2004年、経営学部の教員から大学院専任でイノベーションマネジメント研究科に移籍した。その時点で、その後に恒例になる「10年ごとの大予言」を行った。「20年後の世界はこう変わっているだろう」という趣旨の予想である。
さて、22年後のいまの世界は、そのときの予言通りに変わっているだろうか? 結果を評価してみよう。中間段階の2014年の評価では、80%が的中していた。結論を言えば、22年後のレビューでは、ほぼ100%予言は当たっている。
ところで、2026年2月3日(節分)を境に、わたしは大殺界から出て、これまでにないほどの大躍進の年を迎えるらしい。今週に入って、金運も仕事運も昇り調子の状態にある。たしかに上昇気流に乗っているような感じがする。
かつては、OB会の席などでその年を占う予言をしていた。「小川先生の大予言」と呼んでいたが、 霊感が衰えてきたのか、そうしたことに興味を失ったのか、予言者としては終わったつもりでいた。しかし、「最初の大予言(2004年)」を22年後にレビューしてみたいと思った。
大予言は、2004年の1月14日(水)。法政大学市ヶ谷校舎835番教室で行われた「マーケティング論」の最終講義で、大予言の「講義レジュメ」を配布したいる。いまでもHPにアップされているので見ることができる。
証拠となっている予言のタイトルは、「日本とマーケティングの未来」だった。とりあえず、10年先の「日本の姿」を予見していた。2014年にレビューしているが、そのときは早すぎたようだ。それでも預言者の能力はあったそこから22年が経過しているが、どうだろう。その結果はいかに?
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<2005年の大予測>(2004年1月14日)
(1)米国型マーケティングの終焉
米国を代表する3つの企業が、10年以内に深刻な経営危機を迎えます。その根拠は、米国型のマスマーケティングが歴史的な役割を終えるからです。メガブランドとはいえど、実は永遠ではありません。マック、コーク、ディズニー、現代を代表する3つの米国ブランドがまちがいなく倒れます。その根拠は、以下の4つです。
・米国経済の地位低下:
中国とインドが台頭してきたら、世界の重心はアジアに移ります。
米国の時代が終わるとともに、栄光の頂点にいた米国のブランドは消えます。
・米国型の浪費経済文化への反省。
京都議定書を未だ批准できない米国は、いずれ世界からつまはじきにされます。
資源が有限であることがわかれば、浪費の象徴であるマックは世界から消えます。
・先進国における少子老齢化
やっぱり年をとったら、マック、コーク、ディズニーではないよね。
<22年後の評価>
中国とインドの躍進はいわずと知れたこと。2014年12月現在、オリエンタルランド(ディズニー)の業績は好調のようだが、すでに陰りが見えてきている(12年前の評価)。
マクドナルドは、国内外ともに企業として大いなる転換期を迎えていた。このことに関しては、2015年に発表した拙著『マクドナルド 失敗の本質』(東洋経済新報社を参照していただきたい)。
コークのブランド価値は、いまでもソフトドリンクの最上位にランクされている。それでも、そろそろ盛りを過ぎた青年だろう。新興国の成長があるから目立たないが、日本や欧州では、飲料としてはコーヒーと茶系飲料に向かっている。とりわけ、世界の抹茶ブームに注目である。
(2)日本では消費の中心モードが”和”に向かいます
おそらく数年以内に、日本発のデザイナーとアーティストが、世界の芸術界(デザイン、音楽、工芸分野)において大活躍をする時期が訪れます。その背後にある基本的な動因は、経済と文化のブロック化現象です(南北米大陸、欧州+アフリカ、東アジア)。同時に、近々、新しい言語圏(漢字文化圏)が登場するからです。中国がその中心に位置する可能性が高いと思います。
日本は、そのとき、自らのアイデンティティを気候と風土にあったオリジナルな文化(衣食住)に求めるはずです。和のテイスト(明治・大正、江戸時代に回帰)は、すくなくとも国内では当然のことになります。安全で健康な食生活を軸に、エスニックな東アジア文化がこれと融合するかもしれません。
<22年後の評価>
100%完全に当たっている(10年後の2014年に、すでにその萌芽は見えていた)。世界を席巻している近年の「和食ブーム」(とくに、寿司エコノミー)は、22年前にわたしが予測した通りになっている。
高齢化で、日本ではケーキより和菓子(あんこ)が売れ始めている(小川の「50歳和菓子回帰説」を参照の事)。世界中がその傾向にある。20年前に、もちもちした食感の和菓子が世界を席巻すると予言したが、当時は、「えっ?そんなことはありえない」。しかし、和食ブームの締めは、やはり和菓子だろう。
