「マクドナルド赤字218億円、失敗の本質」(2015年2月5日)の記事転載

 2014年12月期の決算発表(2月5日、午後15時)の直後に、「東洋経済オンライン」に掲載された記事を再録する。中長期的な食のトレンドからマクドナルドの事業低迷を論じたものである。本編から、原稿が長くなりすぎるので削除した一部を復活させて構成してある。



マクドナルド「赤字218億円」、失敗の本質
東洋経済オンライン 2015/2/5 16:25 小川孔輔

マクドナルドがとらえ切れていない、「食のトレンド」とは?(撮影:今井 康一)

 日本マクドナルドは、2月5日に発表した2014年通期連結決算で、過去最大となる218億円の赤字(連結当期純利益)を計上した。対前年比では、269億円のマイナスとなる。これは、外食史上最大級ともいえる衝撃的な数字である。さらに、2015年1月の売上高は異物混入問題が響き、月次で前年同月比マイナス38.6%と、こちらも衝撃的な数字が続く。
 さらに日本だけでなく、グローバルでも暗雲が立ちこめている。1月末には、米国マクドナルド本社のトップ、ドン・トンプソンがCEOを退任するという人事が発表された。2014年夏、中国の工場で「使用期限切れ鶏肉問題」が発覚した後、日本や中国などで売り上げが激減。アジア地区だけでなく、鶏肉問題の余波は北米や欧州市場にも影響が及んでいた。
 約40年という長きにわたって君臨してきた「外食の雄」に何が起きているのか。現在の業績低迷をもたらした原因について、藤田・原田両時代の経営を詳細に分析した新刊『マクドナルド 失敗の本質――賞味期限切れのビジネスモデル』を上梓した小川孔輔氏に、マクロ的な食トレンドという観点から、事業失墜の遠因について解説してもらう。

 筆者は、マクドナルド失墜の原因は、性急すぎたFC化と短期的なマーケティング施策の失敗に求めることができると考えている。
 しかし、マーケティング研究者として、10年以上、マクドナルドを定点観測してきた経験から言えるのは、業績不振の根本的な理由は別のところにあるということだ。マクドナルドのビジネスモデルは、食のトレンドに合わなくなってきているのではないか。
 さかのぼって2001年、当時CEOだった創業者の藤田田氏は、竹中平蔵氏との対談で、食のトレンドに関して興味深いコメントを残している。

「……回転寿司というのがあるでしょう。あれが非常な勢いで伸びている。そのほかにも定食や牛丼と言った店。和食のチェーンというのは宣伝しなくてもいいんです。2000年もコメを食べている日本人には郷愁があるから。(中略)今年は和食が標的。和食のチェーンをのばさせないようにしなきゃいかん」(「スペシャルトーク」『Challenging Spirits 1971-2001 日本マクドナルド30周年記念誌』)

“鼻が利く”藤田氏は、日本型のファストフードチェーンである回転寿司が、将来的に強力なライバルになることを察知していた。回転寿司は、「和食ファストフード」である。近年は、代表的な和食としてグローバルに受け入れられるようになってきている。

■ 世界を覆う健康志向と、ゆらぐマクドナルド信仰
 世界中の人々を和食に向かわせている背景にあるのは、健康的な食への熱狂である。和食の特徴は、食材の鮮度を重視する調理法とカロリーの低さ、そして舌だけ(味覚)ではなく、目でも料理を味わう(視覚)食の楽しみ方にある。そして、日本人の和食回帰については、こんなデータが存在している。

 夕食メニューの変化を調べた日清オイリオの調査(2013年)によると、「10年前と比べて和食を作る頻度が増えた人」は46%に上った。それとは逆に、「洋食を作る頻度が減った人」は32%だった。和食が増えた理由は、「健康的だから」が72%、洋食が減った理由は「カロリーが高いから」が(67%)と最も高くなった。

 *この続きは、「東洋経済オンライン」で
   http://toyokeizai.net/articles/-/59863