【学生感想文】井出 留美 著 『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか 』 幻冬舎新書

 読書感想文優秀者2名を掲載する。


『賞味期限のウソ』を読んで 中川里紗

 この本を読んで普段の自分の生活や行動を見直すきっかけになり、知らなかったことも多く学べた。クリエイティブな買い方リストの項目では、買い物リストを作らずに買い物に行く、「数量限定」「期間限定」という謳い文句に対してほしくもないのにつられて買ってしまうなど、該当する項目が多くて反省した。2年生で受講していたマーケティング論の講義で「数量限定」や「期間限定」というワードを上手く利用している企業の戦略に私はまんまとのせられているのだと思ったけれど、それだけでなく無意識のうちに普段から食品ロスを増やすことにも加担していたのだと気づいた。目の前のできることから行動に移して改善していきたい。

本書の内容で特に印象に残っているのが、棚を商品でいっぱいにしておくコストもあなたが払っているという文章である。たしかに自分が客の立場で買い物に行って欲しいものが欠品で購入できなかったら、不満に思うし品揃えや数が多いお店に行きたいと思う。しかし自分が飲食店でアルバイトをしていて毎日多くの廃棄をしていることも知っていて、毎回もったいないと感じるのも事実だ。
私は「鎌倉パスタ」と「焼き鳥屋すみれ」でアルバイトをしているのだが、2つの店は食材の管理が異なると感じる。鎌倉パスタは常に品切れがないように発注している印象を受ける。毎日ロスを量っていて、日によって様々であるが1日に4000円分位の食材が廃棄されている。パスタだけでなく焼き立てパンの食べ放題もあり、私が働いている店舗は客が自由にとれるようにかごいっぱいにパンが並べてあるので、夜になるとそれを廃棄する。他店舗ではお客様の席までパンを店員が配りにいく店もあり、そちらの方がたくさん並べて置く必要がなく処分量は減るのではないかと思った。私が1年生の時は焼いたパンを1日で廃棄としていたので、処分量が多かったが、現在は夜残っているパンを次の日にフレンチ液に浸してフレンチトーストとして出すようになった。そのため、廃棄日が1日延びてパンの処分量が減り、ロスが減少した。フレンチトーストは子供にもとても人気であるし、ロスを減らすとても良い工夫であると思った。
一方で「焼き鳥屋すみれ」ではロスが少ない分、1日の中で欠品となる品が多いように思う。居酒屋なのでお酒の品揃えは多いし、頼まれたお酒が出せないことはまずないが、焼き鳥は閉店前に品切れとなってしまうことがある。鶏肉は生なので消費期限が早いからなのかあまり多くストックしていない。会計の時にアンケートを客に書いてもらっているが、品切れでだせなかった商品があることに対する苦情を書かれているのは見たことがない。店員の接客や他の商品で満足してもらうことができているのだろうかと思った。パスタと居酒屋では来店する客層も求められているサービスも異なる。欠品商品が多いのが良いとは思わないけれど、常に大量に廃棄しなければいけないような量は必要ないのかもしれない。

また家庭やコンビニなどで多くの食材が廃棄されている一方で、餓死する人がいる現実に衝撃を受けた。餓死してしまう人がいるのは開発発展途上国でおきていることだと思っていて、どこか遠くのことのように感じていたからだ。東日本大震災という緊急事態のときにも人数分足りないから、メーカーが違うからという理由でだめになってしまった食料があったことにも悲しくなった。どうして1つのおにぎりを4人で分けているような状況の時に、食べるものがあるだけでありがたいのに、行政は「平等」という基本原則に従うのだろう。税金をもらって働いているから仕方のないことだと言ってしまえばそうなのかもしれないけれど、そのような状況の時まで「平等」にこだわって食料を廃棄するのは違うのではないかと考えた。
しかしまずはアルバイトの廃棄を減らすことや行政の対応などの前に、自分の普段の生活で直せるところを少しずつでも改善していかなければならない。食品ロス大国の日本のロスの半分は家庭からで、身近なところからロスを減らす努力はたくさんできる。賞味期限が切れているからと言ってすぐに捨ててしまうのではなくて、五感を使って判断する。お腹がすいているときは何か食べてから買い物に行く。商品を棚の奥から取るのでなくて手前からとる。そのような今からできる難しくないことから始めていきたい。そして周りの人に今回自分が知ったことを伝えたいと思った。