フランスやドイツにおけるアニメや漫画ブームは、完全に予見通りに事が進んでいる。そして、経済と文化のブロック化現象は、トランプの「モンロー主義への回帰」(米国を南北米大陸統一のセンターとする野望」に見られるように、政治経済のブロック化は予言の通りになっている。「欧州+アフリカ」+「東アジア」の3ブロック化も。
(3)アジア漢字文化圏の成立と英語文化圏の歴史的敗北
日本、中国、韓国は「アジア漢字文化経済圏」を編成するようになります。そのとき、韓国は母国語を表現する手段としてハングルを捨て、漢字言語圏に再編入されます。韓国人の「短気」はよく知られた事実です(その形質は若干ですが、わたしにも遺伝的に残されているようです)。
なお、米国では、ある時期からスペイン語が準公用語になり、20年後にはラテン文化圏に組み入れられます。ゲルマン言語圏が米国大陸で敗北を喫するわけです。英語圏は、欧州大陸に押しとどめられます。インディアンをいじめた原罪のツケを、500年後にピルグリムファーザーの末裔たちがようやく清算するわけです。
<22年後の評価>
この予測は、トレンド的にはほぼ当たっている。中国経済の台頭は、予測通りに進んでいる。ただし、先を見すぎていたかもしれない。時代はさらに先を走っていて、中国の経済バブルの崩壊を予見する必要がありそうだ。そして、この予言も当たっている。
中間段階の14年前には、「不確定要素は、中国・韓国・日本の関係悪化である」と述べた。この予言がいまや嫌になるくらいぴたりと当ってしまった。基本の「漢字文化圏生成」を、わたしは予測で放棄したわけではないが、漢字文化圏は言語的には英語文化に編入されそうだ。
イスラム文化圏は、このときに頭になかった。第3極になるだろうか?
(4)アジアからは国境が消える
10年以内に「東アジアFTA(自由貿易圏)」が形成されます。その結果、日中韓は産業的にはEUのような共通の土台をもった経済圏を構成するようになります。東アジアからは経済的な意味での国境が消滅し、日本の中心は北九州(福岡)に移動します。そして、日本はアジアの観光立国になります。もはや日本は知識や文化以外に売るものなくなるので、文芸・文化観光立国にならざるをえなくなるでしょう。
なお、個人的な願望ですが、韓国人、中国人、日本人が連合して創る企業組織が登場することを願っています。もちろん、欧米人の参加も大歓迎です。創造的な仕事に「国」という概念がなくなるかもしれません。そのときの世界共通語は、英語のままかどうかは未定です。多分そうはならないでしょう。常識はいつも覆されるものです。
というのは、使い勝手が良い「自動翻訳機」が完成しているので、英語の強みは失われるからです。もっとも、スペイン語と中国語が優勢になるかもしれませんね。
<22年後の評価>
前半(日本はアジアの観光立国になる)は、(3)で述べた通りである。予言の的中率が高かったのは、「自動翻訳機」の使用がすでに一般化してしまっていることだ。最近のネット言語は、多言語化の傾向にある。当時の大方の予想(英語が世界を席巻する!)に反して、結果はわたしの予言どおりになっている。ネット使用言語の英語シェアは、あきらかに下がっている。
将来もそうだろう。技術が言語相互のコミュニケーションの壁を取り払っている。だから、言語間の相互依存関係も消えてはいない。むしろ、言語的な多様性こそが重要になっている。コミュニケーションの容易さが、文化間の相互理解を深めている。
(5)第4次産業としての農業の復権
製造直販の波が農業分野に押し寄せてきます。すべての農作物のうち、穀類と根菜類を除いて、野菜の多くは日本ではいまから5年間くらいは輸入超過の時代を経験します。しかし、最終的(10年先)には、国内の農業改革(土地利用制度の変革と株式会社の農業分野参入)が実現した暁には、その段階で野菜の多くは国内生産に回帰します。生産直販が当たり前になりますから、農業は第4次産業(生産+流通サービス業)として復権します。
<22年後の評価>
予言通りに、農業の動きは国産回帰で進展している。わたしの予言内容(食糧安保のための自給率向上)は、この国にとっては喫緊の課題だ。10年後の自給率は、60%と予想していた。有機農業の比率は、農水省の「みどりの戦略」によると2050年には25%に設定されている。
野菜に関していえば、中国野菜の汚染問題から、農産物が日本から輸出されるようになっている(10年前の評価)。「戸別所得保障」という民主党(2009年~2012年)の悪政がなければ、わたしの予言はさらに加速されていたはずである。自民党の農政もどうかと思うが、小さい農家の守り方を間違えていたと思う。
