8月4日、急遽中国(上海)から帰国しました。同僚の佐藤昌一郎教授が8月2日逝去されたため、6日朝から経営学部葬が決まり、急ぎの帰国でした(予定は7日夜まで)。13年ぶりの中国(残念ながら今回は上海のみ)の印象をお伝えします。
キリン・アグリバイオカンパニー社長の松島さん(JFMA副会長)と4日間(1~4日)ご一緒でした。そんなわけで、久しぶりの中国体験は、キリンビバレッジ中国(上海市)の訪問から始まりました。
松島さんの前職は、4年半が上海キリンビバレッジの立ち上げ。その前の5年間が、台湾キリンビールの工場建設でした。現地の社長として活躍した両方のプロジェクトともに、FS(事業化調査)からビジネス設計、実際の販売活動を開始するまで、すべてに関与してきたそうです。帰国後に舞い戻ったのが、アグリバイオ事業部で、またしても中国コネクションを利用する展開になっているのがおもしろいところです。松島社長の中国経験は、国際マーケティングの素材として、けっこう貴重な素材がたくさんあります。ご本人の許可を取ってから、別途に掲載します、
さて、わずか実質2日間では、多くを見ることができませんでしたが、印象に残った訪問先を紹介します(花関係の話は、秘匿事項もあるのでここでは省略します)。
初日(実際は2日目)に訪問した量販店「ロータス」(タイ資本)には圧倒されました。とにかく、活気があって人が多いことと、商品の値段が安さこと。生鮮食品と加工食品の陳列は、バルク・カートン積みでボリューム感があります。平日の昼の時間帯で、通路に人がたまっていて引き返せなくなるくらい、I階のフロアは混み合っています。食品は、量り売りが基本で、中国に昔からあった「マーケットのにぎわい」を継承しています。この辺が、日本のスーパーがセルフのみに注力して発展してきたこととちがいます。
2Fは、衣料と雑貨です。ジーンズ(30~50元:450~750円)、Tシャツ(15~20元:225~300円)、下着(10元:150円)など、ユニクロ価格のさらに半値以下で売られていました。品質も見た目、それほど悪くはない。ですから、これが一般化すれば、ユニクロなどの先駆者利益は、たちまちのうちに吹っ飛んでしまうわけです。衣料品に限らず、収納用品(アイリスオーヤマの模造品)や生理用品(ユニチャーム)、シャンプー(花王)など、日本で見かける商品デザインがずいぶんと普及しています。本物もありますが、コピー製品も横行しています。
ところが、タオル売場に行くと、日本のメーカー「内野」が、現地価格の3~5倍の値段でプレミアム・タオル(たぶんギフト用)を対面販売していました。もちろん現地の売り子さんが販売員です。レジ会計はセルフとは別で、カードで直接の支払いとなりました。ロータスといえども、その空間だけは百貨店の販売形態と同じです。同じ棚に、一般品とプレミアム品が同時にタテ陳列されている「比較販売形式」でした。カラーコントロールも、そこそこうまく採用されています。
内野のことをわたしは知らなかったのですが、日本では百貨店向けのブランドメーカーだそうです。今度取材したいと考えていますが、現地工場は大成功とのことでした。ハンドタオルと浴用タオル(20元と50元:300円と750円)を購入しました。普及品と比べてみましたが、刺繍が入っていて、品質的にもかなり開きがあります。安い労働力を使いながら、手作りでしかもきちんとした品質管理技術が移転されていることを感じさせました。
中国・上海での流通業の勝ち組は、「カルフール」(ハイパー)と「伊勢丹」(百貨店)だそうです。たぶん、「ロータス」(ディスカウント量販店)がそれに続くのでしょう。かろうじて、CVSでは「ローソン」が目立っていました。「お弁当」(おにぎり)や「おでん」の人気などは、食生活の近似性を感じました。上海のCVS店は、全体にちょっと小振りですが、店舗レイアウトの基本は日本の店とまったく同じでした。カウンターの位置(向きとアイテム)、雑誌の配置(種類も!)、冷凍ケース(中身も)、リーチインカウンター(キリン/サントリーなどの商品も)、こまかなところがすべてコピー適用可能なのです。
これは、最終的なところでは、コンビニ文化では日本の勝ちかなと思います。それに付随する商品(加工食品、飲料カテゴリー、雑貨など)では、日本メーカーにかなり分があることに気づきました。アナリスト達が、欧州流通業が勝ち組で、日本が負け組という図式にはまっていて、この辺のところが無視されています。CVSの情報発信力、商品開発力は、中国でも同じです。実は、新製品を制するメーカーが最終勝利者であるという法則を、アナリスト連中は忘れています。キリン、サントリー、花王、内野など、日本のメーカーが活躍するチャンスは、馬鹿にしたものではありません。(つづく)