【学生感想文】土屋 哲雄 (著)『ワークマン式「しない経営」』 ダイヤモンド社

読書感想文優秀者6名を掲載する。
4年 海津まりな・葛西理彩・熊倉千紘
3年 稲熊隆仁・野口萌々音・森本万理

 

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ワークマン式「しない経営」を読んで   4年  海津まりな

 本書は、近年業績好調で注目を集めている会社、ワークマンを急成長に導いた専務取締役の土屋哲雄さんが経営手法のエッセンスを説明している。
 私は表紙を見ただけでは、『しない経営』が『成長』に結びつく理由が想像できなかった。なぜなら、成功する会社とは、売上を上げるために従業員一人一人が目標を持ち、時代の流れに乗って様々な事に挑戦する革新的なイメージだったからである。むしろ今何かを『しない』という保守的な考え方では時代の流れに置いていかれて成功するはずがないと思った。
 そこで、自身のアルバイトに置き換えて考えてみることにした。私は二つのアルバイトを掛け持ちしている。一つが大手アパレルショップ、もう一つが小さなクレープ屋だ。すると『しない経営』は従業員や顧客のことを大切にし、それが成功につながる要素のひとつであることがわかったため、印象に残った事を三つ詳しく述べようと思う。

 まず一つ目は、『ノルマや短期目標は設定しない』ことである。
 これを見たとき、「これでは働き甲斐がなさそう…」と思った。私が働いているアパレルでは、一カ月に会員購入に導いた客数目標や、一日の接客目標などが設けられる。これのおかげで頑張って達成しようという気になり、やりがいをもって働いている。しかしその分個人に求められることが多いため、負担が大きい。
 それとは対照的に、クレープ屋のアルバイトは、目標などはなく、ただひたすらクレープを作って提供するだけなので、ストレスに感じることはない。アパレルのような接客もないため気軽に働くことができている。
 ワークマンで働く、子育てや家事に追われる主婦さんなどは特に、このようなストレスを感じない職場はありがたいのかもしれない。

 二つ目は、『値引きをしない』ことである。本書では、値引きはお客様の裏切り行為になると書いてあった。
 私の働くアパレルでは、商品の入れ替わりが早いため、新商品でも 1 か月たたないうちに売価変更されてしまうことも少なくない。また、週末には会員限定の値引きを行い、集客をはかっている。しかし、それに気が付かなかったお客さんや、一カ月後に再び来店し、以前自分の買った商品が安くなっていることに気が付いたお客さんの嘆く声をよく耳にする。仕方がないことだが、こちらも申し訳ない気持ちになってしまう。

 一方クレープ屋では、値引きはない。決められた値段でほとんど変わらないメニューを一年中売り続ける。代わり映えがなく刺激は少ないが、余計なことは考えなくて済むし、週に何回も来て同じメニューを頼む常連さんもいる。
 もちろん値下げをすると、購買意欲を掻き立て売上につなげることができるが、買う目的が決まっている顧客の多いワークマンにとってはその必要がないのだろう。目先の利益だけでなく、お客さんが再来した時のことまで考えている。これこそ本当にお客さんに寄り添っているからこそ出てくる考えだと感じた。

 三つめは『上司との関係』である。
 ワークマンは「出張時の送迎をしない」ことや、「上司は五十パーセント間違えると公言する」ことで、過度な上下関係を避け、部下でものびのびと過ごし、意見を言いやすくする環境づくりをしている。それこそワークマンの「エクセル経営」が個人の意見を言いやすくもしている。
 これに関しては私の働くアパレルもクレープ屋も同様、上司部下関係なく雑用も引き受け、思ったことはすぐ言いあえる環境であり、感謝の言葉も頻繁に飛び交う。このおかげで従業員同士のストレスは感じたことがない。
 それに対し、中高生の頃所属していた吹奏楽の部活を思い返してみると、上下関係が必要以上に厳しく、間違っている先輩に注意することはもちろんできず、とても息苦しかった。そのため大会も一定の結果しか出なかった。

 以上の三つから、ワークマンは「しない」といっても、根本は従業員や顧客、取引相手のことを大切に考えていることから来ている考え方であることがわかった。
 第一に従業員の働きやすさを考え、「頑張る」ことをしないどころか禁止するという方針は、なかなか大企業では確立するのが難しいと思う。「しない」ことは保守的な印象を受けがちだが、それを徹底的にやり込んで急成長したワークマンのやり方は、これもある意味斬新で革新的なアイディアなのではないか。

