健康博覧会(2011年6月8日): 講演レジュメ「オーガニックビジネスの現状と今後 市場規模調査からの報告」

 健康博覧会2011で、記念セミナーを依頼されている。明日、午前中の講演である。311でいったんは延期になっていた。事務局に提出したレジュメを添付する。めずらしく内容がなかなかよろしい(笑)。今週は、憲政記念会館でOMRセミナーもある。参加者が500人。

2011年「健康博覧会」講演資料
「オーガニックビジネスの現状と今後 市場規模調査からの報告」
日時: 6月8日(水)
場所:東京ビッグサイト                        
講演者:小川孔輔(法政大学大学院教授、日本フローラルマーケティング協会会長)

<レジュメ>
世界的に急伸するオーガニックビジネスの現状を、食の安全性と環境問題の深化を背景に、日本のオーガニック市場を調査した。その結果をもとに、日本における有機食品市場の現状と将来を展望する。本調査(オーガニック市場規模調査)の結果をもとに、わが国のオーガニック市場の問題点と通販・店頭ビジネスの将来についても言及する。
 
1 日本の消費者市場の特徴
(1)オーガニック、特別栽培、エコファーマー等の認知度
(2)有機食品に対する満足度
(3)情報の入手経路
(4)日本の消費者は「利己的要因」が強い

2 消費者市場を拡大するための対策
(1) オーガニック食品の購入と利用の機会を増やす手法
(2) 中食、惣菜などでの展開の可能性
(3) オーガニックの惣菜挑戦
・ MWO認証制度の導入、プロセスセンターの展開など

3 農業生産者の視点から
(1) 生産者の環境意識(安全なものを提供したいという意識)
有機農家の21%は、農薬による直接的被害の経験
(2) 新規就農の生産者はオーガニック
有機農業者の25%は新規就農
有機農家の58.5%は後継者がいる(慣行農家は17.6%)
(3) 次世代を担う日本農業の主役はだれか?

4 小売と流通の問題点
(1) 有機農産物(オーガニック食品)が小売店頭に置かれていない
(2) そもそも「売り場生産性」が低い → 解決のための条件とは?
 小売業者(流通業者)の意識が低い
→ オーガニックはもうからない、そもそも青果売り場の利が薄い
(3) 消費者にきちんと情報が伝わっていない
(4) 値段が高くなるのは、ロス率が大きすぎるから
(5) 品揃えが不十分で、数量がそろわない

4 生産と流通のギャップをどのように埋めていくのか 
(1)「安くて」「よいもの」が提供すること
(2)社会性とか環境への配慮=他者への「共感」
(3)政治的な解決(補助金や税の優遇措置)に訴える

5 環境と政策からの論点整理
(1) 海外に負けない農業
・ 国際競争力(TPP問題)
・ マネジメント能力の向上
・ マーケティング力のある農業
(2) 国土保全と環境保護
・ 中山間地、里地を保護する有機農業(40%は中山間地)
・ 日本の原風景の保護 → 海外の観光客への観光資源としての価値
・ 森と海の関係 → 森林資源や海洋保護としての
(3) 擬似提携システムの提案
・ 「市場の解」以外の観点から
・ 有機や特別栽培の制度はわかりにくい

6 オーガニックマーケット5年で3%ということは可能か
(1)0.2%からの出発(拡大は15倍)
方略1:オーガニックを広く定義すること
(MWO)を含むような緩やかなオーガニックの基準
オーガニック運動の「漸進改良主義」
方略2:加工産業の育成と技術の革新
  精神的な運動論から、科学的な産業育成論への転換を!
「ロジスティクス」「定量的」「科学的」に
方略3:ジョイントプロモーションを展開すること
(レストラン、中食、食品スーパー、ネット企業などで)