6月から執筆を続けていた拙著『ローソン、挑戦と革新(仮)』のドラフトが完成した。昨日、PHP研究所の三宅晃生さん(編集担当)に、12章分の原稿をデータファイルで転送した。残りの作業は、「あとがき」を書くことと表紙と本の装丁だけになった。デザインは、いつものようにアートディレクターの大内おさむさんにお願いすることになっている。
最初に執筆に取り掛かったのは、2017年のある時期だった(いまや忘れてしまうくらい遠い昔になってしまっている!)。2018年の刊行を目指し、ローソンからの全面的な協力を得て、都内だけでなく全国各地で取材をしながら原稿を書き進めていた。
ところが、皆さんもご存知のように、2020年からのコロナの流行で、企画そのものが中断することになった。それでも執筆を諦めずに、プロジェクトとして復活したのが、2023年2月2日である。
この日、わたしは竹増社長に、「竹増さんのチェレンジ本」という企画書を提出した。内容は、約4年間の中断の後で、基本コンセプトを変えてリスタートするための再提案の手紙だった。ちょうど脱稿したばかりのいまのタイミングで、そのときの企画書を公開してみたいと思う。
研究者として、論文や書籍では同様な経験を何度もしている。しかし、今回ほど最初の企画と再提案が大きく変化したケースは珍しいかもしれない。
よくあることなのだが、原稿が出来上がった現段階でも、書籍のタイトルがまだ決まっていない。タイトルのように、仮置きの状態になっている。実は2つのタイトル案があるのだが、再提案後のコンセプトそのものは変わっていない。
出版予定は、2025年3月上旬。ビジネス書としてはやや厚めで、250頁~280頁。定価は1600円(税抜き)を予定している。3月の発売をお楽しみに。
追記:
プロジェクトがリスタートしてからは、2023年3月から、インタビューを再開することになった。グリーンローソンの担当者からの取材から始まり、2024年6月の竹増社長のロングインタービューまで、静岡や北海道などの地方取材も入れて、およそ20人ほどの社員やオーナーさんにインタビューすることになった。
再度の執筆開始以降は、社内行事や株主総会、広報リリースや事業説明会などにもなるべく立ち会うようにした。また、店舗や工場視察、オーナーさんたちには、突然の電話でのフォローアップインタビューなどもさせていただいた。
そうした成果が今度の書籍に結実している。
『ローソンの「マチと暮らす」、竹増さんのチャレンジ本』(企画書)
2023年2月2日 法政大学名誉教授 小川孔輔
1 はじめに(これまでの経緯)
2017年ごろ、わたしから提案させていただいた『ローソン本(仮)』は、「ローソンのビジネスの仕組みと会社の歴史」を書籍として出版する企画でした。竹増社長には、そのため、2019年に法政大学経営大学院の授業内で講義をしていただきました。
タイトルは忘れていましたが、竹増さんご自身のビジネスパースンとしてのキャリア形成とコンビニ事業の将来の夢を、大学院生に語っていただいたように記憶しています。
また、宮崎専務(当時)や余田オーナー(加盟店、セブンワイズ社長)には、全社的な取り組みとは別に、①各部署(物流、商品開発、CS推進など)の際立った仕組み、②フードロス削減への取り組み、③ナチュラルローソンや提携組織(ローソンファームなど)の事業内容などの取材に協力していただきました。
ところが、2020年からのコロナ禍で現場取材ができなくなり、本書の執筆がストップしてしまいました。その間、業績の悪化も加わり、ローソンのコンビニ事業そのものが大きな岐路に立たされました。しかし、コロナ禍からの経済の立ち直りが見通せるようになった今、ローソンが向かおうとしている方向が明確になりつつあるように思えます。
それは、竹増社長のイニシアティブの下で、SDGsへの取り組みを事業の中核に据えて、①「地域対応(街と暮らす」)と②「新しいコンビニづくりへの挑戦(ハードとソフト)」の2つが活動の中心になってきたように感じるからです。
2 コンセプトチェンジ(ご提案)
先日(1月28日)、新業態の実験店(グリーンローソン@北大塚)を訪問させていただきました。店舗を観察させていただき、事業担当者にお話を伺うことができました。<参考資料>(本ブログ内に掲載済み)として、小川が個人ブログに書いた「グリーンローソンへの事前期待」を添付してあります。事後の印象(概ね良好)などは、小川の個人インスタグラムに投稿してあります。
結論を申し上げますと、「竹増社長の講義@大学院での夢が、グリーローソンの実験店で実現して、コンビニの未来予想図が具体的に想像できるよういなった」という印象を持ちました。
例えば、「グリーンローソンの主な特長」として広報資料に明記されている4つの特徴、すなわち、1.アバター活用で誰もが活躍できる人にやさしい店舗、2.“冷凍”と“オーダーを受けてから作る店内調理”で弁当廃棄ゼロを目指した地球にやさしい店舗、3.DX 活用による省人化と温かいコミュニケーションの創出、4.CO2 排出量やプラ削減で地球にやさしい店舗は、竹増社長が、コロナが始まる前から取り組みを指示していた事業だったと思います。
というわけで、4年前の2017年書籍企画を、つぎのように変更したく思います。
3 新しい企画の骨子
①基本コンセプト:
3人の歴代社長(新浪さん、玉塚さん、竹増さん)の「リレー経営」をやめて、竹増社長の「新しいコンビニづくりへの挑戦」に変更する。歴史的な取り組みは、今につながる形で取り上げる(いまの挑戦のため、過去に起こった先駆的な取り組みとして)。
②取り上げる人物や事業:
メインのコンテンツとしては、新事業のコンセプトや技術開発(例:デジタル、アバター、まちかど厨房など)への挑戦の姿、あるいは、社内人材(例:アバターの月宇田法務部長など)や提携企業(例:ローソンファーム千葉の篠塚社長など)の協力者の挿話を取り上げる。
全体のアイデアや起案は竹増さんでしょうから、鵜(社員)と鵜匠(社長)の関係を上手に描くことにする。
③グリーンローソン+α
基本的には、グリーンローソンでの取り組みから、ローソンのチャレンジのすべてを語ることにしたい。ただし、社内に「チャレンジネタ」が複数ある場合は、取材を並行して進める。
以上、この提案は、大きなモデルチェンジになると思います。しかし、ローソンの今を語る上で、最も素材が新鮮で、他社にないローソンの独自性を前面に押し出せる書籍になるはずです。
一般的に、広報のリリースでは、仕組みや商品・サービスは提示できても、①なぜその取り組みが始まったのか、②ローソン(会社や社員)は、商品やサービスを通して、世の中のために何を実現しようとしているのか? 社会的な意味や事業の変革がもたらす世間に対する貢献については、一般社会や利用者には明確に伝わっていなように思えます。
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