東京農業大学の今西英雄教授が『チューリップの絵本』(農文協)という児童向けの本を出版された。「うらやましい!」 というのは、研究者になりたての頃からわたしにはひとつの夢があって、いつか年齢を重ねたら子供向けの本、例えば、童話を書きたいと思っているからである。
今西先生の絵本は、子供の素朴な”なぜ”に答えている良書である。ご存じの方もいらっしゃると思うが、今西先生は、大阪府立大学の農学部長時代に、日本園芸学会長を務められた、この道の世界的な権威である。球根学の達人が、子供たちのために本を書くことはすばらしいことだと思う。
是非とも書店で購入してお読みいただきたい。とくに、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭にはお勧めである。
チューリップの絵本は、36ページ見開きのハードカバーである。内容は、球根の歴史から説きはじめて、チューリップの育て方(案外知らないことが多い)、球根の病気(ウイルス対策)のこと、早咲きの仕組み(アイスチューリップ)などを、子供にもわかるように丁寧に説明してくれている。交配したタネからチューリップを育てるには、長い時間(5年)がかかること。チューリップは毎年いち枚だけ葉を出して、6年目にはじめて小さな花をつけることを皆さんはご存じでしょうか?
そういえば、経営学の分野でも、自らすすんで子供向けの仕事をしている有名な先生がいた。慶応大学ビジネススクールの嶋口充輝教授(マーケティング論)は、5~6年前になるが、教育テレビで小学生向けの社会科の番組に出演していた。いまはどうなさっているか知らないが、嶋口先生は、番組の企画制作にタッチしていることを誇らしげにお話しになっていた。そのとき、わたしにはよく理由がわからなかったが、今西先生の本を見ることになって、嶋口先生の思い入れにいまは納得ができるような気がする。
50歳ぐらいで、研究者は本当の意味で教育に目覚めるようである。企業経営者も同様な傾向があるように見える。50歳を過ぎてから、はじめて部下を育てることが大切であることに気がつく。自分が去った後に残された事業の将来、自分の人生の時(とき)を慎重に計るようになるからだろうか?