法政大学社会科学研究科大学院 特別講義のレジュメ(2009年7月18日)

大学院での特別講義(先月の7月18日)で配布したレジュメをアップします。ふたつのことをお話しました。具体的な内容については、いつか機会があるときに、きちんと文章として残しておきたいとおもっています。場所は、@IM研究科401号教室でした。


解題1:小川孔輔(2009)『マーケティング入門』日本経済新聞出版社

日本人研究者として、「恥ずかしい、悔しい」という思いが、
この分厚いマーケティングの本を書く気持ちを持続させた

1 なぜ、800頁の本を書こうと思ったのか?
  ・日本人と米国人の知的体力格差
  ・日本のマーケティング学会と実業界
  ・社会人の学習ニーズと学生の勉強スタイル
    →(まじめに)、日本人の大学教員は教育をさぼっているのではないか?
  ・本当に、薄っぺらな本にニーズがあるのか?
    →チャレンジ! 分厚い英語の本はかっこいい!
     日本語でも、もしかすると、分厚い本のほうがもっていて、かっこいいかも。
  ・どうせやるな、日本でナンバーワンになりたい!
     隠れた動機:34歳で教授になってしまったこと
           圧倒的に勝たないといけない立場に

2 どの部分を読者に読んでほしいのか?
  ・第1章「マーケティングの仕組み」
   序章を「流通・サービス業」と「B2B宅配企業」ではじめている
  ・第2章「マーケティングの発達史」
   誰も書かなかった「マーケティングの歴史」
  ・第7章「マーケティング・インテリジェンス」
   短縮版(約束未達成)
  ・第15章「小売業の経営」
   わたしの好きな分野 フィールドワーク
  ・第18章「マーケティングの社会的な役割」
   静脈流のマーケティング
   ポストモダン消費者行動
   食品と農業のマーケティング

3 執筆の楽屋裏
  ・本には明示的に書いていない特徴
   読みやすい、飽きない(コラム)、辞書にもなる(索引)
  ・文章を読みやすくしてある(はず?)
   米国では、実際は「ライター」が手を入れている
   自分をライターとして訓練せざるをえなくした
   「小川町物語」の執筆と並行作業(隔週でテーマを変える)
  ・原稿を速くあげるための工夫
   HPでコラムを書きためておくことにした(10年間)
   大学院生とゼミ学生のリサーチ成果を借用する
  ・骨格は3年前からできていた
   あとは、肉をつけていくだけだった!
  ・苦しかったこと
   一人で書くことの孤独感
   なぜ完成できたのか? → フルマラソンの苦しみに比べれば
   「いつでも止まってもいい!」と自分に言い聞かせたこと

解題2:「小川町経営風土記」『チェーンストアエイジ』(22回連載)
     人は、まったくの偶然に導かれて生きている
     しかし、充分に用意周到でないと、女神はあなたにほほ笑まない

1 ずっと遠いきっかけ
  ・17歳の時に、「物書きになりたい!」と思った
  ・でも、実家は、商家(呉服屋)であった
  ・文学=「霞を食って生きること」など、ありえない
  ・結局は、経済学部に行くことに(しかし、マーケティングを専攻する)
  ・30年間、その機会が来るのを待っていた
 20年前の証人
  嶋口先生(当時、KBS)、石井先生(当時、神戸大学)

2 遠くの偶然
  ・物語コレクション活動
   多くの企業のしごとを引受け、たくさんの経営者と仲良しになった理由
   ノンフィクション小説の対象は、どの企業でもよかった
  ・昭和52年9月 IY藤岡店の出店影響度調査
   本庄児玉にあった「ヤオコー児玉店」(7号店)の前を通りかかる
   二階がしまむらだった(やはり7号店)
   店長は、しまむらの伊藤孝子、ヤオコーは滝沢勝男(第21回に登場)
  ・2001年11月
   ヤオコー青果部長(ゼミ3期生)の塩原くんから電話あり
   「花の担当になった」ので、アドバイスがほしい
   ヤオコー川野会長(当時、社長)と面談
   →「小さな町から、3つの優良企業が生まれていること」を知らされる
   しまむらが児玉店の二階にあったこと、小川信用金庫の破たん(1999年)
  ・この話を、ダイヤモンドフリードマン社の千田編集長に
   「先生、いつか「小川町物語」を書きましょうね」
   7年後の約束実現は・・・

3 偶発的な事件
  ・2007年12月31日
   30年ぶりで児玉店(跡地)を訪問
   しまむら小川町店で、伊藤孝子さんに会う(偶然だった)
  ・しまむら創業者の島村恒俊オーナーを紹介してもらう
   「昔のことなので、20年前に引退しているので・・」
   その日のうちに、オーナーに宛てて手紙を書く
  ・その後は、偶然が重なる
   芋づる式に、登場人部たちとインタビューが可能に
  ・一年間のサバティカル
   10年間温めてきた、ふたつの仕事を完了させるべく・・・
  ・そして、昨日、ふたつのプロジェクトが同時に終わった

メッセージ3: 自分の未来を設計するときに考えてほしいこと

  ・継続は力なり 物事を投げずに、思い続けること
  ・金よりも情報 そして、記録をきちんと残しておくこと
  ・友人をたくさんもつこと 批判的な友人こそが大切
  ・何事に対しても、謙虚であること
  ・未来は計画できる
 そこに到達したいと思えば、実際に行けることが多い