日本の花き産業はいま、史上最大の危機に > その緊急の解決策は

 福島県昭和村のかすみ草農家、菅家博昭さんからメールをいただいた。10日ほど前のことだった。「かすみ草ニュース」というメルマガが届いた。それは、花き農家の窮状と、市場の需給調整メカニズムが機能不全を陥っていることを訴える手紙だった。めずらしく深刻な様子だったので、直接電話で連絡をとってみた。

 

 花業界の関係者が嘆いているのは、一様に「価格低迷の理由がよくわからない」ということだ。菅家さんのコメント(村上さんの仕事の紹介とその解説)が、きちんとその理由を説明している。

 

 ・「村上さんは、新規商品を毎月投入していかなければ、消費者にも生花店にも卸にもあきられる、という。そのため売り場での陳列方法や取り扱い方法、価格、、、P O Pを含め産地がMD(マーチャンダイジング、商品政策)を作って提示しなければならない」

 ・「輸送費値上げで旬を演出してきた草花類が無くなり、小売店店頭に魅力が無くなり、消費者が買わなくなった」

 以上の二点である。示唆に富む指摘である。しかし、誰かが解決方法を提示しないと、花の業界が沈没してしまう。このままだと、日本から旬の花が消えてしまう。その危機が目の前に迫っている。

 

 かつては、JFTDのキャンペーン(母の日など)、「花の国日本協議会」を中心とした「フラワーバレンタイン」「ウイークエンドフラワー」、日比谷花壇発の取り組み(「いい夫婦の日」など)など、業界をあげてのプロモーションは実施してきた。しかし、それと連動した店頭マーケティング(マーチャンダイジング)は、実のところはほとんど手が付けられていない。

 個別の企業(青山フラワーマーケット)は、旬の花の演出で新しい顧客を開拓し、全国に店舗網を増やしてきた。ところが、一般の顧客の関心を引き付けるには、花の業界として、どのような花をプロモートすべきかの仕掛けが必要である。

 JFS(ジャパン・フラワー・セレクション)やFOY(フラワー・オブ・ザ・イヤー)で顕彰される品種がビジネスの舞台には上がっていない。商売ネタになっていないことが問題なのだ。海外では、その逆である。社会的に選別された花は、業界あげてプロモートしてもらえる。だから、「姿形が美しい花」が優先されるのではなくて、下品な言い方ではあるが、「金になる売れる花」を育種する。

 物日のキャンペーンはもうこれ以上はいらない。必要なのは、商品開発を起点にした日常のプロモーションである。新品種のシステマティックなデビューと、新しいカテゴリー創造とその市場への集中的な認知作戦である。

 

 そうこうしているうちに、後継者不在(供給の先細り)と物流費高騰(輸送手段のはく奪)で、地方の切り花が都市部の市場までに運べなくなった。その結果、連続的な品目の投入で旬を演出する手段が、都会の花屋さん(花売り場)から消えようとしている。

 

 マーケティングの有名な金言(マーケティング近視眼):

 消費者は、モノ商品としての「花」を購入しているのではなく、実際に金を支払っている対象は、商品が生み出すベネフィット、すなわち「季節感」である。そして、その先にある「季節の移り変わりを知って、高揚したり穏やかになる気持ち」(感動やくつろぎ)である。

 

 モノを売っているという発想から脱却する方法は、花の業界をあげて「52週間MD」に取り組むことだろう。花で季節感を演出するために、プロモートする品種・品目を「特別扱い」することだ。そして、そのための年間の供給量を確保するために、あえて重点産地を選んで、太いパイプ(物流網)を業界として受給調整プログラムを計画的にデザインすること。

 これなしには、落花スパイラル(市場のダウントレンド)から抜け出すことはできないだろう。もう少し具体的な提案は、われわれのチーム(JFMAプロジェクト)が企画すべきだろう。また、きっとそれができると考える。なぜなら、JFMAは、日本の花業界で唯一の横断的な組織だから。

 

 

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「かすみ草ニュース」(2017年4月23日 大岐菅家博昭)

 

