「アジア元年」(2011年、JFMAの新年賀詞交換会、スピーチ原稿)

 『JFMAニュース』2011年1月10日号の巻頭言を、事前にブログにアップしてしまう。以下の原稿は、JFMAニュースの新年号「アジア元年、業界基盤の強化と後継者の育成」の巻頭言であり、1月17日に開催される「JFMA新春賀詞交換会」のスピーチの内容である。

 新しい年を迎えて、JFMAの10年先を考えている。創立時に策定したタイムテーブルによると(小川メモ)、今年は「アジア元年」になる。J(JAPAN)―FMAを、A(ASIA)―FMAにするときが来ているように思う。「米国の本家(Floral Marketing Association)がいまは存在していないのだから、親の名前をそのまま借用して、FMA(フローラルマーケティング協会)にしてもよいのではないか」(守重副会長)。
 2011年、「アジア元年」に向けてなすべき課題を、以下で示すことにする。

(1) 国内業界基盤の強化
  アジアの盟主(センター)になれるためには。日本の産業基盤を強固なものにしなければならない。脆弱な国内基盤のままでは、日本が「アジアの中心」にはなりえない。IFEX(国際展示会)もMPS(環境認証子会社)も、そのために作ってきて仕組みである。IFEXをアジアの「拠点見本市」のままで維持するためには、国内産地とアジアの生産基地を、育種や栽培体系的に一体化して考えるべきだろう。生産者にとっても市場人にとっても、また、育種会社や育種家にとっても、もはや日本だけを活動領域と考える時代は終わったように思う。
 オランダ人は、アフリカ大陸と欧州大陸をひとつのものとして考えている。同様に、わたしたち日本人も、アジアをひとつの大陸市場と考えるべきだろう。そして、引き続きだが、「日持ち保証」と「MPS/CFP」を軸に、小売(花と資材)と物流の課題に挑戦していってみたい。

(2) 次世代後継者の育成
 設立から10年が経過して、理事会のコアメンバーは10歳ほど年齢が上がってしまった。そろそろ若い世代に仕事を託していく準備をするときを迎えている。幸いなことに、例えば、MPSに加入している若手の生産者や、日持ち保証販売に協力してくれている市場・小売業者の若手の中から、次の世代を担ってくれそうな後継者が育ちつつある。
  また、今年からはじまる「フラワーバレンタイン」(2月14日を男性から女性に花を贈る日に!)の推進委員会ワーキングチーム(略称、FV・WT)で活躍している若手(小売と資材関係)の中には、花業界の未来を担える人材が多数いる。そのことを知ったことは、わたしのような設立メンバーとしては、うれしい限りである。

(3) 他業界とのコラボレーション
 わたしは、2020年から先の10年間(第3期)は、JFMAが花業界から飛び出していくことになると予見した。そのタイミングが、思ったよりも早く到来するかもしれない。今年からMPSは、韓国や台湾など、アジアの国に出て行く。昨年度からは、制度としては、野菜や果樹を扱えるようになった。業界と地理的な境界が拡大していくのはまちがいない。
  フラワーバレンタインの動きは、花業界が他の業界(メディア、アパレル、食品など)と接点を持つ場を増やしている。そもそも資金力のない中で、プロモーションを実行するには、他業界との協力が必要である。コラボレーションのその先には、花が売られる場所として、従来からの花店ではなく、その他小売業態での販売が控えているように思う。

 (0)アジアへの地理的展開と(1)~(3)は、わたしたちが目指すべき目的ではない。あくまでも手段である。わたしたちの最終的なゴールは、
 ①(顧客価値の向上)ひとびとを幸せにするために、花のある生活をもたらすこと、
 ②(従業員価値の向上)生産性を上げて、花の業界で働くひとたちの生活を豊かにすること、
 そして、
 ③(業界人としてのプライドの醸成)花の仕事に携わっていることを誇りに思える業界に変えていくこと、である。