「進化する東京駅~街づくりからエキナカ開発まで」についての感想文(優秀作品)

 1月の課題図書の読書感想文で、優秀なレポートを掲載致します。


進化する東京駅~街づくりからエキナカ開発まで~
経営学部経営学科 木内香里

「新たなエキナカ戦略の提案」
 私は普段、東京駅をほとんど利用しない。しかし先日、駅弁(もちろん鶏めし弁当)を買いに行った際に、エキナカを訪れた。スーツケースをひいた人がたくさんいて、ふと、夏休みに行ったドイツの駅の光景を思い出した。そこで、今回は、本書にも一部記載がされていたが、ドイツと東京駅の違いを比較してみたいと思う。

 3年の夏休みに、ドイツへ行った。ツアーではなかったので、移動手段は専ら鉄道だった。私の行った場所は、主にデュッセルドルフ・ゲルゼンキルヘン・ケルン・フランクフルトである。
 初日は、高速バスで宿泊拠点となるデュッセルドルフまで行ったので、鉄道を利用しなかった。次の日、さっそく駅に向かう。デュッセルドルフの駅周辺は、周囲の建物全体がレトロで、とてもかわいらしい雰囲気だった。駅構内に入るとすぐ電光掲示板が目に入り、内装は近代的で明るく、一瞬空港かと思うほど、広々していた。
 そして、食べ物屋さんの多さに驚いた。ドイツには改札がないが、日本に当てはめると(JR新宿駅が想像し易い)、改札を入ってすぐ、各ホームにつながる階段のあるフロアに、所狭しと、飲食店が並んでいる様子。まさに東京駅のエキナカだった。主にパンやサンドが多く、安くておいしかったが、どこも似たような味だったので、毎日朝食に買っていたが、最後の方は飽きてしまった。
これは、東京駅でいう、駅弁みたいなものではないかと思った。長距離移動が多いドイツでは、移動時間に車内で飲食する人が多かった。また、フードコートや、マクドナルドもあり、座ってくつろげるお店もあった。雑貨屋さんやドラッグストアもあり、日常の生活にも便利そうだった。

 その他の駅についても、共通点や相違点があった。
 ゲルゼンキルヘンは、少し小さな町だったせいか、小さなスーパーが駅構内にあり、外に出るとすぐ、ショッピングセンターにあるレストラン街やフードコートのように飲食店街があった。
 ケルンは、駅構内に洋服店やアイス屋さん、ジューススタンドなど、デュッセルドルフよりもバリエーションが多かった。観光地というのが影響しているのだろうか。食メインの東京駅よりは、品川駅などのエキュートのような感じといえた。
 最後にフランクフルト(マイン)中央駅だ。ここは、本書に掲載されていたロンドンのセントパンクラス駅のような鉄骨・大アーチで、頭端式の駅だった。ここは、頭端部分にカフェや飲食がたくさんあった。
4つの駅に共通していたものは、駅ビルが無いこと。デパートや百貨店、ショッピング街は、駅から離れていて、徒歩10分くらいや、トラムに乗らないと行けなかった。もはや日本の駅周辺は凝縮されている。やはり開拓するのはエキナカだと思った。

 そして、ドイツのエキナカに必ずあったが、東京駅になかったものに気付いた。書店だった。ドイツは、どこの駅も、駅構内の入口すぐのところに書店がある。外からも見えるカラフルなポストカードの陳列や、文房具、雑貨もあり、日本の書店とは違う華やかさがあった。レジ前にはドイツ発祥のグミ“ハリボー”がおいてあり、日本のガムのようについで買いを誘っていた。

 たしかに日本の他のエキナカや駅前には書店がある。だが、スペースの関係もあるせいか、どこも立地が悪い。最上階や奥地など、少し足を伸ばさないと立ち寄れない距離だ。そこで、出版業界の活性化を図るべく、書店をもっと身近に立ち寄れる空間にするのはどうか。提案のポイントとして3つある。
 1つめが、他のアイテム販売などだ。ビレッジバンガードなどがよい例だが、もっと動線をシンプルにし、ディスプレイも低くして圧迫感をなくす。
 2つめが、カフェやレストランなど、イートインできる場所に隣接させることだ。エキナカは、時間つぶしの利用者も多いということで、本を購入して、飲食店で読むことが想定できる。
 3つめが、キオスク感覚の書店だ。吟味するというよりは、さっと買うことができる書店のイメージ。重く、かさばる本は荷物になり値段も高めなので不向き。したがって、文庫本やガイドブック、子供の絵本などを充実させるのはどうか。

 これにより集客に相乗効果を上げ、薄利多売な書店の荒利益率改善にもなると私は思う。駅弁で実感したが、エキナカは、食メインかつ出せば売れる環境だ。食以外の提供、また活字離れが問題になっている今日、そのような環境に書籍を置くことで街としての役割を果たすと私は思う。