■4月17日の大田花きの磯村社長はホームページで、次のように書いている。
「日本の花き市場では、価格が前年、二年前、五年前より安い市況が1月から続いている。切花においては、冠婚葬祭、仏花に頼りすぎていた為に、菊類の相場が安いと、切花全体の相場が安くなる、、、」

 

■4月21日の午後、東京葛西中央卸市場の東京フラワーポートT F Pで花の学習会があり、切り花の日持ちについて依頼があり40分報告をしてきました。そのほかに東日本板橋花きの樋口常務、千葉佐倉の生花店の大坂さんが報告を行いました。
もと浅草橋生花の植草さんがTFPの取締役となっており、彼からの講演依頼によるものです。会津よつばからは15名ほどが参加しました(聴講)。夜に交流会も開催。

 

22日にはビッグサイトでフラワードリームという花展示会があり、沖縄の太陽の花、和歌山のかすみ草産地の皆さん、各種苗会社、都内の卸市場関係者・職員、来場者として輸入商社、中卸、生花店、全農各県本部など、、、多くの皆さんと会場内で立ち話をしましたが、

 

(1)この半年のすべての切り花の安値の原因がわからない。不安。
(2)各品目とも、すべて入荷量は減少しているが、相場はそれを反映しない。

(3)かすみ草は低温・曇天等の影響からずっと1週間遅れで出荷量は少ないが、ずっと安い(4月の平均単価41円) 。スターチスは10円以下、ラナンなども採算割れの単価が続く。
(4)高値がおととし続いた影響で、葬儀関係でかすみ草が使われなくなった。注文価格、定期予対価格が夏場の産地も、熊本など冬産地も高すぎる。
(5)月曜、水曜、金曜とかすみ草の2Lを毎回10箱買っていた都内葬儀店は、大量出荷時期には、さらに10箱程度上乗せしても引き取ってくれた。昨年秋からは、月曜と金曜に5箱程度しか購入せず、それ以外は押し込むことができない。
(6)短い長さのかすみ草や、染めかすみ草が必要(加工・小売り)しかし市場には出てこないし、染めは200円以上して高くて仕入れられない。
(7)唯一売れているかすみ草は金井園芸のプチパール(白)で40cm規格で80円。いつも完売している。
(8)種子で栽培したクサカスミ(サポナリア)が人気。栽培者は千葉県のJ A安房神戸支所の小谷つる氏( 1本38円) 。板橋市場→世田谷仲卸各店で販売。理由は、草花風でかわいい。

 

(9)切り花安値のため野菜生産に切り替える生産地も出ており、産地の縮小による継続出荷が難しい品目が増えている。輸送費値上げで旬を演出してきた草花類が無くなり、小売店店頭に魅力が無くなり、消費者が買わなくなった。

■どのように、すればよいのか?について、ただ一人、明確な意志・計画を持っていたのは全農宮崎の販売担当の村上昇さん。宇都宮出身で奥さんの日南市に移転しはまゆう農協でスイートピーの前処理・染色商品を全国販売され売り上げを伸ばし、定年退職後、全農に勤務されている(長野県のJA上伊那の花担当の吉沢さんは全農長野に転職し長野全県下の花の販売を担当されているなど、単協で実績を上げる職員が上部機関に移籍する事例が出ている) 。

村上さんは、新規商品を毎月投入していかなければ、消費者にも生花店にも卸にもあきられる、という。そのため売り場での陳列方法や取り扱い方法、価格、、、P O Pを含め産地がMD(マーチャンダイジング、商品政策)を作って提示しなければならない。
品種がなければ、色を染めて、季節により変化させて、あるいは規格(長さ)を変えて、様々に変化を演出しなければ、すぐに飽きられる。どの産地もどの卸も、そうした基本的なことを怠ってきたことが現在の悲惨な情況になっている。宮崎県では北海道の木苺枝物を新規導入し紅葉まで周年出荷する計画で営業している。

 

■ 三島町史編さん事業の集落誌調査では、現在、滝谷地区をまわっています(博昭) 。雪どけが遅くなっていて、ようやく4月1 8日にエクセレンスを定植しました。