高校卒業から7年目。JR東海の新幹線事業部に就職して、見習いとして、改札業務、切符の販売、車掌を6年間経験してきた。そして、今年の5月から、真継(まつぎ)は、東海道新幹線の車両を運転していた。ただし、先輩の指導員つきの訓練運転である。
それが、9月29日に、はじめてひとりで名古屋駅から東京駅まで、ソロで新幹線(たぶん、のぞみ号)を運転することになる。正式な新幹線の運転手として独立することになる。一昨日、真継から、かみさんに連絡があった。そのメールが、わたしに転送されてきた。
当日(29日)、わたしは昼間は大学院の授業(プロジェクト研究)がある。夕方から、東京駅から大阪駅までの帰りの列車に乗り込むことにした。大阪駅で真継を祝福してから、京都に引き返す予定である。
その日は、そのまま、義母(奥村純子)たちと一緒に、娘の知海(ともみ)が働いているホテルブランヴィア京都に宿泊する。
一昨日は、「新幹線初乗務への招待」を約束していた肉親たちに、ご招待の電話をかけた。実母(小川わか)、実妹(近藤道子)、元秘書の本村ちなみと長男のカイトくんの3組である。
秋田に住んでいる母親は、喜んではくれはしたが、82歳である。仕入れもやらなくなっている。東京までは出て来れない。妹の道子は、東京駅まで出発の見送りにきてくれることになった。
本村ちなみ親子は、名古屋駅からの乗車になるだろう。大阪か京都まで一緒に行って、東海道線で自宅のある岡崎駅まで、その日のうちに引き返す。平日である。ふたりは、銀行員と中学生だ。
二ヶ月前に、中国で高速鉄道の事故があった。乗務員の訓練機関は、半年とも数ヶ月とも聞く。日本の新幹線では、わが子の訓練日程を見ても分かるように、実にていねいに運転手を訓練していく。
これまで、そのプロセスを詳しくは書かなかったが、それぞれ車掌になるとき、見習い運転手になるときには、訓練センターで数ヶ月の座学も同時に行っている。ソフトの面でも、JR東海は、従業員に長い時間と多額の投資をしている。その他の鉄道運営会社も同じであろう。
安全運転には、単にハードを充実させればよいというものではない。日本の新幹線が完璧とは言わないが、長い伝統と安全運行の実績には、それなりの努力と歴史的な積み上げがあるということである。
ソロ運転までは、あと二週間。真継は、かなり緊張の日々を送っているだろう。わたしたちファミリーは、どのような気持ちで、29日の乗車日を迎えることになるだろうか。