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ワークマン式「しない経営」を読んで   4年  葛西理彩

 最近ワークマンが私にとって身近な存在になってきていると感じていた。それは、先日東京ガールズコレクションにワークマンが参加していたことからだ。作業服のブランドがなぜ?と感じたが、そこにはワークマン式「しない経営」が関係していた。その中でも、私のような従来の顧客ではない層へのアプローチとして印象的だった三点を挙げる。

 一点目は、製品開発アンバサダーの存在だ。ワークマン製品のユニークな使い方などを、ブログ等で紹介する。Instagramでは、#ワークマン女子というハッシュタグで、アンバサダーが若い女性でも真似できるワークマンコーディネートを紹介していた。
 ワークマンは、このアンバサダーとの関係が非常に良好である。インフルエンサーとは異なり、実際に企業のファンであるという特性を生かし、消費者の代表として製品開発に携わる。その御礼として、アンバサダーの宣伝ポスターを各店舗に貼れば、ブログのアクセス数も伸び、Win-Winの関係なのだ。
 インフルエンサーのような提供じみた投稿よりも、ワークマンの熱いファンであるアンバサダーの投稿の方が、私たちの心に響きやすい。アンバサダーが知名度を上げると、必然的に開発に携わった製品の売上も伸びていく。こういったアンバサダーの存在が、ワークマンの飛躍を後押ししているのだ。

 二点目は、異常値を検知し調査することだ。異常値を排除せずに、現場で調査し、まったく違う使われ方がされている製品について研究を重ねている。
 「お客様の方が知っている」という考えのもと、データの異常値には敏感に、現場検証を怠らない。この調査に基づき、本来の用途とは別の使い方がされている製品を、改良して新製品として売り出す。その発展としての店舗「ワークマンプラス」は新規顧客層でにぎわっているという。作業服よりもアウトドア製品や女性向けの商品に特化した新業態のお店である。
 本書内で紹介のあった「防水防寒スーツ」はバイク用に確かに便利そうである。しかし、このような評判の良い商品があっても、実際のワークマンの店舗で、男の人に混ざって買い物をするには少し勇気が出ない。そのような時に、気軽に立ち寄れるのがワークマンプラスだ。従来の店舗とは異なり、商業施設内の店舗も多いため、女性でも気軽に立ち寄れる。このような新たな顧客層へのアプローチも、ワークマンの飛躍を後押ししていると言える。ぜひ私もワークマンプラスには、足を運んでみたい。
 三点目は、今後の業態展開だ。ワークマンは、ブルーオーシャン市場を見つけることが非常に得意である。市場ポジショニングマップから巨大な空白市場を見つけ、ビジネスを見出している。
 見出したアウトドア市場の空白の中でも、「靴の2プライスショップ」と「雨対策品の専用ショップ」に興味を抱いた。日本では馴染みの深い100円均一ショップのような、分かりやすい価格表示と高品質を目指した靴屋は今までにないだろう。また、3日に1回雨が降るという日本の気候を捉えた、雨対策品の専門店はあまり目にすることはない。ワークマンの防水グッズの実績からも、消費者から信頼を得られるブランドになるだろう。

 最後に、ワークマンの経営は独自の視点を持っており、心配になるくらいのシンプルな考え方や作業効率化が、むしろ今日の複雑化した社会に適しているのだと感じた。
 また、冒頭でも言及したように、ワークマンは今年の東京ガールズコレクションに参加していた。個人的に好きなモデルがワークマンの服をカジュアルに着こなしており、ワークマンへの関心が高まっていた。だからといって、まだワークマンで全身コーディネートを購入するほど身近な存在にはなっていない。だが、新業態の店舗やSNSでワークマンを目にする機会が増えることで、今後ワークマンはより身近で親しみやすい存在へと変わっていくと考える。
 最近では、ワークマンプラスよりも更に女性向けのお店「#ワークマン女子」も開店しているそうだ。本書で得た「しない経営」の要素はどのように店舗に生かされているのか、実際に店舗に足を運んで、本書のおさらいを今一度してみたい。

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ワークマン式「しない経営」を読んで   4年  熊倉千紘

