花は夜に売れる?: 地方スーパーの営業時間延長効果

 百貨店や量販店が前年比で売上げを減らしているのとは対照的に、地方スーパーの中には売上げを伸ばしている中堅チェーン店がある。首都圏で好調な食品スーパーは、マルエツ、ヤオコーなどである。CGC系列の地方スーパーでも、目立たないけれど売上げを伸ばしているところがいくつかある。


地方スーパーでは、商品構成の7割以上が食品である。不況期には「食」が商売として安定していると言われるが、マクドナルドや吉野屋などのファーストフードはこの数年は減収減益である。
 すかいらーくをはじめとして、ファミリーレストランは全般的に不調である。なぜ、一部の地方スーパーだけが好調なのだろうか?
 地方スーパーが増収増益である根拠は、(1)地元密着型の営業姿勢と(2)営業時間の延長に求められる。とくに最近では、駅前立地の店舗では、終電がなくなる深夜24時ごろまで営業時間を伸ばしているケースが普通にみられるようなった。24時間スーパーも増えてきている。
 大店立地法の改正で、具体的な営業時間などの運用ルールについては、許可制ではなく届け出制に変わったことが大きい。ちなみに、隠れた敗者がコンビニであるのはご存じだろうか? 深夜までスーパーが営業を続けていることで、「補充買い」や「ついで買い」の消費者ニーズをコンビニが失っているのである。どうせ店が開いているのであれば、定価販売で品数が限られるコンビニではなく、品数豊富で値段が安いにスーパーに買い物に出かけるだろう。こんなご時世だからとくにそうである。
 それでは、夜遅くまで営業時間が伸びたことで、スーパーの花の売上げはどのように変わるだろうか? 結論を言えば、営業時間の延長は、売上げ・利益に対してともにプラスに働くと考えられる。
 第一には、小売店の売上げは「来店客数」と「客単価」のかけ算で決まるが、花については、両方の要因でプラスの効果が期待できる。営業時間が伸びたことは、来店チャンスを増やす。一般的に、日本の地方スーパーでは現状、来店客の約0.6%が切り花を購入すると言われている(2001年度、CGC調べ)。この比率が変わらなくとも、客数が増えることで花の売上げは間違いなく伸びるはずである。
 第二には、それに加えて、夜の営業時間帯では、花の売上げを増やせる要素がある。店内が混み合っている夕刻時とはちがって、消費者の気分はゆったりとしている。色彩的に目に入りやすい花は、衝動買いが誘発できる環境にある。夜間には花の色が鮮やかに見える傾向があるからである。
 第3に、食材だけでなく、その他の商品を検討してみる状態にあれば、買い物かごに花が一点多く入る可能性が高くなる。例えば、混雑した電車を乗り継いでいくことを考えると、手で抱えにくい花束は商品リストから外されてしまう。ところが、電車が空いていれば、この制約はなくなる。あとは、どのように買いたい気になるように、花の売場を作るかであろう。
 なお、利益への貢献を考えると、営業時間延長はさまざまな点でプラスに作用する。まずは、値下げしてからの販売チャンスが増える。例えば、かつてのように8時が閉店時刻であれば、商品を早めに見切らなければならない。それに対して、24時まで営業ができれば、販売時間が伸びるのでロス率は低減する。
 人員の配置面でも営業時間の延長は有利である。花の売場のように専任がついていない場合は、手待ち時間での管理に頼ることになる。その点でいえば、シフトに入った要員のの空き時間で売場が見てもらえるので、商品の管理や発注がしっかりとできる。商品の搬入時間も自由になるので、良い商品がジャストインタイムで入荷でき、商品管理が行き届くようになる。
 以上、深夜営業の一般化、休日日数の減少は、英国のスーパーで花の売場が充実するようなった重要な要因でもあった。日本では、花売場の商品管理ではノウハウの蓄積が遅れてはいるものの、今後は期待の持てる分野だと考えられている。『MJ』(日経流通新聞)や『チェーンストアエイジ』(ダイヤモンドフリードマン社)など、流通関連の雑誌や新聞などでは、スポットキャンペーンではなく、レギュラーで頁を割いて、「花のMDコーナー」(バイヤーへの商品知識と情報提供)が生まれている。商品としての花にとっては明るい話題である。