栃木県小山市にある「北関酒造」で、試作前の打ち合わせを終えた。昨日の午後(11月12日)のことである。院生の川村くんのプロジェクトが、最終段階に入っている。挑戦的なテーマは、新しいカテゴリーの日本酒の創造だ。
詰めの段階で、ミーティングに参加したのは、北関酒造の鈴木専務と下野杜氏、小川、川村くんの4人。基本コンセプトと味を固める作業なのだが、類例を比較するために、チリワインや一ノ蔵の「すず音」などを、たくさん試飲した。酔っ払ってしまうと、夕方からの入試個人面談に差し支えないか心配して出てきた。が、利き酒では酔わないことがわかった。飲み込まないのである。吐き出すのである。酒蔵に行ったのだか、酒は一滴も飲まずに帰ってきた。ちなみに、火入れする前の生酒は、異常においしいことを発見した。口に含んだだけで、まろやかさが口内にふわーっと広がる。癖になりそうだ。
<プロジェクト概要>
川村くんの卒業研究の概要を、指導教授のわたしがまとめてみた。彼のプロジェクトは、一言でいえば、新しい日本酒の開発と販売企画「JAPANESE RICE WINE」である。米をベースにしているが、従来の日本酒とは違うイメージでサケをポジショニングする。
(1)時代背景
これまで、女性向けの低アルコール日本酒開発はことごとく失敗してきた(宝酒造、月桂冠など)。ただし、近年になって、一ノ蔵の「すず音」など、発泡タイプの低アルコール清酒がすこし売れ始めている。しかし、まだまだ普及には壁がある。酸味が強く甘すぎで、かつ値段が高い(300㍉、700円)。他方で、日本女性はワインを支持しているのだが、日本酒っぽいイメージの清酒は、若い女の子たちからは、はなから敬遠されている。アルコール度数が高いことも、食いつきの悪さの原因である。
(2)顧客ターゲット
メインは、20~30歳代の女性。ワインや酎ハイを飲んでいる層。彼女達が飲める日本酒の市場を創造する。想定市場規模100億円(根拠は川村くんに!尋ねてください)。
(3)製品スペック
二つのタイプを開発中(物理的に、元は同じ)
1 アルコール度数21~22度、ロゼの原酒180㍉瓶。炭酸で割って飲むか、ショットグラス、あるいはロックで。
2 アルコール度数9~12度。ロゼで300㍉(180㍉)。ワインのハーフサイズボトル(小瓶)の感覚。
どちらにしても、お酒が薄く赤くなる(ワインのロゼ)ように醸造方法を工夫してある。
(4)価格は、180㍉ならば、198円。300㍉ならば、248~280円。醸造元の北関酒造(全国17位の酒蔵)は、日本で有数の自動化ラインを保有している。低コスト大量生産が可能。
(5)販売先
業務用は、レストランや割烹など(俺のフレンチ、サイゼリヤ)
一般小売りは、食品スーパー(ヤオコーなど)、ホームセンター(カインズホーム)
ネット販売(自社サイト、楽天など)
(6)飲み方
飲用シーンは、1と2では異なる。女性向けの提案コンセプトは、みな失敗してきた分野である。だから、商品カテゴリーとして、日本酒とは異なるものとして位置付ける。ワインのように、洋酒のように飲む米由来の酒としてポジショニングする。
<この先の作業スケジュール>
(1)11月中に、6種類の試作品をテースティングする(酸味とアルコール度数を調整)
(2)年内に、ブランド名、ボトル形状、ラベル作成(素案は作成中)
(3)3月には、7千本を試験販売(700㌔リッター)
(4)課題
基本コンセプトのチェック、
テースティングで味を固める、
マーケティング企画とコラボ先への提案
だんだんおもしろくなってきている。