 本社を群馬県伊勢崎市に構える作業服店として有名なワークマン。伊勢崎市は私の地元の隣町であることから、自宅周辺にはワークマンの店舗が非常に多い。そのためワークマンは、私にとって身近な会社だ。しかしワークマンがどのように客層拡大して業績を上げたのか、店舗数がユニクロの国内店舗数を抜いたことなど、身近な会社でありながら、知らないことばかりであることに気が付いた。
 本書は、著者がいかにしてワークマンの組織文化を変えたか、成功体験が立役者の目線から書かれた貴重な実録となっていた。その中でも、特に印象深かった点が2点ある。

 1点目は、製品の使い方はお客様の方が知っているという点についてだ。なんとお客様の異常値(製品の転用術など)を検知するために、開発段階からアンバサダーを起用しているという。特に驚いたのが、それらのアンバサダーに対して一切お金を払っていないということだ。熱いファンを持っているワークマンだからこそ作り上げられる関係性だと感じた。
 実際に YouTube を見てみると、アンバサダー以外にも多くの動画が投稿されていた。その中でも特に多かったコンテンツが製品の品質検証動画だった。防水製品を身に着け大雨の中バイクを走らせたり、防炎製品に火をつけてみることなどで、製品の品質を検証していた。自然と「ワークマン過酷ファッションショー」のようなことが SNS 上で行われていたのだ。
 他にも、アパレル系のチャンネルがワークマンの製品を取り上げている動画が多かった。Instagram ではそれが顕著に表れており「#プチプラファッション」「#ワークマンコーデ」などのハッシュタグと共に、ワークマンの製品を身に着けたコーディネートが複数投稿されていた。これらの投稿からワークマンの製品がファッションアイテムとしても若い世代から支持されていることを実感した。
 このようにワークマンは異常値を検知・調査し、開発段階からアンバサダーを起用することで、本当のお客様視点を得られているのだと感じた。常にお客様と一体で変化、進化し続けているのだ。
 またワークマン関連の動画を視聴していく中で、特に多く紹介されている製品の種類がキャンプ用品であることに気付いた。しかし近年のキャンプの流行から、ホームセンターや100 円ショップも数多くのアウトドア商品を販売し始め、話題となっている。ブルーオーシャン市場を発見し今までライバルがいなかったワークマンであるが、今後キャンプ用品の競争は激しくなってしまうのではないかと感じる部分もあった。

 2点目は、社員をほめて伸ばす、失敗を心から歓迎する風土づくりについてだ。本書では、褒めて伸ばすのが教育の基本、失敗をする人も大歓迎だと記されていた。
 以前 ANA の CA がコロナの影響で三ツ星ホテルに出向している様子がテレビ番組で放送されていた。番組の中で、出向先のホテルの方が CA に対して「できていたら黙っています。褒めませんので。」と明言している場面があった。私はこの場面に違和感を覚えていた。このような指導では、失敗を恐れて委縮してしまい本来の力を発揮できないのではないかと感じていた。
 私は、中学・高校とバスケ部に所属していた。中学の顧問は失敗したら怒鳴るだけ。反対に高校の顧問は、褒めるところは褒め、失敗したら叱りながらも解決策を提示してくれていた。実際に褒める・褒めないどちらのパターンも経験したが、明らかに後者の方が部員はストレスなくスポーツに向き合えることから、モチベーション向上に繋がり結果も伴うようになっていた。場合にもよるが、人は褒められることで苦手意識が薄まり、やる気に繋がるのは確かだ。自分が得意だと思うと人は成長意識が高まる。
 また、ノルマや短期目標は設定しないという点にも驚いた。確かに期限に追われた仕事は、細かい部分に気が付かず、質が下がったり、ミスに繋がることが多い。
 このように社員にとってストレスのかかることを“しない経営”で、社員一人一人の自主性が生まれているのだと実感した。

 本書から、ワークマンの飛躍的な成長は「しない経営」と「エクセル経営」にあることを理解することができた。ほとんどの会社はこの「しない経営」と真逆のことをやっているはずだ。しかし、データ活用教育の進め方やノルマ・社内行事などの社員が嫌がることをしないなど、他の場面でも応用が効きそうな内容だと感じた。
 また、目の前の変化を求めるのではなく、何十年先を見越して行動変容を促すという覚悟が事業を大きくするということを学ぶことができた。今後のワークマンの新事業や更なる成長に注目していきたい。

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ワークマン式「しない経営」を読んで   3年  稲熊隆仁

