メールが入った。本人と純子さんとの会話についてのメールである。純子さんの実娘(3姉妹)の全員に、そのメールは同報されたらしい。
義弟のメールは、「ばばちゃん(純子さんのこと)って、なんでも、単語に”お”を付けるんですよね」ではじまっていたらしい(伝聞)。
「スシローのことを、『”おスシロー”って、ずごくおいしいわよね~』って、丁寧に”お”をつけて呼ぶんでですよ。おかしくありません?」(たかしくん)
「もしかして、ばばちゃんは、他の回転寿司の名前にも、”お”をつけるんですかね」(中島くん)
そのあとの話は、三姉妹の長女(清水喜世子さん)が引き取ったらしい。
「そうか、お銚子丸、お元気寿司って、呼ぶことになるのか」(喜世子さん)
それに誰かがメールで返信した。全員が共有した文面は、
「最後は、お蔵入り寿司ってわけね」。