森林の再生が、エネルギー自給率向上の切り札

 昨日のブログを読んだ友人の坂崎潮さん(育種家、JFMA顧問)からご意見をいただいた。エネルギーの国内自給率を向上させるには、戦後に植林されたあと、ほぼ放置状態になっている森林(間伐材)を利用すべきではないか。その通りだと思う。メールを紹介する。

 <昨日のメール>
 小川先生、
 エネルギーの自給についてまず考えなければならないのは、日本の森林に貯まり続けるエネルギーを利用することだと感じています。戦後、裸になった山を植林で蘇らせ、いま日本の森林はほぼいっぱいいっぱいまでエネルギーが貯まっています。
 管理が悪くなっているので貯まるはずのエネルギーのロスも大ききなっているはずです。これをローカルに消費するシステムができれば円の海外への流失を減らし、エネルギーの自給率も上げられるはずです。
 それにより森林の管理も向上して災害の防止にも役立つはずなのですが・・。なぜ、大企業はこのような重要なことに投資をしないのかやや怒りを覚えます。
 坂嵜

 <解説>
 ちなみに、友人の坂崎潮さんは、「有限会社フローラトゥエンティワン」(花・野菜・穀物の育種)と「株式会社あぐりきっず」(生産)を経営している企業家である。もともとは、大手飲料メーカで花の育種をしていた。
 さて、
10年ほど前、岐阜県(洞戸村)の森林組合を訪問した際に、森林の間伐作業を体験したことがある。山の奥までは入らなかったが、たしかに倒木なども放置されていて、”山は荒れていた”。そもそも、森林組合で山仕事をする人間がそんなに多くない。
 そして、国土の7割が森林のわが国では、坂崎さんがいうように、戦後の長きにわたって、林野庁が植林事業を推進してきた。植林した杉林は、いまや樹齢40~60歳に成長している。だが、人手不足なのか、日本の山では材木を切り出すコストが高いのか、伐採されないままに山中に成木が放置されている。切り出せば売れるのだが、価格的に競争力を失っているので、「在庫状態」になっている。
 
 国が大々的に取り組んだ植林事業は、戦後の住宅建設需要を当て込んでの活動だった。ところが、住宅ブームで恩恵を受けたのは、国産材ではなく、値段が安い輸入材だった。わたしが生まれた秋田県能代市は、木材の町だった。1970年代中盤くらいまでは、町中にある製材所は景気が良かった。
 そのむかしは、米代川の上流で筏を組んで河口にあるわが町まで、杉の丸太を流してきた。ところが、その秋田杉は、南の島から送られてくる外材に駆逐されてしまった。資源国の環境を破壊してしまうくらい、ラワン材などは伐採のコストが安くて、国産材は値段的に引き合わなくなったのだろう。わが町の製材産業も斜陽になってしまった。
 伐採のコストが高くつくため、日本の森林は管理ができなくなってしまった。山を整えるためには、適当に間伐していかなければならないが、その予算もつかなくなったのだろう。つまりは、木材市場で国際競争に負けてしまったことが、日本の山を荒らしてしまった理由である。

 坂崎さんの主張は、森林が「エネルギーの塊」だということである。たとえば、間伐材はペレットにして燃料に使うことができる。自動車を走らせることも、燃やしてバイオマス発電もできる。そうすることは、森林を保全することにも資するから、洪水の阻止や自然環境の整備にもなる。おいしい牡蠣を育ててくれる。
 課題解決にあたっての問題は、伐採のコスト劣位だけではないだろう。日本の森林のほとんどは国有林である。だから、企業が森林関連事業に手を出すとすると、なんらかの制度的なインセンティブが必要ではなかろうか。いま進行している農地集約の制度設計とはやや問題の質は異なるが、国産材の伐採コストが高いことを、何らかの施策で克服する必要性がある。
 坂崎さんには、具体的な構想はあるのだろうか?