 私はこの本を読んで重要だと思った点が 3 つある。

 一つ目はこの本の題名にもある、「しない経営」だ。その中でも特に印象に残ったのは、自分達らしくないことはしない、価値を産まない無駄なことはしないという二点だ。特に、他社の戦略はマネしないという点、幹部は思いつきでアイデアを口にしないという部分はサークルの運営にも使えると思った。私は代表としてサークルを立ち上げた際に、運営方針として決めたことがある。それは、サークルへの参加は絶対にメンバーの自由意志だという点だ。当たり前のことだと思われるかもしれないが、新しくサークルを立ち上げる前に所属していたサークルはそうではなかった。月一回の飲み会は基本的に絶対参加、三年生で幹部の代になってもイベントへの参加率によって発言力が決まり、明らかに直した方がいい点があってもまともにとりあってもらえなかった。これに嫌気がさして新しくサークルを作ったのだが、サークルを作った当初は、自分のサークルにしか出せない色は何か、他のサークルとの差別化を図るにはどうすれば良いかを考えるのに全力を尽くした。その結果として、同期は 5 人しかいないにも関わらず後輩は 70 人近くまで増えた。
 幹部で会議をする際にも、ただ話し合うのではなく、一つだけルールを決めた。それは、ただあれをやりたい、これをやりたいといった希望だけを発言するのではなく、ある程度の下調べをした上で提案するということだ。やりたいイベントかあれば、どの程度費用がかかるのか、サークルでそのイベントを運営する際の懸念点は何かなどを軽く自分の中でまとめてから発言するようにしている。サークルを作ってすぐの頃は、毎日明け方の 4 時頃まで会議を行っていたのだが、さすがに授業や就活に響くということでルールを決めた。そうすることで会議を短時間で終わらせることができ、幹部の負担を減らせる。これが幹部は思い付きでアイデアを口にしないという部分に通じていると感じた。もちろんその場の思い付きから良いアイデアが出る場合もあるので、完全に禁止するのではなく、事前に提案しようと思っていることに関しては下調べをさせているため、ここは本書とは異なる部分だ。

 二つ目は、エクセル経営の中にあった、「社員全員が経営に参画するチーム作り」だ。その中で、勘と経験による意思決定を、データに基づく意思決定に変え、誰でも参加できる経営にするという言葉があった。これは、経営する上でデータを活用するだけでなく、その集団を存続させていく上でも重要だ。私の周りには、大学でサークルを立ち上げた友人が数多くいるが、その中で自分達が卒業した後も存続する団体を作れた人は少ない。本書の中にもあったように、属人的な運営になってしまったために存続できなかったのではないか。もちろん一概にこれだけが原因ではないと思うが、サークルを立ち上げた幹部のカリスマ性に頼ってしまっている部分は大きいように感じる。
 私は、せっかく立ち上げたサークルならば自分達が卒業した後も存続してほしいと考えているので、代交代した後も変わらない運営ができるようなシステム作りを意識している。それに関連して、IT 系、情報系幹部をプロジェクトの長にしない、「上司は 50%間違える」と公言するという2つは共感できる点が多かった。IT、情報系の人材がプロジェクトに必要なのは間違いないが、プロジェクトの長や代表にとって一番重要なのはその能力ではない。
 私のサークルの場合、副代表二人のうちの片方が情報系に長けており、データの整理や分析を行ってくれている。もう一つの上司は間違えるという点は、サークル全体ではなく幹部と共有している。筆者は、「私は意見を変える能力が高い」と述べていたが、これを実施するためには一つの前提が必要だと考える。それは、自分に意見してくる相手が自分と同等、もしくは自分以上に有能であることだ。私の場合は、幹部三人の中であれば誰が代表になっても上手くサークルを運営できたはずだと自分の頭の中で納得できるからこそ反論されても素直に受け入れることが出来る。筆者も、部下がデータを活用できると信頼しているから自分の意見を変えられるのではないか。

 三つ目は、経営者は社員の「夢」にコミットしなくてはならないという点だ。その中でも会社の夢を社員が理解することは特に重要だと感じた。サークルにおいて夢や成果を定めるのは難しいかもしれないが、もしこれを設定できれば自分が卒業した後もサークルを存続させることにつながると考えている。
 今回のあえてしないという選択は自分の体験に当てはめて共感できる部分が多く、現在のサークル運営や、社会人になってからもプロジェクトを引っ張っていくうえで活用できると感じた。自分が代表でいられる残り半年の間に、実践を通して今回学んだ考え方を深めていこうと思う。

