久々の授業: 教室授業はエンターテインメント

 平教員に戻って3週間がすぎた。ギアチェンジがまだうまくいかない。その理由を考えている。おもしろいもので、大学内の会議(学部長会議)では長らく司会役や議論の仲介役をつとめていた。ついつい瞬間的に物事に決定を下す癖がついてしまっている。


「瞬間芸に優れている」ことは、研究者としてはマイナスである。この才能を磨きすぎた研究者は、リサーチャーとしては失格らしい。というのは、必要な方向に正しく頭がうごいていかないからである。課題を整理したり、対象について深く考えたり、複数のソースから得られた情報に依拠して論理的に物事を整理するようにはなかなかならない。
 平林千牧理事(財務・大学院担当)にそのことを話すと、「小川さん、まあ半年は元に戻らんよ」とのこと。昔のように本を読んだり、論文をまとめたりすることに充実感を感じるまでは、じっくりそのときがくるのを待つしかないらしい。
 最近になって、学部長職が満期になったことが知られたのか、企業からのコンサルティング要請が増えている。また、原稿依頼や共同研究のお誘いなど、多方面からオファーをいただいている。2年半、忘れられずにいたのだから、幸せなことではある。
 「半年すぎても、そのままという人(学部長経験者)もいるからね」。平林理事からは厳しい忠告を受けている。この先の復帰については、ちょっとした恐怖感もある。
 本日(20日)は久しぶりに学部学生を対象にした授業(経営学総論)を持った。エアコンなし、暗幕のある844番教室で、90分2コマ続きの授業だった。初夏のような暑さで、汗をふきふきの180分である。まあ、一番下の子供(真継19歳)より年齢が若い学生達を相手の授業である。何人かの一年生は、このHPをはじめて見ることになるだろう。
 授業に参加した学生さんには、わたしの12年ぶりの「経営学総論」の感想を知らせてほしい。体力にやや不安はあるけれど、52歳のおじさんが一生懸命にやっている。インタラクティブな授業は、エンターテインメントだと思っている。どのくらい知的な刺激を与え、サービス演出(ステージ)で聴衆を楽しませ、興奮させることができるのか。教育は、大教室授業であれ、小人数のクラス授業であれ、ドラマを演じているようでチャレンジングな仕事である。それだけに一瞬がおもしろい。
 大教室でわたしの授業を聞いてくれていた学生の質は、12年前よりも、素直に言って、かなり上昇しているように感じられる。そう感じるのは、ひとりわたしだけだろうか? 学部改革の成果が出ているとしたら、学部長の2年間が報われていそうで、とてもうれしいことである。