「チェーンスト・アエイジ」連載中のコラムを2週間早くに紹介する。来月号(9月15日号)のテーマは、表題の通りである。
内容そのものは、しまむら、ユニクロ、ハニーズ(立地別2タイプ)の店舗を、実測値の入店率と買上率で相互に比較してある。
同じチェーン×店舗立地で、これほど数値が変わってくることを、学生たちに知って欲しいと思い、実測させてみた。以下は、その結果をコラムでまとめたものである。
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本シリーズの07年3月15日号で、「同じブランドでも都市と地方でイメージ評価と来店行動に大きな違いが」というコラムを掲載した。若い女性向けのファッション衣料品店チェーン「㈱ハニーズ」(本社:福島県)の許可を得て実施した店頭観察の結果である。ハニーズの地方2店舗(群馬県藤岡市と館林市)と都市部2店舗(東京都錦糸町と新宿)で、通行人、入店客、レジ客の数をカウンターで実測してみた(12月13日~15日、各8時間)。その結果、入店率は、地方(43%)のほうが都市(30%)より高かった。対照的に、買上率は、都市(21%)のほうが地方(12%)より高かった。その解釈は、次のようなものであった。
「地方店舗は、比較購買される競合店が少なく、何度も来店しては自分の気に入ったデザインで価格が手ごろな流行の服を購入している。流行をチェックするために来店頻度が高い。それに対して、都市の店舗(顧客)は、デザインというよりは、主として値段で選択されている。頻繁ではないが、一度来店したら購入する可能性が高い」
調査対象がハニーズではなく、全国展開している同規模の衣料品チェーンの場合、入店率と買上率の数値に差が出るだろうか? 約半年後の5月22日に、「ユニクロ」(中野サンモール店、東京都)と「しまむら」(日向山店、横浜市)で、ほぼ同時に同様な計測を試みてみた。前者は都市部の店舗(繁華な駅前立地)、後者は地方店舗である(典型的な田舎立地)。ほぼ予想通りの結果になった。ユニクロ中野サンモール店の入店率は7%、買上率は24%(午後16時から1時間の通行客は4749人)。「しまむら日向山店」では、入店率が54%、買上率は68%であった(午後13時から1時間の通行客は136人)。田舎立地の小商圏で競合が少ない「しまむら日向店」のほうが、両方の指標ともに高くなった。ただし、「ユニクロ中野サンモール店」は、圧倒的に”魚影が濃い“ことで、最終レジ客数では「しまむら日向山店」を上回っていた(84人対50人)。
4つの店舗(ハニーズは各2店舗の平均値)を二次元平面にプロットしてみると面白い(グラフ参照:自分で作成のこと!)。データを眺めながら、適当に数字の“解釈遊び”をしていただければ幸いである。最後に、データ解釈上のヒントをいくつか述べておくことにする。
実は、時間帯によって入店率と買上率は変化することがわかっている。買上率は、午前中や真昼よりは夕方が近づくにつれて高くなる(パコ・アンダーヒル『なぜこの店で買ってしまうのか』早川書房)。その効果を割り引いても、ベーシックな商品を販売している衣料品チェーン(ユニクロ)では、買上率が高くなる傾向がある。ファッション性が高い商品を扱うチェーン(ハニーズ)は、その逆で、買上率が相対的に低くなる。また、買上率は、店内の買物環境に依存して決まることが知られている。例えば、買い物用のバスケットを置いておく場所や試着室の位置を変えたら、買上率が上がったことが報告されている。また、入店率は、立地や商圏の大きさ、店舗のブランド力に依存して決まるが、個別店舗の店内外の要因にも左右される。店舗の視認性が高かったり、案内看板が目立つように置かれていると、入店率が高まる(小山孝雄『なぜこの店にはお客がはいるのか』中経出版)。同じデータを立地の異なるさまざまな店舗とチェーンに当てはめてみると、もっと面白いことがわかるかもしれない。