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ワークマン式「しない経営」を読んで   3年  野口萌々音

 私はTSUTAYAで働いていた。NetflixやAmazonプライムなどの動画配信サービスに市場を着々と奪われ、レンタルの売上は日々右肩下がりの業態だ。私はこの本を読んで、昔のワークマンはTSUTAYAと似ていると感じた。
そこで、ワークマンの成功から、何故TSUTAYAがここまで落ちぶれたのかを3つの角度から考えていきたい。

 一つ目は、「競争相手のいる市場にいかない」ことを徹底できなかったことである。
 そもそも、ワークマン同様、TSUTAYAはライバルが立ち入りづらい業態である。レンタルビデオショップの価値は、豊富な在庫、そして新作映画が迅速に見られることである。そう簡単には顧客が満足できるレベルのレンタルビデオの在庫を取り揃えることはできない。さらに、レンタルを行うには版権元の許諾もいるため、迅速に新作を提供するのにもかなりの苦労がいる。だからこそ、他の業者が簡単に参入できる業態ではなかった。
 もちろん、ワークマンのように一社独占ではなかった。TSUTAYAにはGEOという同業のライバルがいたが、敵はその一社だけであった。そのため、動画配信という違う角度から新たな敵が現れた時に、迅速な対応ができなかった。
 本書でも筆者は、ワークマンはAmazonと戦ったら必ず負けると述べていた。全くその通りである。2社間競争に明け暮れ、安定という甘い汁を啜っているうちに、TSUTAYAが新たな敵に対応する力は残っていなかったのだ。

 二つ目は、データ活用が徹底できていなかったことである。
 私はレンタルビデオの売場作り、そして在庫を管理する担当であった。TSUTAYAは基本的にレンタルの商品はリースの形態をとっている。新作の一定期間は大量にリースを行い、準新作、旧作、それぞれに落ちるタイミングで本部に返送する。その際に店舗用に何本か作品を残す、という仕組みになっている。
 この返送する本数は、完全にそのお店ごとの管理担当に任されていた。この、何本返すか、というのが担当の人間ごとの勘と経験によっている、というのが問題なのではないかと感じた。
 その商品が何回借りられていたか(回転数と呼ばれる)、などのデータは残っていたが、具体的に詳しいデータをいじることはこちらからできない。そのため、回転数だけを頼りに、この作品は人気だった気がするから○本程度残しておくか、という具合なのである。
 ワークマンのようなエクセル経営を実践し、どの様な在庫が他店でどのくらい回っているのか、いらない在庫はどれなのか、を徹底させることが必要なのではないかと感じた。

 そして三つ目はノルマを与えないこと、である。
 TSUTAYAは動画配信サービスに対抗するため、TSUTAYAプレミアムという店舗来店型のサブスクサービスを行っている。月1000円払えば店舗の作品を借り放題にする、というサービスである。このサービス自体は大変良いものだと感じていた。しかし、サービス加入者を増やすため、店舗スタッフにはノルマが課せられたのだ。
 このノルマを達成するため、スタッフごとの獲得数がランキング形式で事務所に張り出され、徹底的にノルマ達成を強いられた。スタッフもノルマを達成するため、明らかにサービスを必要としていないお客様にも積極的に接客を行った。
 これはかえって店のイメージダウンにつながる戦略だったのではないかと感じている。本書239頁でも、「本当に納得していない状況で過大なノルマが課されているので、社員にとっては仕事がまったく楽しくない。」と述べられている。実際に、ノルマが課せられた後は、働いているスタッフの空気も悪くなってしまった。
 過剰にノルマを課すのではなく、自らの意志で業務することが重要である、ということを本書から学ぶことができた。

 最後に、本書125頁には「最高のマーケティングは、自然に売れる製品だけをつくること。」とある。さらに、「社会の役に立たない製品をマーケティング技術で売るのは反則だと思う。」とも書いてある。マーケティングを勉強し、社会人として働く時にはこの知識を生かしていこうと考えていた私にとって、この言葉は大きな衝撃であった。
 私は将来広告代理店で働きたいと考えている。広告代理店の仕事はクライアントからいただいた商品を、マーケティングを使ってなんとしてでも売り込むことだと考えていた。たとえその商品が本当に顧客満足につながるのか疑問に思っても、クライアントを信じて突き進むべきだと考えていた。しかし、この本を通して、その考えは間違っていることに気づくことができた。
 もちろん、クライアントからいただいた製品を社会の役に立たない商品だと一蹴することはしない。その製品がどうしたら自然に売れる製品となるのかをしっかりとクライアントと協議し、いつか最高のマーケティングだと言われる製品を残したいと感じた。

