今週の11月9日と10日は、京都で開催された「若手グローワー経営者会議」のセミナーに参加させてもらった。プログラムでは第5回目のようだった。飛び入りの参加のわたしは、ぞろ目の77番目の聴講者になっていた。募集人員50人のところ、わたしのような生産者以外の業界人を受け入れたので、総勢80人弱。盛況である。
プログラムについては、関西出張に出発する直前(11月8日)に、本ブログでも紹介している。
会議は3部構成になっていた。初日(9日)は、「三和陸運(FLS)」のハブセンターを視察(第一部)。そのあとで、京都生花に移動して、「2024年問題が業界に与える影響と未来予測」(第二部)がテーマのパネルディスカッションが行われた。モデレーターは、藤目健太さん(全国花き業界若手会 会長)と佐野哲也さん(サノ・オーキッド)。
パネラーとして、井上博保さん(三和陸運社長)と柏村勇太さん(日本植物運輸社長)が加わった。若手とは言っても、皆さん40代(~50代前半?)である。ただし、ほとんどが二代目経営者であることが特徴である。つまり、後継者がいる農業生産者(+物流・システム会社)の後継経営者が組織しているボランティア組織である。
みなさん、花の業界のために、ひと肌脱いで働こうというパワーを感じさせる若者たちである。だから、わたしもセミナーにオブザーバー参加させていただいて、これから先も応援したい気持ちになった。この業界を切り開いてきた彼らの父親たち(わたしの盟友たち)も、温かい目で見守ってくれている。
優秀で意欲のある若者たちとその活動を見て、「花業界の若手生産者たちは、なかなかのものだ」と感じて帰ってきた。父親たちの子供への事業継承が、うまくいっているからだろう。
二日目の11月10日は、午前9時から3時間にわたって、第三部の講演と討議が行われた。
当初は、京都経済センターでの討議には加わらないつもりだった。ところが、物流改革と情報システムのイノベーションは不即不離と考えて、①「生産者の新システム説明会」(9:00~10:30)と②「生産者も倒産する時代」ディスカッション(10:45~12:00)にも参加することにした。
講演者は、大谷商会の吉村圭さん(元生産者)だった。司会と対談相手を、藤目健太さん(若手生産者会、会長)が務めていた。中身の詳細は省略するが、興味深かったことが2点あった。
(1)花業界の生産者向け情報システム(FMBIZ)
第3部の主役は、吉村さんだった。吉村さんは現在、新潟に本社がある「大谷商会」でシステム開発とその販売普及活動を担当している。もちろん、大谷商会は輸入商社としての事業部門も持っているが、もともとはITシステム会社である。前半は、花業界向けの発注・販売管理システムの説明だった。
なかなかよくできたシステムである。花の世界は、野菜や果物と違って(相対的に)多品目多品種少量生産である。汎用的な情報システムでは対応がむずかしい。わたしの隣に座っていた農研機構の研究者も感心していた。
普及がうまくいくことを祈るばかりである。実は、このクラウドシステム(FMBIZ)の普及と、初日に視察した井上さんの京都ハブセンターの成功は補完し合っている。セミナーを観察していて、物流と情報を組み合わせてプログラムを組織していた、藤目さんや吉村さんたちのセンスに感嘆した。
(2)驚きのプレゼンテーション
吉村さんが社長を務めていた生産法人は、コロナの最中に倒産してしまった。
基本的には、台風で何度か温室が飛ばされてしまったからだった。そのことを含んで、第3部②の対談のテーマが、「生産者も倒産する時代」である。わたしは、吉村さんに定年前にお会いしている。元気な若手経営者だったが、不運にも会社は倒産することになった。しかし、そこで彼は挫けることがなかった。
二日目のセミナー会場には、40人ほどの聴衆が座って彼の話を聞いていた。ご自身が経験した倒産のリアルとその後に立ち直るまでの心的なプロセスを、実にあからさまに話してくれた。吉村さんは、正直な人間だと思う。包み隠すことなく事実を語るから、人に信頼されて仲間もたくさんいるだろう。
少し上気した話しぶりは、倒産の話を業界人の前で話すのだから当然のことである。しかし、自身の経験を語ることの意味は、若手の生産者(とりわけ後継経営者)に共有してもらいたいと思ったからだろう。
ここまで名前を挙げなかったが、知り合いで何人かの若者たちの顔を確認できた。そのうちのひとりが、会場の運営を手伝っていた信州片桐花花園の片桐仁鏡(あきひろ)さんである。最近火事で温室が被災してしまったが、吉村さんが台風で被害にあったときの話で、片桐さんご自身の経験に話してくださっていた。片桐さんの温室の火災も、多くの業界人から心的物的な両面から支援を受けていた。
まとめの感想である。藤目さんを中心に、吉村さん、佐野さん、片桐さんなど。生産者ではないが、井上さんや柏村さんが、若手生産者たちのために物流で連携しようとしている。日本の花き業界の若手たちは、きっと大丈夫だろう。彼らの間での連携を力強く感じる。わたしたちは、彼らをもっと支援してあげるべきだと思う。
偶然の参加だったが、彼らの活躍を見ることで、わたしも勇気を与えてもらった気がする。大いなる感謝だ。