【柴又日誌】#144:愛知屋さんからコロッケを2個プレゼントされる。

 新刊本に登場する商売人の方たちに、本を配って歩いている。本日は、京成立石駅前の2店舗の店主さんに、出来立てほやほやの本を渡してきた。どちらのお店も、第7章第3節「やきとりTOP:旦那は骨を折った。わたしは心が折れた」に登場するお店だ。

 

 電動アシスト自転車に乗って、いつものコースを中川沿いに走った。本日は青砥駅前は通らず、まっすぐに走って南蔵院の手前で立石の住宅街に入った。

 葛飾区役所の移転のために、いたるところで道路工事が進んでいる。北口駅前の商店街では、お店のほぼ半分は移転を始めている。懐かしい店の中には消えてしまう商店もあるのだろう。南口はまだ閉じてしまった店はないようだが、駅前に高層マンションが建つらしい。2~3年後には、仲見世の中にある昔からある店が閉店になるのだろう。

 最初に駅から少し遠いほうで、新装になった「やきとりTOP」に顔を出してみた。土曜日の夕方17時だったので、お店は閉まっていた。そっとドアを開けて、カーテン越しに中を除いてみた。見覚えがある顔は、寺本さん(元の店主)から店を引き継いだ篠原さん(元のお客さん)だった。出版の事情を話して、白い表紙の本を渡した。

 興味深そうに本を開いていた。第7章の「やきとりTOP」の3節のはじめから話は始まる。後継者の篠原さんも、ちょっとだけ顔を出す場面が出てくる。

 

 「もしかして発売になったこの本を読んで、来店する地元の方もいらっしゃるかもしれませんので、、、」とわたしから説明した。実際に、ネット経由で本を入してくださった「タカラトミー」(本社:京成立石駅北口)の元広報室長の菅谷さんからは、「地元に住んでいて知らなかったです」とメールが戻ってきた。

 また、その昔に(葛飾区)細田にお住まいだった元院生の田中さんは、「TOPのやきとりが安くて美味しい」という噂をご存知だった。今度、行ってみたいような雰囲気だった。そんこともあるので、お客さんサービスも考えて、篠原さんのいる土曜日夕方を訪問時間に選んだのだった。

 本の中の順番とは逆になった。先に篠原さんに本を渡してから、自転車を押して立石の駅前に回った。

 

 「愛知屋」さんの前には、小さな行列ができていた。それでも、いつもよりは少なめの3人。

 わたしの番が回ってきたので、コロッケを2個頼んだ。ガラスケースからコロッケを取り出して、紙に包んでくれている愛知屋のおじさんに、わたしの本を差し出した。

 「この本の中に、愛知屋さんや仲見世付近の商店の様子が出てきますので」と本を寄贈した理由(わけ)を説明した。わたしが第7章第3節のはじめのページを開くと、おじさんが輪ゴムを2個、わたしに手渡してくれた。本の栞の代わりに、挟んでくれということらしい。真っ白なページに、うす茶色の輪ゴムを2個挟んで本を渡した。

 少し前までは90円だったコロッケが、いまは1個100円になっている。100円硬貨を2枚渡そうとしたが、「いいよ」と言って受け取らない。おじさんは、いつもは余計なことを言わない。不愛想なおじさんが、興味深そうに本の装丁を見ている。「小石川さんっていうのね」と著者の名前を読んでくれている。

 

 わたしは200円を、自転車のかごの中に入れてあった小銭入れに戻した。代わりに、「オフィスわん」と「JFMA(花の団体)」の名刺を2枚、コロッケの包みが載っているカウンターの上に置いた。

 「じゃ、これはいただいときます。本のお代で、200円はおまけだってことで」。思いもかけないまさかのオマケに、わたしはなんともうれしい気持ちになった。早く帰って、子供たちとかみさんにこの話をしたいと思った。

 帰路は、自転車をこぐ足が軽くはずんだ。おかげで、立石駅前から青砥までの帰り道を間違えてしまった。少し帰りが遅くなったが、それはそれで構わない。いいことがあると、まずいことが起こっても寛容な気持ちになれるものだ。