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ワークマン式「しない経営」を読んで   3年  森本万理

 「しない経営」では、掲げた目標をやりきることが重要とされ、“やり抜く力(GRIT)”について述べられている。本書では、“やり抜く力(GRIT)”を伸ばす方法として4つの項目が挙げられているが、これらについて過去の経験を交えて見解を述べていく。

 一つ目は、「小さな成功体験を積み重ねる」ことだ。現在、廣田硝子班の活動では、硝子の動画作成を担当している。細かい作業には自信があり、当初は「完成度の高い動画なんて簡単に作れるだろう」と楽観的に考えていたが、実際は一つの動画の作成に4時間ほど費やし、一人でやるには厳しい現状であることを思い知った。しかし、そこであきらめることなく、今までの楽観的な考えを改め、まずは初心者でもできる簡単な動画撮影から始めた。また、他のメンバーにも協力してもらうことで、最近では徐々に難易度の高い動画を作れるようになってきた。
 初めは苦労した動画作成だが、こうした「小さな成功体験の積み重ね」が、今では「何事も最初から無理だと決めつけず、初心者でももしかしたらできるのではないか」というように物事を前向きに捉え、難しい課題へ積極的に取り組む“闘志(Guts)”となっている。

 二つ目は、「失敗を恐れずチャレンジし続ける」ことだ。接客のアルバイトを初めて間もない頃、お客様のクレジットカードを一日で2回も渡し忘れる失態を犯し、お客様は当然のこと、他のスタッフにも迷惑をかけてしまった。私と同じアルバイトをしていた姉から聞いたのだが、あるスタッフは私のことを“要注意人物”と言っていたらしく、そう思われていることへの恥ずかしさや情けなさから、一時期はアルバイトに全く行かなくなっていた。しかし、負けず嫌いな性格で、いつかスタッフから信頼される存在になりたいという強い思いから、その後は姉からアドバイスをもらい、仕事のできるスタッフを見習うなど、向上心をもって仕事に取り組んだ。その結果、失敗がなくなった上に多くの仕事を任されるようになり、スタッフからの信頼を得ることができた。
 「失敗を恐れずチャレンジし続ける」ことが、困難に直面してもあきらめずに続ける“粘り強さ(Resilience)”に繋がっていると実感した。

 三つめは、「興味があることに打ち込む」ことだ。私の趣味はピアノや、今でも習い続けている書道が挙げられる。かつてはダンスやスイミングなどを習っていたが、これらは親に勧められて嫌々通っていたため、全く関心はなく消極的で長続きしなかった。一方で、昔から何かを創作することが好きな私にとって、曲を完成させることや、字を美しく書くことにとても魅力を感じたため、ピアノや書道は自分から進んで習い始めた。飽き性で面倒くさがり屋な私でも、自分がやりたいことだからこそ自ら積極的に取り組むことができたのである。
 このように、「興味があることに打ち込む」ことが“自発的(Initiative)な行動”を促しているのだと思う。

 四つ目は、「やり抜く力がある人のいる環境に身を置く」ことだ。高校三年生の頃、大学受験が本格的に始めったにも関わらず、勉強に全く力が入らなった。しかし、そんな自分とは反対に、毎朝勉強をしている友達を目にした際、さすがに焦りを感じ「私も彼女のように真面目で努力のできる人にならなくてはいけない」と改心した。そこで、彼女とともに登校し、朝から勉強せざるを得ない状況に自分を追い込むことで、最初はつらかったものの、一日も休まず朝学習に励むことができた。
 やり抜く力がある人がそばにいる環境に自ら飛び込み、ともに過ごすことで、最後までやりとげる“執念(Tenacity)”を身につけられたと感じる。

 過去に経験した以上の4つの項目によって、“やり抜く力(GRIT)”を少しは習得できたのではないかと思う。今年から始まった就職活動はもちろんのこと、社会に出れば数多くの課題に直面し、それをやり抜くことが成果につながるため、“やり抜く力”は生きていくうえで必要不可欠である。そのため、今後は4つの項目を数多く経験し、より一層“やり抜く力”を伸ばしていきたいと思う。