現在、法政大学(MS学会部会)の14人チームで、サービスマーケティングのテキストを翻訳しています。来年春(2~3月)までには、つまり新学期が始まる前には、翻訳書を出版する予定になっています。
いつものように、紹介文の詳細は、本HPの<リサーチ&レポート>に掲載されています。興味ある方は、ごらん下さい。わたしが、法政大学出版局に提出した企画説明書です。
Raymond Fisk et al.’Interactive Services Marketing (2nd ed.),’Houghton Mifflin Co., 2004
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<最初の部分抜粋>
本書は、Fisk, Raymond R. ほか2名の研究者によって書かれた「サービスマーケティング」のテキストです。Fisk教授は、AMA(米マーケティング協会)で最初にサービスマーケティング・グループを組織した人で、サービス(産業)の歴史、サービスへの劇場アプローチ、サービスの技術的側面が専門のようです(明治学院大学の小野先生によると、“アリゾナグループ”の重鎮ということです)。
実は、私自身がサービスマーケティングの良い教科書をこの10年間ほどさがしていたのですが、日本人学生が読むに値する本に巡り会えませんでした。日本のサービスマーケティングの本は、専門的すぎるか簡単すぎるかで、テキストとして推奨できる本がありません。昨年秋にこの本を偶然に発見し、学部学生と輪読してみました。英語が簡単で内容として日本で知られた企業・事例が多いことから、学部生(3、4年生)でも3ヶ月で260頁が読破できました。
1 内容的な特徴
(1)「サービスの相互作用」(2類型)に着目していること
これには二重の意味があります。ひとつは、サービス提供に当たって、人間同士がフェースツーフェースで経験することにより生じる「人的な相互作用」(Human Interactivity)。もうひとつは、人間が機械(インターネット、ファックス、電話など)を介して体験する「技術的な相互作用」です。このふたつが本書のメインテーマとなっています。
(2)「劇場(演劇)アプローチ」を採用していること
全体をまとめる枠組みとして、演劇のメタファー(隠喩)が使われていることが特色になっています。たとえば、舞台(サービスを提供する場=サービスの物的環境)、聴衆(サービス体験者、サービス顧客)、演技者(サービス提供者)、舞台裏(サービス企業)、舞台背景(サービス環境)などが巧みな比喩として使われています。すでに、日本では和田先生(慶応BS)が本書の枠組みで何冊かの書籍(演劇消費の理論)をお書きになっている道具立てではあります。
(3)サービス(マーケティング)の基礎概念がうまく整理されている
類書に比べて、基礎概念が平易に説明されています。しかも、サービスマーケティングの枠組みや基礎概念が、バランスよく網羅的に過不足なくカバーされていることが本書の優れているところです。たぶん、サービスマーケティングに関連した既存研究の中では、これまで一番上手に整理された本(テキスト)だと思われます。
2 全体の構成(概観)
本書は全体が5部構成になっています。
(1)サービスマーケティングの基礎(Foundations of Services Marketing)
第1章~第3章: 基礎概念と枠組み
(2)サービス経験の創造(Creating the Interactive Experience)
第4章~第7章: サービスの提供と計画、サービスの環境設定、
人的要素の管理、顧客ミックスの管理
(3)サービス経験の約束(Promising the Interactive Service Experience)
第8章~第9章: 価格付けとコミュニケーション活動
(4)サービス経験の提供と保証(Delivering and Ensuring a Successful Customer Experience)
第10章~第12章: 品質保証とリカバリー、サービスの市場調査
(5)サービスマーケティングにおけるマネジメント課題
(Management Issues in Services Marketing)
第13章~第15章: 戦略構築、需要管理、グローバルなサービス管理