岩田弘三社長からの回答: ”お持たせ”プロジェクト BY ロック・フィールド班

 学生たちから、FR1の店舗でワインを扱えないのかをたずねられた。ロック・フィールド班の集まりでのことである。今年は、荻窪の新店舗が調査対象である。この店舗では、タルトやキッシュなどを、サラダなどと一緒に購入してもらう「買い合わせ」の実験をしている。


そこで、学生たちが考えたのが、さらにその組み合わせに、自社ブランド(RFマーク)のワインを関連販売するアイデアだった。東京都の中野区、杉並区、武蔵野市近辺に住んでいる人たちの、パーティー需要を考えてのことである。
 わたしもその場にいたので、学生たちの「お持たせのアイデア」は、良い考えだと思った。同席していた販売担当の部長さんに、「店頭実験で、ワインを扱う可能性はないかのかどうか」を検討してもらえないかと打診してみた。
 ワインを扱えないとなると、学生たちの「買い合わせ」のアイデアは、それ以上の広がりをもたなくなる。テスト販売としては、まとまりがなくなるからである。

 学生たちのアイデアに対する担当部長さんの反応は、いまいちだった。どちらかというと、否定的であった。わたしの推測では、ロック・フィールドの店舗では、ワインを取り扱う酒類免許を持っていないのでは?だった。しかし、実際の理由はそれとは異なっていた。
 昨日の夕方、そのことを確かめるために、ロック・フィールドの岩田社長に直接電話してみた。書籍の出版(「岩田さんの自伝をわたしに書かせてくださいね」と10年前からお願いしている)についても、最終確認する必要があった。そのついででもあった。
 
 携帯電話に出た岩田さんは、即座に「NO」の反応だった。「小川先生、いまどきスペインやチリでおいしいワインがあるのに。そんな30年前ならまだしも、ラベルを張り替えただけの高い国産ワインをうちがあつかうなんて。そりゃあ、ないですなあ。(可能性は)0%!です」。
 反論の余地はほとんどなさろうな、一発回答だった。それに続いて否定的な理由を列挙してきた。

 1 在庫を抱えておくようなビジネスモデルではない(たしかに、RFでは、かなり商品回転率の高い商売をしている)。
 2 ワインは、店頭で品質管理が問題になる。スペースもたくさんとる(家賃が高いところでの商売である)
 3 単にラベルを張っただけでは、商品の差別化ができない。

 ワインに関しては、岩田さんの答えはもっともである、う~ん。グーの音も出ない。学生たちには、その後に、岩田さんの理屈を伝えた。「おまえさんたち、残念だが岩田さんには完敗だった。別のテーマを考えるしかないな」。
 だたし、ロック・フィールドが新しいフォーマットの店舗を実験しているのは、その先に、セレクトショップ的な店舗を考えているからである。将来は、品ぞろえを、惣菜から広げていく可能性はある。そのときに、ワインをあつかう可能性は皆無ではない。

 ロック・フィールドで国産ワイン、このアイデアは、そんなに悪くはないと思う。地産地消(国産野菜や旬のもの)にこだわっている岩田さんならば、元のブドウにこだわって開発した国産のワインは、可能性はあるのではないだろうか? 
 サントリーで、国産ワインを扱っている堀英理子さん(元大学院小川ゼミ)に、岩田さんの発言について感想を聞いてみた。「岩田さんのようなグルメな方でも、国産ワインについては似たような印象をもっていらっしゃるのですね」とやや残念そうだった。
 国産ワインは、むかしとは大いに違っている。わたしは、堀さんからたくさんの国産ワインを紹介してもらっている。京都のワインバーでは、さまざまな産地の国産ワインを飲ませてもらった。その印象からいえば、おいしい国産ワインを岩田さんに味わってもらう努力を、堀さんたち、メーカーのひとたちはもっと努力すべきではないかと思う。

 それにしても残念だが、学生たちは、またつぎはどんなアイデアで再チャレンジしてくるのか。楽しみでもある。転んでも、ただで起きてはだめだよ。