お風呂上がり。フロント横のウッドデッキで、夕食前のひと時、木製のチェアに足を伸ばして、くつろいでいる。このテラスの真上には、樹齢100年の栗の大木がある。風が吹くと、天上から栗のイガが落下して地面に当たる。
アスファルトにイガが当たる衝突音が、わたしには、”ぼとん”、あるいは”ぼったん”、と聞こえる。微妙に的が外れて、木のデッキのほうにイガが落ちると、”バン”と破裂音が鳴る。
朝夕の食事を担当していただいている、お世話係の丸山さんから伺った怖い話である。
「(栗のイガは、)もっと大きくなりますよ。お客様の頭を、そのイガが直撃したことがありまして(笑)」。わたしの反応は、「そのかた、ハゲてなかったんですよね」(爆)
正面玄関の車寄せが、栗のイガだらけになっている。スタッフは、それでも、テラスのデッキやアスファルトに散った栗のイガを片付けようとはしない。
手を抜いているのではない。そのほうが、自然で風情があるからだろう。いわく言い難い、不思議な栗のイガの文様が、地面に描かれている。この絵柄(写真)を、何人かには転送しておいた。
大きな栗の幹には、生後3ヶ月になる子やぎが繋がれている。7月12日に、宿の下見に来たときは、もっと小さかったな。通りかかった、宿のご主人が説明してくれた。
「体の大きさは、3分の1くらいでしたでしょ」。雌の子やぎが3匹。そのうちの一匹が、栗のイガの茎をくわえて遊んでいる。紙や葉っぱが好きなやぎも、さすがにイガが自分の食事には適さないことがわかるらしい。
前足で、伏せ!の恰好をして、イガを突いて転がしている。玄関まわりのたらいには、カメも数匹、飼われている。山羊さんと亀さんが同居、不思議な光景だ。
イガはつぎつぎに頭から落ちてくる。やぎたちは、なんとなく落ち着かないみたいだ。人間だって、直撃されたらと不安なんだから。しかし、すぐに栗には飽きて、葉っぱをくわえはじめる。
ちなみに、雄のやぎは、乳が出ないからなのか。「離れたところにある、わたしどもの牧場に連れていかれてます」と、男性の従業員のかたから説明を受けた。男がおかれている立場は、人間でもやぎでも、状況には大差がないらしい。説明はいらないだろう。
中棚荘の滞在は、4日目になった。朝から小雨。暑くはないが、湿度が高い。
雨の合間をぬって、宿の周りを、千曲川の上流まで、6KM、走ってきた。上り勾配がきつい坂を越えて、二つの部落の火の見櫓を見た。坂の途中から、小諸の町並みを眺めることができた。
適度に汗をかいたので、中棚荘特製のシャルドネ(白ワイン)が、6Kmを走り終わると、体から完璧に抜けていた。
朝風呂と朝食のあと、メールを確認した。
流通科学大学の学長に昨年から就任している、石井淳蔵先生から、お願いのメールがあった。わたしが監修した『28歳の仕事術』を献本してあった。そのお礼かたがた、お願いがニ件。
石井さんは、神戸大学を退職されて、もう65歳は越えているはずだ。まだまだお元気な様子。新しいマーケティング学会を作るらしい。
「ご協力をお願いします」とのこと。同僚の嶋口教授から、内々に聞いていた件だ。しかし、わたしは、もう卒業のとき。新しく組織を作ることにコミットする年齢ではないよね。
部屋に戻って、亀岡先生(北陸先端大学MOT)が2007年に出した『サービスサイエンス』を読む。サービス関連で未読の重要文献は、この夏の内に、チェックを終えるつもりだ。
東大の新井先生の仕事などが引用されている。工学系の先生たちが著している書籍は、いまいちしっくりこない。飛ばし読みになる。しかたがないなあ。
書評はやめにした。★3以下の本は、原則としてスキップする。コメントや評価を公開すると、失礼になるからだ。もう失礼になっているかな。
午後は、お洗濯タイムにする。
車を運転していて、街中でコインランドリーを見つけた。汚れ物が貯まってきていた。部屋に干してあるランニングパンツが乾かない。乾燥機が必要だった。ついでに、バンツや靴下も洗うとするか!
コインランドリーの全自動洗濯機、ドラム式は、30分で600円。10KGくらいまでなら、問題なく洗えそうだ。トランクスやTシャツ、ランニング用の靴下など、積んであるのは、軽いものばかりだ。
乾燥機のドラムが回っているのを見ているが、わたしはすごく楽しい!こちらは、8分で100円。百円玉を2枚投入。16分で、20枚ほどがふかふかになった。
このコインランドリーは、人気である。雨のせいなのか、滞在中、わずが1時間ほどで、10組が来店した。
若いカップル一組(なんで、この時間に彼等がいるのかな?)、おば(あ)さんが3人、暇そうなおじさんが一人。洗濯を日課にしていそうな、主婦が3人。こちらは、布団カバーなど、大物を抱えている。10KG以上のカゴを抱えて、がんがんドラムを回している。
棚を見渡すと、忘れ物が意外にたくさんあることを発見した。うっかりものは、わたしだけではなさそうだ。忘れ物コーナーには、靴下が多いな。
わたしも、自宅では、自分で洗濯と乾燥機を回す。片一方の靴下が、しばしば迷子になってしまう。こんな感じなのだろうな(苦笑)。
洗濯が終わったので、心機一転、高峰高原へ移動する。晴れたときの、予定の行動だ。
3時には、高峰高原ホテルの駐車場に到着できた。終点は、標高2千メートル。雲の中を、池の平の登り口まで、往復6KMを走った。アップダウンがきつい。異常に空気が薄い!参ったな。
左の足首のアキレス腱を痛めている。階段から転げて以来の後遺症だ。練習量が増えて、炎症が悪化しているらしい。
足首をサポーターするバンドを、左のすねに貼ってきた。池の平の駐車場までは、結局は到達できず。途中で引き返すことにした。二日続けての砂利道の急坂は、もう体が限界だ! 昨日からさらに、標高が700メートル、上ってきている。筋肉の負担より、息継ぎが厳しくなった。
走りはじめは、小諸の街が、眼下に広がっていた。高峰温泉を越えて20分もしたら、まわりは霧で真っ白に。雲(霧)につつまれている。
通る車もまばらで、歩いている人はいない。登山道なのに。もう先へ行くのは諦めて、下界に降りることにした。不安でもある。
先はさらに2週間、ランニングの練習がある。田沢湖マラソンへ向けて、復活のためのトレーニングは、いまはじまったばかりだ。