TDR(東京ディズニーリゾート)は予想通り、来園者が微減に(2016年通期)

 2016年の来場者がTDRは微減との報道があった。それに対して、USJの来場者は3年連続で最高記録を更新している。TDL単体では、ひょっとするとUSJに抜かれたかもしれない。実は、先月3月28日に発表された、2016年度のJCSI年間ランキングで、TDRのCSは昨年度(11位)よりさらに低下している(27位)。

 

 TDRの顧客満足度は、77.1点で全体で27位。同じくエンタテインメント業界の宝塚歌劇団(86.7点)が、はじめて全サービス産業のCSナンバーワンになった。TDR不振の原因については、『日本経済新聞社』から配信された記事(2017年4月)がほぼカバーしている(ブログの最後に引用)。 

 わたしが昨年の同じころに、「「夢の国」東京ディズニーリゾートに異変の兆し」『読売オンライン』(2016年1月6日)で指摘した通りである。3年連続の値上げ(今年度は据え置き)とテーマパーク園内の混雑、全体的なプロモーションの不発。それと、ようやくメインテナンスに取り掛かろうとしてはいるが、既存施設の老朽化にTDRは悩ましい問題を抱えている。

 混雑度の緩和や既存アトラクションの改修は、TDRの顧客満足度を再上昇させるはずである。しかし、オリエンタルランドとしては、来場者がさらに減少することが怖いだろう。対照的に、2016年度も、USJは値上げしても来場者数が減っていない。新アトラクションが導入された結果、園内の混雑はTDR以上である。

 わたし自身、フライングダイナソーやハリーポッターを体験したが、混雑は相当なものだった。

 

 以下では、客観的なデータを示してみる。JCSIのランキングにTDRの不振がよく表れている。

 長期的には、テーマパークのブランド戦略の失敗とイノベーションの不足が原因である。わたしは、そう考えている。後者に関しては、「魔法の国の夢から醒めて:東京ディズニーリゾートで進行している異変の正体」(『新潮45』2016年5月号)に詳しく書かれている。

 オリエンタルランドの経営陣が、今まで以上に思い切った施策を打ち出さないと、USJの後塵を拝したまま、TDRそのもののブランド価値がさらに希釈されるだろう。

 

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<JCSI年間ランキング>

順位 顧客満足 企業・ブランド名 業種・業態名

1 86.8 宝塚歌劇団 エンタテインメント

2 86.7 劇団四季 エンタテインメント

3 81.6 ヨドバシ.com 通信販売

4 80.9 リッチモンドホテル ビジネスホテル

5 80.7 コープ共済 生命保険

6 80.5 帝国ホテル シティホテル

7 79.9 ドーミーイン ビジネスホテル

           ヤマト運輸 宅配便

9 79.6 オルビス 通信販売

10 79.4 都道府県民共済 生命保険

27 77.1 東京ディズニーリゾート エンタテインメント

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 『日本経済新聞』(2017年4月3日)からの引用
 国内二大テーマパークの2016年度通期の入場者数が3日、出そろった。オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市、TDR)は昨年4月に実施した値上げが響き、前年度比0.6%減の3000万人と2年連続で前年実績を下回った。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市、USJ)は新型コースターの導入や15周年イベントの効果があり、前年度比約5%増の1460万人で過去最高を更新した。
 オリエンタルランドが発表した16年度下期(10~3月)のTDRの入場者数は前年同期比0.9%減の1567万人だった。今年の1~3月に開催した「アナと雪の女王」の期間限定イベントや15周年イベントのグランドフィナーレを飾るショーなどが好調だったが、ハロウィーンイベントでの動員数が15年度に及ばず結果として前年割れとなった。
 TDRは16年4月に大人1日券を500円値上げした。16年度上期(4~9月)は台風の影響もあり前年同期比0.3%減の1432万人と苦戦した。ただ通年で見ると4年連続で3000万人の大台を突破しており、「依然として高水準を維持している」(オリエンタルランド)
 オリエンタルランドは好調が続くUSJへの巻き返しに向けて、20年までに約2500億円の大規模投資に乗り出す。現在は「美女と野獣」などのアトラクションの着工準備を進めている。ただ、完成は20年を予定しており、工事期間中の顧客のつなぎ留めが課題となる。
 同社は今後、顧客の満足度を高めるべく、屋外での暑さ寒さ対策や温水便座の導入など居心地の良さを追求する。毎年500億円の投資計画のうち300億円は施設改修にまわす計画だ。今年度の入場者見込みは17年3月期の決算発表に合わせて開示する予定。
 一方で、USJが3日発表した16年度の来場者数は15年度より5%増えた約1460万人で3年連続過去最高となった。16年3月に開いた新型ジェットコースター「ザ・フライング・ダイナソー」が人気を呼んだほか、14年開業で映画「ハリー・ポッター」を題材としたエリアは訪日外国人など国内外からの集客力を維持している。
 16年度は開業15周年を記念して「やり過ぎエンターテインメント」をテーマに掲げた。夏にはマンガ誌「少年ジャンプ」と組んだイベントや、アイドル「AKB48グループ」の常設ライブを打ち出した。3月には人気ゲーム「ドラゴンクエスト」を再現したアトラクションを設けるなど、ハリウッド映画の世界観の垣根を越えた企画を矢継ぎ早に打ち出し、来場者層を広げる戦略を進めている。
 17年度も21日にアニメ映画のキャラクター「ミニオン」を主役とする「ミニオン・パーク」を新設、ハリー・ポッターのエリアでもナイトショーを企画するなど新しさを訴求する考えだ。
(企業報道部 下野裕太 大阪経済部 川崎なつ美)