半年振りで焼肉店の「牛角」に行った(K店)。久しぶりなので美味しかった。相当にメニューの内容が変わっていた。細かな意見はあるが、二人で8200円。味と値段のバランスを考えると悪くはない。しかし、帰り際に「ご意見を」というので(千円引きになるから!)、感想を自由に書いてきた。
いつもわが家の伝統は、コメントがシビアである。わたしたちが書いていたアンケートの答えを見ていた店の男の子が、驚いた様子をしていた。その理由は明らかだった。
コメントしたのは、値段のことでも、メニューのことでも、接客の良し悪しでもない。店員の皆さんは、感じのいい子たちだった。ちょっと反応は遅かったが、きちんとサービスには対応してくれていた。
問題は、お店のクレンリネス(清潔度)にある。半年前に来店したときに、すでに店の壁が汚れていた。それがまったく直っていないのである。
この店(他店はわからない)は、客席と客席の間が、ロールカーテンのスクリーンで仕切られている。そのスクリーン(たぶん最初は白色だった)が焼き肉の脂で汚れているのである。
サービス業の基本である。Q(品質)、S(サービス)、そして、C(清潔度)である。どんなに値段が安くても、どんな商品がよくても、最後の「クレンリネス」がだめだと、いずれ優良顧客は離れていく。おそらくは、この店のトイレは、きれいに掃除されていないだろう。そのように客は思ってしまうのだ。
レインズは、一時期、成城石井やam/pmを傘下におさめていた。メニューの刷新や安さの演出もすばらしかった。最初に訪問したのは、「花良品」(MUJIの花の子会社)の阿部さんと一緒だった。そのときは、調査の学生たちも一緒だった。たしか6~7年前である。その後も、ときどき牛角を訪れている。
しかし、あのときの気持ちを牛角の経営者は忘れかけているのではないだろうか?清潔さを忘れたサービス業は衰退する。よく見て欲しい。どんなに経営が苦しくとも、店舗の清潔度は、サービス業の生命線である。店を汚くしてしまえば、客だけでなく従業員の働きぶりがいい加減になる。
自分のふだんの生活のことを考えてみるとよい。部屋のカーテンを、誰が脂で汚れたままにしておくだろうか? べとべとの部屋の壁やカーテンでは、寝つきがわるくならないだろうか?
それと同じことである。自分が働く職場を、汚れたままにしておく従業員と経営者の心がわたしには信じられない。K谷の店長は、どのように感じているのだろうか?
以下は、それと関連した、自らの反省の弁である。
先週、わたしが校長をしている「法政大学専門職大学院・IM研究科」の校舎の女子トイレについて、ある女性教員から意見が出た。本校が、女子学生を増やそうとしている矢先であった。「トイレの蛍光灯がうす暗い。お化粧をするときに、黄色で顔がくすんで見える!」
わたしは男性なので、女子トイレには入ったことがない。入ったことがあったらかなり怖いのだが、隣の男子トイレの蛍光灯も、たしかにそれほど明るくはない。そうだとすると、これは大問題である。社会人女性の大学院志願者が、トイレに入ったとたんに、入学の意思を翻意するかもしれない。
つまらないことではないと、わたしは思う。毎日の生活がかかっている。大学院の女子生徒も、入学したら、一日に一度はトイレに入るだろう。あの場所で、お化粧を直すこともあるだろう。鏡に映った自分の顔が、、、くすんで見えたら、、、
わたしは、この話を聞いて、すぐに事務の男子職員に指示を与えた。「女子トイレの蛍光灯をもっと明るいものに取り替えるように」。
そうなのだ。牛角の店の壁や席を仕切りるスクリーンと、法政大学のトイレの蛍光灯は、ある意味では同じメッセージを発している。そこに来店して食事をする人を、そこで学ぶ人を、その組織が大切に考えているかどうかである。
答えは明らかである。自分たちが働きたくなる職場環境を、その組織が提供できているかどうか。トイレはごく小さなことのように見えるが、本当は大切な場所である。わたしたちが毎日、行く場所だからである。