「チェーンストアエイジ」から、バイヤー向けのアンケート調査に対するコメントを求められた。ダイヤモンドフリードマン社が、毎年実施している食品スーパーのバイヤー向け調査である。昨年までは、東洋大学の住谷先生が執筆を担当していたらしい。千田編集長からの頼みなので、一回だけということで引き受けることにした。
せっかくだから、今回の原稿作成プロセスには、ちょっと工夫を凝らしてみた。リサーチアシスタントの青木恭子と一緒に、調査結果の集計表を見ながら、その場でコメントを書いてしまおうというものである。わたしとしては、はじめての口述筆記での原稿作りの試みである。
来年早々に予定されている『ブランド戦略の実際(新訂版)』日経文庫の作成では、口述筆記を予定している。その練習の意味もある。ちなみに、回答者は、約100人である。生鮮品の担当が30%。グローサリーと日配品のバイヤーが多い。
完成原稿は、質問項目を含めて、全6ページになった。途中に電話がはいったりしたが、昨日の午後、約3時間で書き上げてしまった。設問が全部で24問あった。それぞれに対して、順番にコメントを付していった。細かいグラフなどは、HPに掲載できないが、その結論(最後の総括コメント)をアップしておく。詳細は、来年1月号のチェーンストアエイジをごらんいただきたい。
<バイヤーアンケート調査、全体の総括>
本調査の結果は、リーマンショック以降のデフレ経済下でのバイヤーの業務環境を反映したものであった。仕事内容については、限られた時間のなかで、多様な仕事を同時にこなすことを要求されている姿がうかがえる。
商品開発や品ぞろえの改善について、経営陣から求められる要求は厳しそうである。にもかかわらず、メーカーとの交渉や情報収集に苦戦している様子がうかがえる。自らの業務改善や創造的な仕事の達成には、絶対的な時間の不足とメーカー・卸や自社他部門との連携が必ずしもうまくいっていないという悩みを抱えている。
しかしながら、小売バイヤーの仕事を取り巻く環境は大きく変わりつつある。大きくは三つのトレンドを調査から見てとることができる。
(1)売上高達成から利益志向へ
経営陣がバイヤーに求める評価基準が、売上予算の達成よりも粗利額や生産性に変わりつつある。右肩上がりの成長を小売業自身が期待できなくなったからではあるが、その一方で、提案型の商品開発が求められているからであろう。
(2)ガンバリズムからクリエイティブに
バイヤーに求められる資質は、したがって、ガンバリズム(2008年度調査の結果)や長時間労働ではなく、クリエイティブな発想やそのための情報のインプット(学習や研修)である。バイヤーもそのことを明確に認識していることが、今回の調査からもわかった。
(3)メーカー・卸との関係に変化
商談に関する回答をみると、相反する回答傾向がみられた。一方で、メーカー・卸から小売りバイヤーへの提案やサポートが不足していると彼らは感じている。他方で、メーカー・卸との商談内容は、価格やリベートよりも、開発商品や品ぞろえに話題が向いている。小売バイヤーとしては、単独ではなく、PB商品やSB(ストアブランド)開発で、メーカーとの提携関係を深めていきたいと感じている。