7年前の調査(福岡の美容クリニックが実施)で、秋田の女性は「秋田美人と言われて、プレッシャーを感じる人」の割合が半端ではない、という記事を見つけた。秋田県人が特性をよく表していると思った。
その後、福岡に取材旅行したときに、現地でたくさんの女性たちに面談することがあった。どなたも、日本三大美人の産地が「博多」と言われて、しごく当然という雰囲気だった。わたしは、これを「松田聖子現象」と呼んでいる。
さて、秋田県人は、この記事を読んでどう感じるだろうか?
「プレッシャーに弱い?秋田美人」『北羽新報』2024年6月24日号
文・小川孔輔(法政大学名誉教授、作家)
福岡の美容クリニックが、美人に関する調査を実施していました。7年前のことです。調査対象エリアは、日本三大美人の産地(秋田県、京都府、福岡県)でした。アンケート調査を総括して、「秋田県人は”美人”と呼ばれるのにプレッシャーを感じている!」という記事をネットで配信していました(4月18日)。
日本三大美人の輩出県のひとつ福岡県が、秋田県に対抗心を燃やして調査したと考えられないこともありません。結果のコメントについて、秋田男子としては、それがかなりの真実ではあると思います。秋田県出身の女性たちが、日ごろから「美人プレッシャー」を感じていることは何となくわかるからです。
ところが、この記事には書かれていない重大なことがあるのです。つつましやかな秋田女子とは対照的に、福岡県生まれの女性たちは、「博多美人」と言われることに対してプレッシャーを感じるどころか、「美人と言われるのは当然」くらいの感覚をお持ちなのでした。
具体例を紹介します。記事が出る直前に、北九州で韓国と中国から切り花を輸入している商社を取材で訪問したことがありました。輸入商社のオーナーは、辣腕の女性でした。
女性経営者は、博多では結構な有名人でした。三大美人産地のことを話題にしたときに、彼女はわたしの顔を見て、「福岡の女性はみなさん、自分は美人だと思っていますよ」とコメントしてくださったのです。その発言から、自らも美人カテゴリーに属していると思っているらしいことが明らかでした。
取材後の懇親会には、数人の博多美人たちが参加していました。女性社長を筆頭に、福岡女子は皆さん堂々としていました。「いやー、北九州にはたくさんの“松田聖子さん”がいるのだなあ」と感心したものです。聖子ちゃんも、福岡県久留米市の出身です。
その場で彼女たちに、「福岡女子は、美人と思うか」とそっとたずねてみました。みなさんの反応は、「そう、みんな美人です!(と思っています)」でした。同じ質問を秋田女性にしたら、「そんなことないです」と謙遜の言葉が返ってくるにちがいありません。この風土の差は、どこから来ているのでしょうか?
ちなみに、人口一人当たり、日本一美容院の数が多いのは、秋田県です。また、美容クリニックのアンケート項目「地元が三大美人の地域とされるのにプレッシャーを感じる」と答えたのは、秋田の女性が37%で最も多く、福岡18%、京都12%でした。
どのような時にプレッシャーを感じるのかを聞くと、「自己紹介で出身地を言うとき」(37歳)、「テレビで『秋田美人をさがせ』のようなロケ番組を見たとき」(24歳)などとなっていました。
ところが、1年間に美容にかける平均金額は、秋田は5万円で、京都6万3千円、福岡約7万1千円に比較して最低でした。また、全国の男女約1600人を対象にしたアンケート調査では、約6割が「美人と聞いて思い浮かべる都道府県」として秋田を挙げていました。コラムを読んでいる秋田の女性たちは、これらの結果についてどう思われますか?
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