わたしの希望の通りに、2012年には再度の政権交代が実現した(今回も「立憲・公明」の中道ではそれは無理だろう)。そして、農業はいまこの国の基幹産業になりかけている。「国内の農業改革(土地利用制度の変革と株式会社の農業分野参入)」は、皮肉なことに農家の高齢化のおかげで実現しそうだ。わたしは大規模農業の一択ではない。中山間地の農業を守ることも大事だと思う。それは、食生活と生物の多様性を守るためである。
若者が新規に参入している稲作農家は、経営的に将来に希望が持てるようになった。コメの値段が高くなったと文句を言っているが、いままでコメの値段が安すぎたのだ。その根源には、GHQの地主の解体がある(地方農家が兵隊さんの供給元だったからだ)。
そもそも稲作を低生産性のまま放置しておいたのは、政治(日本人の国会議員たち)の責任ではない。戦後における米国の植民地支配のせいなのだ。だから、これから米の値段は、農家が食べられるように適切に価格付けすべきだろう。山形県出身の鈴木農水大臣を攻めることは正しくない。
わたしも米どころ秋田の出身である。彼はこのことを知っていて、米の供給を絞ったのだ。将来に渡って食料自給を考えると、基幹作物である米生産農家のことを考えるのは当たり前のことだろう。都市部の労働者は、自身の賃金は上げるように主張するが、農家が手取りを増やすことができる米価の高騰には文句を言う。美味しいお米にはそれだけの価値がある。だから、米の高値は我慢しよう。
一方で、農業は環境産業でもある。慣行栽培から自然栽培(オーガニックライクな生産方式)に移行すべきだ。生物多様性を考えても、低投入型の農法(農薬・肥料、電力などをほぼ使用しない農法)に移行するだろう。
(6)日本を代表する大企業の多くは生き残ってはいないでしょう
トヨタ、ソニーをはじめとして、日本と世界を代表する20世紀型大企業は、10年以内には苦境に陥るだろう。それは、製品革新や組織進化の問題というよりは、世界のビジネスを支える組織形態が変わるからだ。自立型の組織が連携する「知的連合体」がその中心イメージになる。その意味では、米国最大の流通業である「ウォルマート」の流通支配も終わりを迎えそうです。
<22年後の評価>
HVのおかげでトヨタ自動車は復活したが、パナソニックやソニーは大苦戦している。この一年間だけは円安に助けられているが、台湾企業(鴻海)に救済されたシャープの現状をみると、予言は当たってしまったようだ。事業構造の変化に乗れなければ、日本のハードメーカーはグローバルにはきびしい状況におかれるだろう。
ソニーは、いまや家電メーカーではない。出井伸之さんが構造改革をしたおかげで、生き残ることができたソニーは、エンタメ企業に変身した。トヨタは、EVに注力しなかったおかげで生き延びているが、この先はわからない。わたしなどは、いまだにガソリンエンジン車に乗っている。
ウォルマートは、いまのところ元気である。しかし、ディスカウントの時代(グローバル調達に依存した事業構造)は、世界的には終焉を迎えている。そして、次世代の小売業が育ちつつある。わずか10年間で、日本の小売業は、三越伊勢丹、イオンや7&iグループから、ユニクロやカインズ、ニトリなどの新興小売り(SPA)の時代を迎えている。
ところが、その先がある。製造小売業の勢いは変わらないが、すでに次なる動きがある。それは地政学的な変化によって起こっている事態だ。日本の小売サービス業の経営者は、どのように舵取りを変えていくのだろうか。
<おまけ>
いま、わたしが注目している3つの企業がある。「ワークマン」「ローソン」「物語コーポレーション」の3社だ。
「ワークマン」は、近いうちに次のユニクロになって大躍進するだろう。現在の年商は約2千億円だが、5年後には売り上げが、3千5百億円まで伸びる。その後に台湾を皮切りにアジア圏に進出するだろう。10年後の年商は5千億円になる。
「ローソン」は、従来型のコンビニではなくなるだろう。竹増貞信社長のリードのもとで、「リアル&テックリテイラー」に変貌を遂げた。わずか5年間で実現したことだ。将来的には、地域の生活の核として機能する従来にない小売業に変わっていくだろう。
もう一社。「物語コーポレーション」は、気が付いてみれば牛角を抜いて、売上では日本最大の焼肉店チェーンになっている。将来的には、海外で成功したレストラン業態やハンバーグ店舗など、日本に逆輸入することになるだろう。
物語は、大穴の飲食チェーンだ。創業者は、小林佳雄氏。現社長は、加藤央之氏。血のつながりがない30代の若者を、後継者に指名したのは創業者の小林さんだ。ちょっとサプライズの人事だった。


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