NHK新書取材メモ(2):セミオート発注の狙いと成果

 3月30日と31日は、大崎のローソンに2日連続の取材となった。30日は、「ポンタカードなどのデータ活用」と「食品添加物とフードロスへの対応」。31日は、「セミオート発注の仕組み」と「MO(複数店舗オーナー制度)」について担当者にお話を伺った。

 

 セミオート発注について、執筆用のメモを残しておく。校閲の問題があるので、セミオート導入成果に関する具体的な数値は伏せている。

 日本語で無理やりに訳せば、「セミオート発注」は「半自動発注」とでも呼ぶのだろうか。システム導入は2015年6月にはじまり、順次導入がなされて、同年11月に全店導入が完了している。加盟店からの反応は、賛否両論が意見が真っ二つに割れたらしい。説得のために、このシステムをなぜ導入するのか、そして予測計算のロジックを、SVや支店長を対象に何度もセミナーを開いてていねいに説明したという。

 

 導入の最終目的は、人間の勘だけを頼りにした発注によって生じる「チャンスロス」(発注不足)と「廃棄ロス」(過剰発注)を減らして、最終の粗利を増やすことだった。そのために、過去の店舗販売データなどを用いてコンピュータに機械学習をさせて、「単品ごとの発注量」を推奨するシステムを開発した。

 「完全自動発注」(フルオート)でないのは、たとえば、朝の6時に店舗で受けた推奨基準値(呼び方は小川流)を、9時までに店舗側の意思で変更することができるからである。

 むしろ、人間の意志を重視するために、参照基準値(推奨発注)を提供することがセミオート発注の肝になっている。そのことによって、(1)店舗ごとのばらつきが減って発注の精度が高まった(チャンスロスと廃棄ロスの低減)。また、(2)発注に要する作業時間を大幅に短縮することができた。

 

 セミオート発注の対象となる商品は、弁当やデザートなどの日持ちしないデイリー商品である。全部で200~250アイテム程度。これが売上全体の約25%を占める。その他の飲料や加工食品、冷凍のファストフードなどの在庫型商品は、もともと計画発注がなされていた。

 セミオート導入の結果、粗利率が数パーセント(少ない金額ではない)改善している。作業時間も70分から30分に短縮された。試行錯誤のプロセスで、システムも進化を続けている。

 長期的には、売り場をよくすることが最終目的になる。セミオートでSVの役割が変わりつつある。新製品の推奨や発注の仕方をアドバイスするのではなく、もっと個々の店の事情に合わせて指導ができるようなること。

 なお、セミオートの導入と並行して、同時に廃棄に対するオーナーさんへの補償パッケージを変えた。詳しいことは省くが、制度変更で店側が攻めの発注ができるようになったという。セブンイレブンは、公取からの指摘後に、本部が廃棄ロス分を15%負担するようになった。ローソンはそれに対して、発注システムの変更とパッケージを組み合わせて対応していることがわかる。