【柴又日誌】#148:孫たちとの休日を、「こども本の森 神戸」(安藤忠雄の設計施工)で過ごす。

 連休の初日(11月3日)は、神戸のお孫たちの運動会を見学してきた。ふたりとも2種目(駆けっこ、リレー、ダンス)に出場。徒競走は、どちらも2着だった。小学校5年生になる紗楽(さら)は、小さいころ股関節の手術をしている。走れるかどうか以前のことで、そもそもまともに歩けるかどうかを心配したものだった。

 

 とはいえ、小学校5年生で、身長が145センチに届きそうになっている。来年早々には、ママの奈緒さんを身長で追い抜いてしまいそうだ。紗楽は、リレーでもそれなりのスピードで走っていた。その様子を見ていて、「ずいぶんと大きくなったなあ」と感慨深かった。

 諒くんも、徒競走では2着だった。ゴール手前で、隣の子に抜かれてしまったことをとても悔しがっていた。「でも、ライバルの男の子よりは先着できた」と、満足そうに「ライバルに勝った!」ことを説明してくれた。諒君は負けず嫌いな性格の子だとは思わないが、他者との距離やポジションを意識するようになったのは、それなりに成長している証拠だと思う。

 親たちはといえば、仕事が大変そうだ。40歳代の前半に差し掛かっている。「退職まであと20年よね」と息子がつぶやいたのには驚いた。この先は、仕事でも家庭生活でも困難なことも多いだろう。これからがふたりにとっては正念場だ。わたしたち夫婦も、似たような道を歩んできた。先のことはなんとなく想像ができる。

 

 運動会は午前中で終わった。息子に言わせると、「一時期に比べて、運動会の種目が減っている」とのこと。子供たちの下校時間がかなり早くなっている。午前中で運動会が終わってしまうくらいの競技の数だった。プログラムを見ていると、たしかに男子の騎馬戦とかやらなくなっている。女子によるダンスとか、マスゲームのようなものもない。

 家族6人で、ランチは近くの回転寿司(大起水産)になった。ふたりともよく食べる。諒君は、まぐろが大好きなことを発見した。 アレルギーで食事に制限がつく紗楽も、お米とお魚のランチならば問題はない。回転すしなら、好きなものが食べられてうれしそうだった。

 午後は、奈緒さんが仕事が残っていたので、三ノ宮の公園で日向ぼっこをすることになった。公園内のコーヒーショップで、PCの電源が使える席をわたしが探してきてあげた。午後16時までに、カフェで仕事を終えなければならない。ふたりの子供たちとわたしたち夫婦は、芝生に寝っ転がって過ごした。

 15時半からは、公園の隣にある「こども図書館」で、童話や絵本を見る予約をしてあった。1時間ほど時間が空いたので、公園でのんびりと過ごすことにしたのだった。子供たちは、そのあたりを駈けずり回って遊んでいた。運動会の疲れは、すでに取れているようだ。若いからだろう。 

 

 JR神戸三ノ宮駅前にある「こども図書館」は、建築家の安藤忠雄さんの設計施工によるものだ。正式名称は、「こども本の森 神戸」である。同じコンセプトのものが、大阪の中之島にもあるらしい。

 息子は、子供たちを連れて大阪のこども図書館にも行ったことがあるという。神戸の図書館より、中之島のほうが規模が大きいということだった。大阪に行くことが、今月はあと2回ほどある。チャンスがあれば、中之島の図書館を事前に予約してみたい。しかし、一緒に行ってくれる子供を調達してこなければならない(笑)。大人たちだけでは、こども図書館には入館ができないのだ。

 「こども本の森 神戸」は、完全予約制である。しかも、90分の滞在時間制になっている。わたしたち5人には、90分間の滞在時間が設定されていた。15時30分に入館して、図書館内を自由に動き回れるのは、夕方の17時まで(正確な運営方法は、ネットで確認のこと)。

 

 図書館の外観は、安藤忠雄さんの建築物で典型的な「コンクリートの打ちっぱなし」である。館内は、本の表紙が見えるように横長に本が陳列されている。本棚の高さは、最大16段(陳列棚と場所による)。6段目から上の棚に陳列されている本は、タイトルは見えるが手が届かない。

 館内の運営ルールで、どこに置いてある本でも、自由に手に取って本が読めるようになっている。もちろん、どのフロアにもゆったりとした読書用の木のテーブルが置いてある。手が届く範囲の本棚からならば、好きな本を抜いてきて椅子に座って本を読むことができる。

 館内の中央には、大きな幅広の長い階段がある。踊り場も含んで、30段ほどもあるだろうか?子供たちは、図書館が用意してくれている敷物を下に敷いて、階段に腰かけて読書をすることが許されている。自由な発想からの読書の仕方だ。

 なお、入館して最初に戸惑うことになるのは、6段目より上に本が陳列されていることだ。上段の本には、大人でも手が届かない。それなので、6段目から上の絵本や童話は、一段目に背表紙が見えるように縦に陳列されている。手が届かない本は、一段目の棚から借りてきて読むことができるようになっている。

 

 わたしは、試みに、米国滞在中にこどもたちに読み聞かせた童話の絵本を探してみた。松谷みよ子さんの『茂吉のねこ』と『だいくとおにろく』。本の森には、カテゴリーごとに名前がついている。たとえば、分野ごとに、「あそびの森」や「むかし~いま~みらいの森」、「いきものの森」など。

 結局は、どちらもうまく探し出せず。入口近くの「リファレンス・カウンター」で尋ねたら、PCで本のある場所を検索してくれた。そして、わざわざ担当の方が『茂吉のねこ』が置いてある場所まで案内してくださった。『だいくとおにろく』のほうは、かみさんがすでに場所を知っていたので、見つけることができた。

 

 わたしの知り合いには、図書館関係者や大学人や元院生がたくさんいる。昨夜、インスタグラムに投稿した写真(8枚のうち5~6枚)を、皆さんに送ってみた(https://www.instagram.com/wanwanwansuke/?hl=en)。

 「安藤忠雄が設計した”こども本の森 神戸”というこども図書館は、ご存じですか?」とメールに書いたが、神戸のこども図書館に行ったことがある人は誰もいなかった。関西にあるからなのか、図書館関係者でもほとんどの人が存在そのものを知らなかった。

 知名度の低さに少々驚いたが、館内の写真と図書館の使い方を伝えてみたところ、みなさんからは、「関西に行ったら、寄ってみたい!」「孫がもう少し大きくなったら、行ってみたい!」と、その関心の高さに驚かされた。もっと宣伝してもいいのに。しかし、関東地方まで知られてしまったら、そのうちに入館予約ができなくなるだろうか?

 

 神戸のこども図書館の1Fには、安藤忠雄の「青いりんご」が置かれていた。何気なくだが、背の低い本棚の高さに、いままでに見たレプリカの中で、もっともサイズが小さな青いりんごが置かれていた。りんごの横に立った紗楽が、レプリカの青いりんごの頭をなでていた(笑)。

 本人は、りんごの色が青いまま(赤く熟しておらず)であることの意味を、理解しているだろうか? 今度、神戸に出かけて行ったら、そのことを尋ねてみたいと思う。答えは、わたしの本『青いりんごの物語:ロック・フィールドのサラダ革命』(PHP研究所、2022年)に書いてあるのだが。

 多分知らないだろうから。「いつまでも青いままでいる」=「青春」というテーマなのだよ!と。ちなみに、紗楽(さら)の名前は、父親の由君のダジャレから来ている。君の親父さんの仕事は、「サラダ」の会社なのだよ。