去年の夏から、IFOAMジャパン/FTPS/法政大学小川孔輔研究室/MPSフローラルマーケティング㈱/㈱グリーンハンドが共同で、「Organic Market Research」のプロジェクトを組織した。日本のオーガニック・マーケットの市場調査をやろうということになったからである。らでぃっしゅぼーやの創業者で、現在FTPS代表の徳江倫明さんとの共同プロジェクトである。
徳江さんと一緒に、「オーガニック・データブック2010」(有機・環境配慮型の農産物関連市場)のデータを作ろうという話から、「オーガニック・マーケティング協議会」を組織することになった。オーガニック市場を拡大するためのNPO的な協議会組織である。当面は、「Organic Market Research 2010」という市場調査に協賛をお願いして、オーガニック・マーケティングの協会作りに向おうとしている。
以下では、徳江さんの檄文を紹介する。ご賛同いただける方は、小川の秘書(福尾美貴子)まで、ご連絡をお願いします。
法政大学小川研究室:東京03-3264-9732(月・水・金・直通)
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「オーガニック・マーケティング協議会 発足にあたって」(徳江倫明)
●百年に一度の好機
グローバリズムという名のもとに世界を席巻した経済至上主義は、まもなく別のパラダイムへとシフトするでしょう。今こそ私たちは、農耕民族としての日本人の生き方を根底から見直す時代に入ったのです。それは、日本の地域のあり方、ひとりひとりの生き方を見直すことでもあります。刹那的な物質欲を満たすために漫然と食べていれば、間接的に生態系を壊し、環境と地域を汚し、そして終には地域と社会が自滅します。私たちが遭遇している百年に1度の経済危機こそ、その気付きの絶好の好機なのです。
●オーガニックという選択
単に食の安全に社会的な危機感を覚えたから、『農業』に注目が集まっているのではありません。生命を作り育て、それをいただくことによってのみ循環する「生命の繋がり」を、人間のもっている太古からの生理的な智恵が求めているだけです。
そのひとつの象徴として『オーガニック』があります。オーガニックとは、農薬や化学肥料を使わない農作物のことだけではなく、地球上に生きるあらゆる生命が共生できる道を探るひとつの手法であり、哲学であり、持続可能な経済活動です。その基盤となるのが有機農業であり、生物多様性の保全を図りながら、生態系のなかで永続的にいのちを分かち合う活動なのです。
「農場は、それ自体ひとつの生態系である」とシュタイナーが言うように、生態系と農業が共存できることは、すでに日本では30年以上も前から数多くの先人達によって研究され実践されてきました。高温多湿のモンスーン地帯という条件だからこそ農薬や化学肥料が絶対に必要であるといわれていた時代に、その智恵と技術は世界各国で豊かで安全な実りを実現してきました。
●飛躍的な拡大を目前にしているオーガニック市場
EUとアメリカのオーガニック・マーケットはそれぞれ約2兆円規模にまで成長し、マーケットシェアではドイツ・イギリス・アメリカで約3%規模に達しました。2010年には世界で約6兆円のマーケットになると推定されています。しかし日本では生産から加工、流通、研究教育、各種団体、行政、そして消費者までを体系的につなぐオーガニックのネットワークが未だに存在せず、さらにはその市場の実態さえ、ほとんど掴めていません。
●日本におけるオーガニック・フード・チェーンを確立するために
そこでIFOAM(国際有機農業運動連盟)の日本会員であるIFOAMジャパン、法政大学小川孔輔研究室を中心に関連企業の有志によって『オーガニック・マーケティング協議会』の発足を呼びかけております。日本におけるオーガニックはもはや農業生産者単独の課題ではなく、流通や消費者を巻き込んだ総合的なマーケティングと結びついて初めて、飛躍的な拡大への第一歩を獲得します。このような「オーガニック・フード・チェーン」を確立するために、生産者から各流通、消費者までそれぞれの分野がいま何を求めているか、何をすればオーガニック市場が拡大するか、常に最新の情報と意見を共有、交換しながらそれぞれのオーガニック・ビジネスに貢献することができる『場』となるよう、積極的な活動を推進する予定です。
その最初のプロジェクトが、オーガニック・マーケットの総合調査『OMRプロジェクト』です。各位の賛同、協力が必須です。百年に一度の好機をともに分かち合い、オーガニックな社会の実現に一歩でも近づけるよう、ここにお願い申し上げる次第です。
2009年3月
オーガニック・マーケティング協議会 代表
徳江倫明
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「オーガニック・マーケティング協議会とは」
農産物を中心にしたすべてのオーガニック市場にかかわる、あらゆる業種・業態を有機的につなぎ、日本におけるオーガニック・フード・チェーンの体系的な確立をめざす非営利の協議会です。オーガニックに関するすべての情報の共有と提供の『場』として位置づけます。
オーガニック・マーケティング協議会の活動
まず最初のプロジェクトは、現状把握のための総合的な市場調査です。有機JAS認証を受けていないオーガニック生産者も含めた最新の生産状況から加工、流通、消費者までのフード・チェーンがオーガニックをどのようにとらえているのかを、総合的に調査します。その後は、以下の活動を予定しています。
●WEBでの情報公開とオーガニック・ポータルサイトの開設
●定期的なシンポジウムや講演会の開催
●生産者と消費者をつなぐ啓発活動やマーケティング支援
●オーガニック技術の公開と教育・研究活動
オーガニック・マーケティング協議会を支える団体・個人
種苗関連企業、農業資材・肥料関連企業、食品加工メーカー、輸入関連企業、流通販売関連企業、飲食関連企業、衣料関連企業、化粧品関連企業、財団・NPO団体、有機認証団体、消費者団体、行政機関、研究機関、学校、農産物生産者、畜産物生産者、農業・畜産指導者、飲食店経営者、そして消費者。
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最初のプロジェクトは、オーガニック・マーケット総合調査から
●日本のオーガニックはどうなっているのか?
有機JAS法が制定されて9年が経過し、有機農業推進法が制定され3年目をむかえました。その間、数多くの食品事故を受け、消費者の食品に対する関心度がますます高まっていますが、日本における有機農産物・特別栽培農産物などに関する信頼できるオーガニック・マーケット情報がいまだ存在していません。
●はるかに進んでいるEUと韓国のオーガニック市場
IFOAM発表の統計によると2006年のEU加盟国の有機栽培面積は740万ha。これは全農地の約4%に当たります。ヨーロッパはオーガニック食品の最大で最も洗練された市場であり、その規模は2006年で約200億ドルに達し、成長率は20%前後を保っています。
韓国では EUと同様の有機農業を財政的に支援する環境支払い所得補償制度を導入。有機農業の全農地に占める割合は2006年で日本の7倍以上に当たる1.46%にまで成長し、オーガニック食品市場は年率30~40%での成長が続いています。
●今後のマーケットに不可欠な総合調査
世界的に見れば、日本におけるオーガニック・マーケットはまだまだ黎明期であり、今後、飛躍的に成長する余地が十分にあります。わが国におけるオーガニックの未来は、有機農業をサポートしてくれる消費者の選択にかかっていますが、そのためにもオーガニック・マーケットの総合調査は不可欠です。
この調査によって、研究機関・行政機関・民間企業との連携によるオーガニック・マーケット拡大に関するさまざまな政策提言をまとめ、社会的ムーブメントにまで発展させられるよう、このプロジェクトを立ち上げました。