済州島マラソン、ゴールタイムは…

 JFMAの国際シンポジウムに参加された人たちから、「小川先生!済州島マラソンのタイムが公表されてません」と、懇親会の席で質問を受けた。恥ずかしながら、フルマラソンの完走タイムを公表する。4時間57分27秒だった。最近(10年間)で最悪のネットタイムである。


朝9時の出走で、運動公園に午後2時前にゴールするまで、風光明美な国立公園の海岸線にそってずっと霧の中を走った。フルマラソンの参加者は、約800人。日本人が7割くらい。たぶん500人? 東京マラソンが3万人強だから、その50分の1の大会規模である。

 人数がすくないので、スタートしてから5キロも行くと、走者はすぐにばらけてしまった。前を走っているランナーが見えなくなると、コースの取り方が変わらなくなるくらい、濃い霧の中を走る。道は完全に舗装されているが、そもそも寒村・漁村だから、人の気配がほとんどない。
 犬と猫がたくさんいる。カラスとすずめもたくさん。とは、海岸線にすっと、にんにくを干してある。潮のにおいに混じって、にんにくの強烈なにおいがすごい。差し引きでゼロ!(笑)

 マラソンに応援はつきものだが、そもそも地元のひとが応援している気配はない。主催者が雇った女子学生たちが、エイドステーションでポカリスエットを配りながら、「がんばれ!」と韓国語で応援してくれる。
 若い女子学生なので、うれしくはあるが、地元の応援がほとんどないので、いまいちがんばって走るモチベーションがあがらない。ゴールタイムが悪い言いわけではない。本当に、人影が見えないのだ。
 済州島マラソンの主催者は、きっと、「きれいな海岸線をながめながら、海外から参加したランナーには、信号も看板もない自然な風景を楽しいでほしい」と思っているにちがいない。このコース取りは、素人には親切のように見える。
 しかし、ランナー目線では、これは大きなお世話、大いなる誤解である。ランナーに必要なのは、自然の風景ではない。沿道からの熱い応援なのである。
 海外線のフラットな道路は、アップダウンがなくてよいように思える。これも、大いなる誤解である。多少なりとも上下したほうが走りやすい。ランナーには、気分の変化が必要なのだ。単調さは禁物である。
 そんなわけで、中島君には、もし大会の関係者(知事か?)と話すことがあれば、「一部のコースは、繁華な市内の沿道を通るように、コースの設計は変えたほうがよい」。ランナーはそのほうがうれしい。

 さて、折り返しの21キロ地点まで、タイムは2時間6分。すでに足は使い果たしてしまった。あとは、上がらなくなった足を、惰性で動かしてゴールまで運ぶことに。だまし、だまし、気持ちが切れているので、がまんして走るしかないと思った。
 練習では、この2か月間の最長が20キロ。だから、30キロ地点で、足が止まってしまった。4分の3の地点で、通過タイムは3時間15分。残るは12キロ。これが長かった。
 とりあえず、歩きながら、ときどき走ることにした。5時間以内にゴールするためには、1キロを走るのに、だいたい9分のペース。
 21キロを折り返してからは、海岸線が右側になる。ほとんどフラットなので、ふつうに走れば、1キロ7分程度では走れるはずだが、もはやそんな余力はない。
 こんなときは、いつも思う。「これで、フルマラソンは最後にしようよな」。済州島が33回目である。切りもよいしね…
 
 ゴールタイムは、4時間57分27秒。やれやれである。6時間の制限時間だから、わたしの後にもまだまだ日本人ランナーが入ってくる。
 ゴールしたのはよいが、うっかり、もらえるはずの「サザエのおかゆ」を食べ損ねてしまった。
 最終バスを待つこと1時間。粥のお昼なしで、さらに50分。バスにゆられて、ようやく4時に済州島グランドホテルに帰った。中島君が待ってくれていた。