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『賞味期限のウソ』を読んで 山崎大

本書を読んで、食品業界における賞味期限が原因で日本ではまだ食べられる食品を、大量に廃棄する食品ロスが行われていることが分かった。また本書では、どのようにすれば食品ロスを減らせるかという解決策が述べられている。
私は本書をもとに、自分の身の回りで起きている食品ロスを、どのようにすれば解決できるかを考察していく。

本書を読んでいて、私が最初に頭に浮かんだ食品ロスの現場がコンビニである。私は中学生のころ、「夢ワーク」という職業体験をする機会があり、3日間セブンイレブンで働いた。そこで感じたのは、おにぎりやパンなどが大量に廃棄されていてもったいないということである。コンビニでは一日に数回食品が配達され、その度に品出しが行われる。その際、賞味期限が切れた商品は、廃棄処分となって捨てられてしまう。コンビニによっては、勤務後に従業員たちで食べるというケースもあるが、私が働いたセブンイレブンは違っていた。ただ、捨てられていたのである。私はこの現状に対して、やるせない気持ちになったことを今でも覚えている。
この問題を解決するのは、難しいことである。なぜなら、コンビニ業界では捨てることを想定して、店も本部も計画を立てているからである。それに加えてコンビニ業界では、捨てる前提で、捨てる費用があらかじめ商品価格に織り込まれている。なので、価格が高く設定されている。
では、どうすればコンビニ業界の食品ロスは減らせるのか。私はそれぞれの食品のデータを取ることが、重要であると考える。この商品は一日に何個売れ、この時間帯には特によく売れるなど、売れる商品や売れる時間帯を把握する必要がある。こうすることによって、売れない商品の過剰発注を防ぎ、食品ロスを減らすことに繋がる。

コンビニ業界を例に食品ロスについて述べたが、実は日本では食品ロスの約半分が家庭から出ている。日本の食品ロスの量は、年間632万トンである。このうちの302万トンが消費者由来、つまり家庭から出ている。世界の食料援助量が約320万トンなので、日本の食品ロスは明らかに異常な数字である。
このような家庭から出る食品ロスの解決策として、フードドライブがある。フードドライブとは、家庭で余っている食品を持ち寄って、困窮者に提供するという取り組みである。これは、海外で始まった取り組みである。アメリカでは、家庭で余っている食品を袋に入れて玄関先に置いておくと、郵便局の人が、本業のついでに回収してくれる貧困撲滅という取り組みがある。日本でも、埼玉県川口市で主宰されている「食品ロス削減検討チーム川口」で、フードドライブが行われている。私は川口市出身なのでこの取り組みに興味が沸き、詳しく調べてみた。
「食品ロス削減検討チーム川口」とは、川口市在住もしくは埼玉県民の有志で構成されるチームである。川口市議会副議長、川口銀座商店街振興組合理事長、埼玉県庁など、組織としてではなく個人の意思で参加している方と、食品ロス削減を目指して2015年7月から活動が行われている。フードドライブの第一回目は2015年12月に実施され、川口市民から130キログラムを集め、市内の母子支援施設に届けられた。
実際に私の家でも、食品ロスが起きてしまっている。食品を買いすぎたり、料理を作りすぎてしまったりと理由は色々あるが、これからはフードドライブを利用して食品ロスを減らしていきたい。私は身近な環境にこのような取り組みがあることを、本書を読むまで知らなかった。私と同じくまだ知らない人が多いと思うので、市内で取り組みをアピールするのと、私も近所の方に声をかけてみようと思った。

本書を読み終えて、日本では「3分の1ルール」や「ゼロリスク」が存在するがために、大量の食品ロスが発生してしまっていることを痛感した。また日本には、土用の丑の日や節分など、特定の日に特定の食べ物を食べる風潮がある。これらは、その日を過ぎればただのゴミとなる。伝統を重んじるがあまり食品ロスが生まれるのであれば、その伝統はなくしたほうがいい。食品ロスを完全に無くすことはできないが、減らすことは可能である。
東日本大震災や熊本の震災で、一つのおにぎりを4人で食べ合うという現状がある中で、食品はもっと大切に扱われねばならないと強く感じた。自然災害が多い日本だからこそ、食品ロスについてもっと考えなければならないと思う。